熱Ⅱの流体のうち、管路の損失と流量の測定の論点を、表と例題で並べました。直管と管路要素の損失、差圧による流量の測定、圧縮性流体のノズル、二相流を扱います。
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管内の流れと直管の圧力損失 ── 長く・細く・速いほど損失が大きい

| 1つだけ変える | 乱流(f 一定) | 層流(f=64/Re) |
|---|---|---|
| 管の長さを2倍 | 2倍 | 2倍 |
| 同じ管で流速(流量)を2倍 | 4倍(流速の2乗) | 2倍(流速の1乗) |
| 同じ流量で内径を 1/2 | 32倍 | 16倍 |
| 管壁を粗くする | 増える(影響がとくに大きい) | 変わらない |
なぜ:摩擦の力は管の内面(周長×長さ)に働き、それを流れの断面が支えます。だから損失は長さ÷内径(L/D)に比例します。壁の摩擦の強さを動圧 ρV²/2 の f 倍とおくと Δp=f(L/D)(ρV²/2) です。層流では f=64/Re が流速に反比例するので、V² のうち V が1つ消えて流速の1乗になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 直管の圧力損失 Δp=f(L/D)(ρV²/2) は、層流でも乱流でも使える | ○ | ダルシー・ワイスバッハの式 |
| 層流の管摩擦係数は、レイノルズ数と管壁の相対粗さで決まる | × | f=64/Re。粗さに関係しない |
| f が一定の乱流で、同じ管の流量を2倍にすると圧力損失は約2倍 | × | 流速の2乗で約4倍 |
| 同じ流量で内径を半分にすると、f 一定なら圧力損失は約32倍 | ○ | 流速4倍で動圧16倍、L/D 2倍 |
| 円でない流路の等価直径は、断面積をぬれ縁の長さで割った値 | × | 4倍する:De=4A/Lp |
例題
水が内径 50 mm・長さ 200 m の直管を 2.0 m/s で流れます。管摩擦係数を 0.025 として圧力損失を求めます(水 1,000 kg/m³、動粘度 1.0×10⁻⁶ m²/s)。
①乱流か確かめる:Re=2.0×0.050÷(1.0×10⁻⁶)=1.0×10⁵。乱流なので、与えた管摩擦係数をそのまま使う。
②L/D=200÷0.050=4,000。動圧 ρV²/2=1,000×2.0²÷2=2,000 Pa。
③Δp=0.025×4,000×2,000=200,000 Pa=200 kPa(水頭で約 20.4 m)。
④同じ流量で内径を 25 mm にすると、f を一定とみれば約32倍で 6.4 MPa。細くするのがいちばん効く。
- 摩擦の仕事は圧力のエネルギーでまかなわれる。断面が一様なら流速は変わらず、下流ほど静圧が下がる。
- 乱流では f が Re と相対粗さ ε/D で変わり、ある Re 以上では相対粗さだけで決まる一定値になる。
- 等価直径:長方形 a×b なら 2ab/(a+b)、二重管の環状部なら D₂−D₁。
- 層流の損失は Δp=32μLV/D²(ハーゲン・ポアズイユの式)。
管路要素の損失(急拡大・急縮小・ディフューザ) ── 急に広げるほど渦で損失

| 要素 | 損失(単位質量あたり) | 要点 |
|---|---|---|
| 急拡大 | (V₁−V₂)²/2=(1−A₁/A₂)²·V₁²/2 | 運動エネルギーの差のうち一部だけが圧力に戻る |
| 管からタンクへの出口 | V²/2 | 速度のエネルギーはすべて損失(かき混ぜて熱に) |
| 急縮小 | (Vc−V₂)²/2 | 縮流のあと管いっぱいに広がる所で損失 |
| ゆるやかな広がり管 | K₁(V₁−V₂)²/2 | 広がり角が大きいほど、はく離して損失が増える |
| 弁・継手 | K·V²/2=f(Le/D)·V²/2 | 相当長さ Le。仕切弁は全開 0、1/2開で 100D |
なぜ:急に広げると、流れは壁から離れて噴流のまま進み、周りの渦が速度のエネルギーを熱に変えます。運動量の式から、圧力として戻るのは V₂(V₁−V₂) だけです。差し引き (V₁−V₂)²/2 が損失になり、ゆっくり広げれば渦が小さく、圧力がよく戻ります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 急拡大の損失は、前後の運動エネルギーの差 (V₁²−V₂²)/2 に等しい | × | (V₁−V₂)²/2。残りは圧力の上昇 |
| 管から大きなタンクへ流れ込む出口では、V²/2 がほぼすべて損失になる | ○ | 面積比が十分小さい急拡大 |
| ディフューザは広がり角を大きくするほど短く減速でき、損失が小さい | × | 角度が大きいとはく離して損失増 |
| 急縮小の損失の大部分は、縮流のあと広がり直す部分で生じる | ○ | 入口から縮流部までの損失は小さい |
| 仕切弁の相当長さは、全開でほぼ 0、半開で管径の約100倍 | ○ | 表の Le/D |
例題
水が内径 50 mm から 100 mm へ急拡大する管を、細い側 4.0 m/s で流れます。損失と、広がった後の圧力の上昇を求めます(水 1,000 kg/m³)。
①面積比 A₁/A₂=(50/100)²=0.25 なので、V₂=4.0×0.25=1.0 m/s。
②損失:(4.0−1.0)²÷2=4.5 J/kg。圧力に直すと 4.5 kPa。
③圧力の上昇:p₂−p₁=ρV₂(V₁−V₂)=1,000×1.0×3.0=3.0 kPa。
④確かめる:損失がなければ ½ρ(V₁²−V₂²)=7.5 kPa 戻る。3.0+4.5=7.5 で合う。損失係数は (1−0.25)²≒0.56。
- 断面積が変わる所の損失は、小さいほうの断面の平均流速で計算する。
- 入口のかどに丸みをつけると、急縮小(管の入口)の損失係数は著しく小さくなる。
- 管路の計算では、損失エネルギーそのものか、摩擦による静圧の変化かを区別する(断面が変わると流速の変化分が加わる)。
差圧から流量・流速を求める(ベンチュリ・オリフィス・ピトー管) ── Q∝√Δp

| 計器 | 差圧の作り方 | 係数・注意 |
|---|---|---|
| ベンチュリ管 | ゆるやかに絞ったのど部で速くし、圧力の低下を読む | 流出係数はほぼ 1 |
| オリフィス | 板の穴で絞る。流れは縮流部まで縮んでから広がる | 流量係数 0.6〜0.8(実験で決める) |
| ピトー管(ピトー静圧管) | 先端で流れを止めた全圧と、側面の静圧の差を読む | 差圧=動圧 ½ρV²。低流速に向かない |
| 共通の式 | Q=CmA√(2Δp/ρ) | 流量は差圧の平方根に比例 |
なぜ:どの計器も、ベルヌーイの式で速度のエネルギーと圧力を付け替えて差圧を作ります。差圧は動圧 ½ρV² の差なので、速さは差圧の平方根に比例します。流量は速さ×断面積なので、流量を2倍にすると差圧は4倍になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| オリフィスで流量を2倍にすると、前後の差圧も2倍になる | × | 差圧は約4倍 |
| ベンチュリ管の流出係数はほぼ 1、オリフィスの流量係数は 0.6〜0.8 程度 | ○ | オリフィスは縮流して急に広がる |
| ピトー静圧管は、先端の孔で静圧を、側面の孔で全圧を測る | × | 先端で全圧、側面で静圧 |
| ピトー管が低流速に向かないのは、差圧が流速の2乗に比例して小さくなりすぎるから | ○ | 流れと軸の向きも合わせる |
| オリフィスの開口比は、開口面積に対する縮流部の断面積の比 | × | 管の断面積に対する開口面積の比(縮流部の比は縮流係数) |
例題
水の管にオリフィス(穴の内径 50 mm、流量係数 0.65)を入れたら、前後の差圧が 20 kPa でした。流量を求めます(水 1,000 kg/m³)。
①穴の面積:A=(π/4)×0.050²=1.96×10⁻³ m²。
②√(2Δp/ρ)=√(2×20,000÷1,000)=6.32 m/s。
③Q=0.65×1.96×10⁻³×6.32≒8.07×10⁻³ m³/s(約 29 m³/h)。
④確かめる:差圧が 80 kPa(4倍)なら √4=2 で流量は2倍。差圧を流量に直すには平方根をとる。
- 開口比 m=AB/AA(管の断面積に対する穴の面積)。縮流係数=縮流部の面積÷穴の面積。
- 流量係数 Cm は、流出係数 C に面積比の効き(オリフィスでは縮流係数と開口比も)をまとめた係数。
- ピトー管は流速の分布の測定に使う。流れの方向と軸が一致しないと正しく測れない。
- 流れを止めた点をよどみ点といい、そこで測る圧力が全圧(総圧)。
圧縮性流体とノズルの流れ ── 絞りで音速に達すると流量はそれ以上増えない

| 周囲の圧力 pb/タンクの圧力 p₀ | ノズルの出口 | 流量 |
|---|---|---|
| 1(同じ) | 流れない | 0 |
| 臨界圧力比より大きい | 音速より遅い。出口の圧力=周囲の圧力 | 周囲の圧力を下げると増える |
| 臨界圧力比(空気で 0.528) | 出口で音速に達する | 最大 |
| 臨界圧力比より小さい | 音速のまま。出口は臨界圧力で一定、出てから急に膨張 | 増えない(閉そく状態) |
なぜ:圧力の変化は、音速で上流へ伝わります。出口の流れが音速になると、周囲の圧力が下がったという知らせが上流に届かず、流量はタンクの状態だけで決まります。臨界圧力比 (2/(κ+1))κ/(κ−1) は比熱比 κ だけで決まります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 先細ノズルで周囲の圧力を下げていくと、ある所から流量が増えなくなる | ○ | 出口が音速に達する(閉そく) |
| 空気をタンクから放出するとき、周囲の絶対圧がタンクの約 0.528 倍以下なら流量は一定 | ○ | 比熱比 1.40 の臨界圧力比 |
| 臨界状態の出口の流速は、タンクの温度だけで決まり、圧力によらない | ○ | Vc=√(2κRT₀/(κ+1)) |
| 高速の気流に差し込んだ温度計は、流れの静温度より低い値を示す | × | 流れが止まって高くなる(回復温度) |
例題
タンクに空気(比熱比 1.40、ガス定数 287 J/(kg·K))があります。絶対圧 400 kPa、温度 300 K です。周囲が 101.3 kPa のとき、閉そくするか、出口の流速はいくらかを求めます。
①臨界圧力:0.528×400≒211 kPa。
②周囲の 101.3 kPa は 211 kPa より低いので閉そく。出口は音速で、流量はこれ以上増えない。
③出口の流速:Vc=√(2×1.40÷2.40×287×300)≒317 m/s。
④比べる:タンクが 180 kPa なら臨界圧力は 0.528×180≒95.0 kPa。周囲の 101.3 kPa より低いので閉そくしない。
- 流れを止めた点では cpT+V²/2=cpT₀。T₀ を全温度、流れの温度を静温度という。
- 温度計は周りの流れに冷やされるので、静温度と全温度の間の回復温度を示す。速いほど静温度との差が大きい。
- 実際の流量は、損失のない計算値にノズルの流量係数を掛けた値。
- 気体でも流速が比較的小さければ、非圧縮として扱ってよい。
気液二相流と固気二相流 ── 量の割合で流動様式が変わり、損失も伝熱も変わる
| 用語 | 中身 | 取り違えやすい点 |
|---|---|---|
| 流動様式(垂直管・上向き) | 気体を増やすと 気泡流→スラグ流→フロス流→環状流(環状噴霧流)→噴霧流 | 順番 |
| スラグ流・フロス流 | 気相と液相が交互に流れ、管内の圧力が大きく変動する | 気泡流・噴霧流は単相流のように安定 |
| ボイド率 | 管路に含まれる気相の体積割合(気体体積率) | クォリティーと混同させる |
| クォリティー | 全質量流量に対する気相の質量流量の割合(蒸気なら乾き度) | 体積でなく質量 |
| 水平管の環状流 | 液膜は上側より下側が厚い | 流速が増すとほぼ一様になる |
| 粉粒体の空気輸送 | 吸引式(大気圧より低い)と圧送式(高い) | 大量・長距離は圧送式 |
なぜ:気体と液体は密度が大きく違うので、同じ速さでは流れません。量の割合と流速で流れの形(流動様式)が変わり、壁の濡れ方や気液の入れ替わり方が変わります。そのため圧力損失や伝熱が大きく変わり、どの様式かを先に見きわめます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 垂直管を上向きに流れる水と空気は、空気を増やすと気泡流→スラグ流→フロス流→環状噴霧流→噴霧流の順に変わる | ○ | 気相がつながっていく順 |
| スラグ流やフロス流で圧力が大きく揺れるのは、気相と液相が交互に流れるから | ○ | フロス流はとくに不安定 |
| クォリティーは気相の体積の割合で、ボイド率ともいう | × | クォリティーは質量流量の割合 |
| 水平管の環状流では液膜が下側で厚く、流速が増すとほぼ一様になる | ○ | 重力の影響が流速で小さくなる |
| 粉粒体を大量に長い距離運ぶには、吸引式の空気輸送が向く | × | 圧送式。吸引式は漏れ込みで輸送量が下がる |
- スリップ比:気相と液相の速さの比。両相の速さが違うので、ボイド率とクォリティーはスリップ比を通じて結び付く。
- 外から加熱されるボイラの蒸発管では、液単相流から上の流動様式が順に連続して現れる。
- 水平管で流速が小さいと、気相が上・液相が下に分かれた層状流、液面に波が立つと波状流になる。
- 吸引式は供給部が簡単で、数か所から吸い込んで1か所に集められる。圧送式は1か所から数か所へ分配できる。
出典:エネルギー管理士試験講座 熱Ⅱ「熱と流体の流れの基礎」2編2章。熱Ⅳ「熱利用設備及びその管理」1編3章。
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