熱Ⅲの燃焼計算のうち、発熱量・燃焼ガス温度・排ガス損失・空気予熱・CO₂排出量の論点を、表と例題で並べました。理論空気量・燃焼ガス量・空気比は燃焼計算の論点の記事にあります。
高発熱量と低発熱量 ── 差は燃焼でできた水と水分の凝縮潜熱
| 項目 | 高発熱量 Hh | 低発熱量 Hl |
|---|---|---|
| 燃焼でできた H₂O | 液体の水に戻す | 水蒸気のまま |
| 水蒸気の凝縮潜熱 | 含む | 含まない |
| 熱量計で測れるのは | こちら | 計算で出す |
| 工業用設備の熱効率 | 潜熱回収を検討するとき | 多くはこちら |
燃焼ガスを元の温度まで冷やすとき、水蒸気が水になれば凝縮潜熱の分だけ余分に熱が出ます。その水は、燃料中の水素が燃えてできた分と燃料中の水分の両方です。水素も水分も含まない燃料(CO など)では、高発熱量と低発熱量は等しくなります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 高発熱量と低発熱量の差は、燃焼でできた水蒸気(燃料の水分の分も含む)の凝縮潜熱 | ○ | 水になるか、水蒸気のままか |
| 固体・液体燃料の低発熱量は Hh−2.44(h+w) MJ/kg | × | 水素 h kg から水 9h kg。2.44(9h+w) |
| ボンブ型断熱熱量計で測る固体・液体燃料の発熱量は低発熱量 | × | 中で水蒸気が凝縮するので高発熱量 |
| 工業用設備の熱効率に低発熱量を使うことが多いのは、腐食を避けて潜熱まで回収しないから | ○ | 使えない潜熱を分母に入れない |
| 一酸化炭素の高発熱量と低発熱量の差は、水素と同じく約2 MJ/m³N | × | 水ができないので差は0(どちらも12.63) |
例題
水素12%・水分2%(質量割合)で、高発熱量 44.0 MJ/kg の液体燃料の低発熱量を求めます(値は仮のもの)。
①できる水:9h+w=9×0.12+0.02=1.10 kg/kg。
②凝縮潜熱:2.44×1.10=2.68 MJ/kg。
③低発熱量:Hl=44.0−2.68=41.32 MJ/kg。
④桁を確かめる:差は高発熱量の約6%。水素の多い燃料ほど差が開く。
- 水素 1 kg から水 9 kg ができるのは、水素 2 kg に酸素 16 kg が付いて水 18 kg になるから。
- 2.44 MJ/kg は 25℃での水の凝縮潜熱。概略値として 2.5 MJ/kg を使うこともある。
- 気体燃料では 1 m³N あたりで Hl=Hh−1.96{h₂+Σ(n/2)cₘhₙ}。{ } の中はできる水蒸気の体積。
組成から発熱量を求める ── 気体は成分の発熱量×体積割合の和

| ガス 1 m³N | 高発熱量 Hh〔MJ〕 | 低発熱量 Hl〔MJ〕 |
|---|---|---|
| 水素 H₂ | 12.74 | 10.78 |
| 一酸化炭素 CO | 12.63 | 12.63 |
| メタン CH₄ | 39.82 | 35.88 |
| エタン C₂H₆ | 70.33 | 64.38 |
| 混合ガス | Σ(各成分の Hh×体積割合) | Σ(各成分の Hl×体積割合) |
気体燃料の成分は化学的に結合せず混ざっているだけなので、メタンはメタン、水素は水素として燃えます。それぞれの熱を体積割合で足せば、全体の発熱量になります。固体・液体燃料は元素どうしが結合していて、結合の状態で持つエネルギーが変わります。元素ごとの値を足すだけでは正確になりません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 水蒸気 1 m³N の凝縮潜熱は約1.96 MJ で、2.44 MJ/kg に 18/22.4 を掛けた値 | ○ | 水 1 m³N は 18/22.4 kg |
| 気体燃料の発熱量を成分の値×体積割合の和で出せるのは、成分が混ざっているだけだから | ○ | 成分は別々に燃える |
| メタン80%・水素20%(体積)の混合ガスの高発熱量は約34.4 MJ/m³N | ○ | 0.8×39.82+0.2×12.74 |
| 石炭の使用時ベースの高発熱量は、気乾ベースの値に (1+w₂) を掛ける | × | 湿分の分だけ燃える部分が減るので (1−w₂) |
| 燃料中の酸素が水素と結合しているかどうかは、発熱量にも影響しない | × | 空気量は同じだが、発熱量は変わる |
例題
メタン90%・エタン10%(体積割合)の燃料ガスの高発熱量と低発熱量を求めます。
①高発熱量:0.90×39.82+0.10×70.33=35.84+7.03=42.87 MJ/m³N。
②できる水蒸気:0.90×2+0.10×3=2.10 m³N/m³N。
③低発熱量:42.87−1.96×2.10=42.87−4.12=38.75 MJ/m³N。
④確かめる:低発熱量どうしを足しても 0.90×35.88+0.10×64.38=38.73 で、ほぼ一致。
- 気体燃料の発熱量もユンカース式流水形熱量計で測るのが原則で、測れるのは高発熱量。
- 石炭は水分の条件で、使用時・気乾・無水のベースを分けて表す。使用時ベースの高発熱量は Hh=Hh*(1−w₂)。
- 水素は体積あたりの発熱量がメタンの約3分の1。体積で混ぜた割合ほどには熱量は変わらない。
燃焼前後の熱収支と理論燃焼ガス温度 ── 空気比1で最高、外すと下がる

| 条件 | 出る熱・持ち込む熱 | 温めるガスの量 → 温度 |
|---|---|---|
| 空気比 1 より小さい | CO などが残って減る | 少ないが、発熱の減りが大きく下がる |
| 空気比 1 | 全部出る | 最も少ない → 最高 |
| 空気比 1 より大きい | 全部出る | 過剰空気の分増える → 下がる |
| 空気を予熱 | 予熱の顕熱が加わる | 同じ → 上がる |
| 酸素富化空気 | 同じ | 窒素が減って少ない → 上がる |
燃料が出した熱と予熱で持ち込んだ熱は、燃焼ガスを温めるか、外へ逃げるかのどちらかに行きます。温める分をガスの量と比熱の積で割れば温度上昇になるので、熱を増やすかガス量を減らせば温度は上がります。空気比1未満では、ガスが減る効果より発熱が減る効果のほうが大きくなります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 燃焼ガス温度は Tg=(ηcHl+Qp−Qr)/(G·cpm)+T₀ で表される | ○ | 燃焼前後のエネルギーを等しくおく |
| 断熱理論燃焼ガス温度は、空気比を1より大きくするほど高くなる | × | 空気比1で最高。過剰空気を温める分下がる |
| 空気比1未満ではガス量が減るので、温度は空気比1のときより高い | × | CO が残って発熱が減るので低い |
| 燃焼効率とは、発熱量のうち被熱物に伝わった熱の割合 | × | 化学エネルギーが熱に変わった割合(未燃物の分だけ1より小さい) |
| 酸素富化空気で温度が上がるのは、窒素が減って燃焼ガス量が少なくなるから | ○ | 分母の G が小さくなる |
例題
燃焼ガス量の例題の液体燃料(A₀ 11.73、G₀ 12.63 m³N/kg)を使います。低発熱量は 43 MJ/kg とします(仮の値)。基準温度の空気で完全燃焼させ、放熱はなく、cpm は 1.6 kJ/(m³N·K) で一定とみなします。
①空気比1.2:G=12.63+0.2×11.73=14.98 m³N/kg。温度上昇は 43,000÷(14.98×1.6)=1,794 K。
②空気比1.5:G=12.63+0.5×11.73=18.50 m³N/kg。温度上昇は 43,000÷(18.50×1.6)=1,453 K。
③単位を確かめる:kJ/kg ÷ {m³N/kg×kJ/(m³N·K)}=K。MJ を kJ に直す1,000倍を落とすと桁が3つずれる。
④比べる:空気比を 1.2 から 1.5 にすると、約340 K 下がる。
- 断熱(Qr=0)・完全燃焼(ηc=1)・予熱なし(Qp=0)のとき Tth=Hl/(G·cpm)+T₀。燃料の種類と空気比だけで決まる。
- 燃焼効率は ηc=1−(未燃物の発熱量)/(燃料の発熱量)。熱効率(被熱物に渡った割合)とは別。
- 実際の比熱は温度で変わるので、正確に求めるときは温度を仮定して繰り返し計算する。
関連:燃焼温度と熱解離
排ガス損失と顕熱・潜熱の回収 ── ガス量と温度を下げ、潜熱まで回収

| 手 | 下げるもの | 限りになる所 |
|---|---|---|
| 空気比を下げる | 燃焼ガス量 | 未燃分が出ない範囲まで |
| 節炭器(ボイラ給水で回収) | 排ガス温度 | 脱気した給水は100℃以上なので、その近くまで |
| 空気予熱器(燃焼用空気で回収) | 排ガス温度 | 常温の空気が相手なので低くまで。伝熱面は酸露点より上に保つ |
| 潜熱回収(水蒸気の露点より下まで冷やす) | 水蒸気の潜熱 | 凝縮水による腐食、排ガスの大気への拡散 |
排ガスの保有熱は、湿り燃焼ガス量と比熱と温度差の掛け算です。だから量と温度のどちらを下げても減ります。熱は温度差がないと移らないので、排ガスは受け取る相手(給水・空気)の温度より下には冷えません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 排ガスが持ち去る熱は、湿り燃焼ガス量×平均定圧比熱×(排ガス温度−基準温度) で見積もる | ○ | 基準温度は一般に 25℃(298 K) |
| 排ガス温度が同じなら、空気比を下げてガス量を減らしても排ガス損失は変わらない | × | ガス量にほぼ比例して減る |
| 節炭器は燃焼用空気で、空気予熱器はボイラ給水で排ガスの熱を回収する | × | 逆。節炭器は給水、空気予熱器は空気 |
| 伝熱面の温度を酸露点より低く保つほど、低温腐食を防ぎやすい | × | 酸露点以上に保つか、耐食性を上げる |
| 潜熱回収を検討するときも低発熱量基準のままでよく、潜熱を損失に数えなくてよい | × | 高発熱量基準にし、潜熱の損失も数える |
例題
前の論点の燃料(低発熱量 43 MJ/kg)を使います。排ガスの平均定圧比熱は 1.40 kJ/(m³N·K)、基準温度は 25℃ とします(仮の値)。
①空気比1.2・排ガス 220℃:14.98×1.40×(220−25)=4,090 kJ/kg。低発熱量の 9.5%。
②空気比を1.1に下げる:G=12.63+0.1×11.73=13.80 m³N/kg。13.80×1.40×195=3,767 kJ/kg で 8.8%。
③さらに排ガスを 160℃ まで回収:13.80×1.40×(160−25)=2,608 kJ/kg で 6.1%。
④桁を確かめる:損失は kJ/kg、低発熱量は MJ/kg。比べるときは単位をそろえる。
- 空気予熱器が節炭器より低い温度まで冷やせるのは、相手の空気が常温で入るから。
- 酸露点は燃料の硫黄分で変わり、100℃を超えることもある。
- 排ガスを60℃程度まで冷やして潜熱まで回収すれば、低発熱量基準の効率は 97〜98% に達しうるとされる。家庭用の給湯・暖房器ではすでに使われている。
関連:ボイラの効率と熱損失
空気予熱による燃料の節減 ── 排ガス温度が高い炉ほど節約率が大きい

| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 燃料の有効熱量 | 低発熱量−排ガス顕熱(炉内に残る熱) |
| 燃料節約率 | 予熱空気の顕熱÷(有効熱量+予熱空気の顕熱) |
| 排ガス温度が高い炉 | 有効熱量が小さいので、同じ予熱でも節約率が大きい |
| 予熱空気の温度が高い | 予熱の顕熱が大きいので、節約率が大きい |
炉が必要とするのは、燃料が炉内に残していく熱(有効熱量)です。予熱した空気はその顕熱を炉に持ち込むので、同じ熱を炉に入れるのに要る燃料が減ります。回収した熱がそのまま同じ炉の燃焼に戻るので、使い道を別に探す必要もありません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 燃料節約率=予熱空気の顕熱÷(燃料の有効熱量+予熱空気の顕熱)、有効熱量=低発熱量−排ガス顕熱 | ○ | 単位燃料あたりで計算 |
| 同じ予熱空気温度なら、排ガス温度の高い炉ほど燃料節約率は小さい | × | 有効熱量が小さいので大きい |
| 空気予熱の利用効率が高いのは、回収した熱がそのまま同じ炉の燃焼に戻るから | ○ | 炉内で使える熱を直接増やす |
| 工業炉の熱回収で、レキュペレータは蓄熱式、リジェネレイタは換熱式 | × | 逆。レキュペレータが換熱式 |
| 予熱空気を使うと、断熱理論燃焼ガス温度も上がる | ○ | 式の分子の Qp が増える |
例題
単位燃料あたり低発熱量 42 MJ、予熱空気の顕熱 7 MJ とします。排ガス顕熱が 21 MJ の高温炉と、10.5 MJ の低温炉を比べます(値は仮のもの)。
①高温炉:有効熱量 42−21=21 MJ。節約率 7÷(21+7)=25%。
②低温炉:有効熱量 42−10.5=31.5 MJ。節約率 7÷(31.5+7)=18.2%。
③誤りやすい形:7÷42=16.7% は、分母を低発熱量にした誤り。
④確かめる:同じ 7 MJ の予熱でも、排ガス損失の大きい高温炉のほうが効く。
- 工業炉の熱回収には、レキュペレータ(換熱式)がもっとも多く、ついでリジェネレイタ(蓄熱式)が使われる。
- 蓄熱式の熱交換器をバーナ1個ごとに組み合わせたのが、蓄熱燃焼式バーナ(リジェネレイティブバーナ)。
- 予熱すると燃焼ガス温度も上がるので、高温を要する炉ほど効く。
関連:炉の省エネルギーと熱勘定
混焼・燃料転換とCO₂排出量 ── 熱量あたりの炭素の量で比べる

| 燃料(完全燃焼) | CO₂÷低発熱量 | 熱量あたりの CO₂ |
|---|---|---|
| 重油(c 0.87) | 3.19 kg/kg÷40.19 MJ/kg | 約79 g/MJ |
| プロパン | 5.89 kg/m³N÷93.15 MJ/m³N | 約63 g/MJ |
| メタン | 1.96 kg/m³N÷35.88 MJ/m³N | 約55 g/MJ |
| 一酸化炭素 | 1.96 kg/m³N÷12.63 MJ/m³N | 約156 g/MJ |
| 水素 | 0÷10.78 MJ/m³N | 0 |
燃料から出る CO₂ は燃料中の炭素だけで決まり、空気の量や空気比は関係しません。同じ熱を少ない炭素で得られる燃料ほど排出が少なくなります。発熱の一部を水素の燃焼が担う燃料(メタンなど)が有利なのはこのためです。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 燃料 1 kg から出る CO₂ の質量は、炭素の割合 c に 44/12 を掛けて求める | ○ | 炭素 12 kg に酸素 32 kg が付いて CO₂ 44 kg |
| 発熱量あたりの CO₂ で比べると、メタンは重油より約3割少ない | ○ | 約55 g/MJ と約79 g/MJ |
| 一酸化炭素は燃料ガスなので、メタンより発熱量あたりの CO₂ が少ない | × | CO₂ は同じ 1 m³N で熱は約3分の1。約2.8倍 |
| 体積でメタン50%・水素50%にすると、同じ熱量あたりの CO₂ はメタンだけの半分 | × | 水素が担う熱は約23%なので、減るのも約23% |
| 重油から天然ガスへの転換で CO₂ が減るのは、理論空気量が少ないから | × | 水素の割合が大きく、水素の燃焼が熱の一部を担うから |
例題
メタン70%・水素30%(体積割合)の混焼ガス 1 m³N の、熱量あたりの CO₂ を求めます。
①CO₂:メタンの分 0.70 m³N だけ。0.70×44/22.4=1.375 kg。
②低発熱量:0.70×35.88+0.30×10.78=25.12+3.23=28.35 MJ。
③熱量あたり:1.375÷28.35=0.0485 kg/MJ=48.5 g/MJ。メタンだけ(54.7 g/MJ)より約11%少ない。
④確かめる:水素が担う熱は 3.23÷28.35=11.4%。減り方はこの熱量の割合と同じで、体積の30%ではない。
- CO₂ 1 m³N は 44/22.4=1.96 kg。体積で出た CO₂ を質量に直すときに使う。
- 混焼率が体積基準か熱量基準かを、必ず確かめる。
- 燃料中の炭素が同じなら、空気比を変えても CO₂ の量は変わらない(割合は変わる)。
出典:エネルギー管理士試験講座(省エネルギーセンター)熱分野Ⅲ「燃料と燃焼」2編 1・3・5章。同 熱分野Ⅳ「熱利用設備及びその管理」2編 1・3章
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