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装置別の制御の例|蒸留塔・反応器・加熱炉・ボイラ・圧縮機のサージ防止、どこに何の調節計があるか

装置別の制御の例のアイキャッチ

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装置ごとの制御ループは、どれも 「守りたい値(温度・圧力・液面)」と「動かす流れ(燃料・蒸気・冷却水・還流・給水)」の組み合わせでできています。そして多くの場合、間に流量調節計が入ったカスケードの形をしています。

この読み方を覚えれば、初めての装置の P&ID や DCS の画面でも「この温度調節計は何を動かしているのか」がすぐ分かります。

この記事では、蒸留塔・反応器・加熱炉・ボイラ・圧縮機の5つについて、どこに何の調節計があり、なぜその形なのかを順に見ていきます。

この記事の結論

  • 装置の制御は 「守る値」「動かす流れ」「間に流量調節計があるか」の3つを確かめれば読める
  • 蒸留塔は、塔頂で冷やす量、塔底で温める量、還流ドラムと塔底の2つの液面、供給流量の 5つのループが基本形
  • 反応器は、内部温度 → ジャケット温度の2段カスケードで、1つの出力を冷却水弁とスチーム弁に分担させる(スプリットレンジ)
  • 加熱炉は、出口温度 → 燃料流量のカスケードが基本。ボイラは、蒸気圧力が燃料と空気を、ドラム液面が給水を、それぞれ受け持つ
  • 圧縮機のサージ防止は、ふだん全閉の放出弁を、限界の手前で素早く開くための制御。積分飽和の対策が欠かせない
  • 1つの装置でも、ループ同士はつながっている。1つを手動にしたら、どのループが影響を受けるかを先に考える

1. 制御の地図の読み方|「守る値」と「動かす流れ」

P&ID で調節計のバルーン(TIC、LIC、PIC、FIC)を見つけたら、次の3つの問いを順に当てはめます。

  1. 何を守っているか:調節計の頭文字が測っている量(T=温度、L=液面、P=圧力、F=流量)
  2. 何を動かしているか:調節計の出力の点線をたどった先の弁。その弁が絞っている流れ(燃料、蒸気、冷却水、製品)
  3. 間に流量調節計があるか:温度や液面の調節計の出力が、弁ではなく流量調節計の設定値に入っていればカスケード

この3つで、代表的な5つの装置を先に一覧にしておきます。

装置守る値(一次)動かす流れ形
蒸留塔塔頂と塔底の温度、2つの液面冷却水、リボイラのスチーム、還流、塔底抜出し温度 → 流量のカスケード+液面の単純ループ
反応器反応液の温度ジャケットの冷却水とスチーム温度 → 温度のカスケード+弁の分担
加熱炉炉の出口温度燃料温度 → 流量のカスケード
ボイラ蒸気圧力、ドラム液面、蒸気温度燃料と空気、給水、減温水3つの系統それぞれがカスケード
圧縮機サージ限界からの距離放出弁(またはバイパス弁)ふだん閉じている弁の圧力制御

以下、それぞれの装置で「なぜその形なのか」を見ます。カスケードの基本はカスケード制御の記事で説明しているので、ここでは装置ごとの事情に絞ります。

2. 蒸留塔|上で冷やし、下で温め、2つの液面を保つ

蒸留塔は、上の段ほど温度と圧力が低く、下の段ほど高くなるように運転します。計装の教科書は、そのためにコンデンサの冷却水とリボイラのスチームの流量を制御する例を示しています。ループごとに分けるとこうなります。

蒸留塔の5つの制御ループ
蒸留塔の5つの制御ループ
調節計測る場所動かすもの役割
供給 FIC供給液の配管供給液の弁塔に入る量を一定にする
塔頂 TIC → FIC塔頂の蒸気の温度コンデンサの冷却水流量塔の上を冷やす量を決める
還流ドラム LIC還流ドラムの液面還流の弁凝縮した液をためすぎず空にもしない
塔底側 TIC → FIC塔の下のほうの段の温度リボイラのスチーム流量塔の下を温める量を決める
塔底 LIC塔底の液面塔底抜出しの弁塔底の液を一定に保つ

温度調節計はどちらも、弁を直接動かさずに流量調節計の設定値を動かしています。冷却水やスチームの圧力が変わっても、流量調節計が先に直すので、塔の温度まで乱れが届きにくい。これがカスケードにしている理由です。

ただし教科書も「一例」と断っているとおり、塔頂の圧力を凝縮器で制御する形や、還流を流量で固定して液面で留出液を動かす形など、組み合わせは塔ごとに違います。塔頂圧力については、蒸留塔の塔頂圧力の記事で詳しく扱っています。

蒸留塔のループは互いに強くつながっています。リボイラのスチームを増やせば上がる蒸気が増え、塔頂の温度も還流ドラムの液面も動きます。1つのループを手動にするときは、残りのループがその変化を受け止められるかを先に確かめます。

3. 反応器|温度を2段のカスケードで守り、冷却と加熱を1つの出力で分担する

反応器の制御は温度が主役です。教科書の塩化ビニルの重合反応器の例では、スチームまたは温水で約60℃まで昇温すると重合が始まり、そこからは反応熱を冷却水で取って一定温度に保ちます。除熱が追いつかないと何が起きるかは反応暴走を防ぐで扱っています。同じ反応器で「最初は温め、途中から冷やす」ための工夫が2つあります。

反応器は1つの出力で冷却と加熱
反応器は1つの出力で冷却と加熱

1つ目は、内部温度の調節計(TIC1)→ ジャケット温度の調節計(TIC2)の2段カスケードです。速く変わるジャケットの温度を TIC2 が先に整えるので、冷却水やスチームの変動が反応液に届く前に消えます。

2つ目が、スプリットレンジ(1つの調節計の出力範囲を分けて、2つの弁に受け持たせる方式)です。教科書の図では、TIC2 の出力の中央を境に、小さい側で冷却水弁、大きい側でスチーム弁が開きます。

TIC2 の出力冷却水弁スチーム弁反応器の状態
小さい側開く閉反応熱を取っている
中央付近ほぼ閉ほぼ閉熱の出入りがほぼ釣り合う
大きい側閉開く昇温中

教科書は重合反応の特徴として、反応温度は50〜70℃が多く、昇温時の行き過ぎ(オーバーシュート)を嫌うこと、±0.1℃の精密な制御が要り、温度測定には測温抵抗体を使うことを挙げています。起動時に出力が振り切れる積分飽和は、ここで最も効いてきます(積分飽和とハンチングの記事)。

反応器からの熱の取り方そのもの(ジャケット、コイル、外部循環、還流冷却)は、反応器の除熱の記事で扱っています。

4. 加熱炉|出口温度を燃料流量で守る、外乱が大きいときの別解

教科書の例は、原油を約350℃に加熱して蒸留塔へ送る加熱炉です。基本形は、炉の出口温度の調節計(TIC)の出力を、燃料流量の調節計(FIC)の設定値にするカスケードです。燃料の圧力が変わっても、流量調節計が燃料の流量を保つので、炉の出口温度には影響が出にくくなります。

ただし炉は熱容量が大きいので、外乱が大きいと温度が安定しにくい、と教科書は書いています。そこで示されている別解が次の組み替えです。

  1. 出口温度 → 燃料流量のカスケードを切り、燃料流量は一定に制御する
  2. 出口温度の調節計の出力を、原油流量の調節計の設定値にする
  3. 生産量を増減するときは、燃料流量の設定を徐々に変える

原油流量を変えたときの出口温度の応答は、燃料流量を変えたときより速いからです。温度を守る流れは1つに決まっておらず、応答の速い流れを選ぶのが原則です(プロセスの特性)。

5. ボイラ|蒸気圧力・ドラム液面・蒸気温度の3つの系統

工場のドラム式ボイラの制御は、燃焼・給水・蒸気温度の3つの系統に分けて考えます。

系統守る値動かすもの要点
燃焼主蒸気の圧力燃料流量と燃焼空気流量空気を多めに保って黒煙を出さない
給水ドラムの液面給水流量液面・給水流量・蒸気流量の3つで制御
蒸気温度過熱器出口の蒸気温度減温水(注水)の流量温度 → 温度のカスケード

燃焼の系統では、蒸気の使用量が変わると主蒸気の圧力が変わるので、主蒸気の圧力調節計が、燃料と空気の両方の設定値を決めます。このとき、負荷が増えるときは空気を先に増やしてから燃料を増やし、負荷が減るときは燃料を先に減らしてから空気を減らします。空気が燃料より少なくなる瞬間を作らないためで、黒煙と不完全燃焼を防ぎます。空気と燃料の比率は、排ガスの酸素濃度で補正します。

給水の系統は、ドラム液面の調節計 → 給水流量の調節計のカスケードに、蒸気流量の変化を先回りして足し込むフィードフォワードを組み合わせます。液面・給水流量・蒸気流量の3つを使うので、3要素制御と呼ばれます。

ドラム式ボイラには、ドラム液面の逆応答という癖があります。蒸気の使用量が急に増えると、本来は液面が下がるはずなのに、いったん液面が上がってから急に下がります。圧力が下がって水管の中で水が一気に沸騰し、その泡の体積で液面が持ち上がるためです。教科書は、影響は比較的少なく3要素制御で充分制御できる、としています。逆応答の瞬間に液面計だけを見て給水を絞ると、そのあとの液面低下に間に合わないので、蒸気流量を先に見る3要素制御が意味を持ちます。蒸気温度の系統も、過熱器出口の温度 → 減温器出口の温度のカスケードに、蒸気流量のフィードフォワードを加える形です。

6. 圧縮機のサージ防止|ふだん閉じている放出弁を、限界の手前で開く

ターボ圧縮機やブロワは、吸込流量がある限界より少なくなると、振動を始めます。これがサージング(吸込流量が少なすぎて起きる脈動と振動)で、翼の失速が次々に伝わって機械の固有振動数と共振すると、破損につながります(送風機の場合は送風機のサージングと並列・直列運転)。

放出弁を限界の手前で開く
放出弁を限界の手前で開く

振動を始める下限の流量は、吐出圧力によって変わります。吐出圧力が高いほど、サージングが起きる流量も大きくなる。この関係は機械ごとに固有で、メーカーが示す特性曲線で確かめます。

教科書のサージング防止制御の例は、次の組み立てです。

  1. 吸込流量を測り、関数演算(F(x))で「サージング限界より安全側に余裕をとった吐出圧力」に換算する
  2. その値を、サージング防止調節計(XIC)の設定値にする
  3. XIC は吐出圧力を測り、設定値を超えないように 放出弁を開く。プロセス側の使用量が減っても、放出弁から逃がして圧縮機の流量を保つ

この制御の難しさは、放出弁がふだん全閉で運転されていることです。通常運転では吐出圧力が設定値より低いので、積分動作が出力を下限に押し付け続け、いざ限界に近づいたときに放出弁が開くのが遅れます。教科書は、サージング限界になったときに素早く放出弁を開くアンチリセットワインドアップ機能が必要だと注記しています。圧縮機側から見た制御線とリサイクル弁の考え方は圧縮機のサージングとアンチサージ制御で説明しています。プロセス設計の教科書も、吸込側へ戻すバイパス弁が平常は常に閉じていて、調節計が積分飽和の状態にあるはずだ、と同じ点を指摘しています。風量の絞り方は、送風機の風量制御の記事も参考になります。

7. 現場で見る場所

  1. カスケードのモード:二次側の流量調節計が CAS でなければ、一次側の温度や液面の制御は効いていない
  2. スプリットレンジの境目:反応器の TIC2 の出力が中央付近にあると、冷却水弁とスチーム弁が交互に小さく動く。両方の開度計を見て、同時に開いていないかを確かめる
  3. ボイラのドラム液面:負荷急増時に液面が一瞬上がるのは逆応答。蒸気流量と給水流量のトレンドを重ねて見る
  4. サージ防止の放出弁:ふだん全閉なので、固着しても気づきにくい。試運転や定期修理のときに、実際に開くかを確かめる
  5. ループ同士のつながり:1つを手動にする前に、同じ装置のどのループがその変化を受けるかを考える

8. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. 蒸留塔の塔頂と塔底の温度調節計は、それぞれ何を動かしていますか。
  2. 反応器のスプリットレンジで、調節計の出力が小さい側と大きい側では、どちらの弁が開きますか。
  3. サージング防止の調節計に、積分飽和の対策が特に必要なのはなぜですか。

答えは順に、塔頂はコンデンサの冷却水流量、塔底はリボイラのスチーム流量(どちらも流量調節計の設定値を経由)/教科書の例では、小さい側で冷却水弁、大きい側でスチーム弁が開く/放出弁がふだん全閉で、調節計の出力が下限に張り付いたまま待機しているので、限界に近づいたときに弁を開くのが遅れるから、です。

まとめ

装置ごとの制御ループは、「守る値」「動かす流れ」「間に流量調節計があるか」の3つで読めます。蒸留塔は温度 → 流量のカスケード2つと液面のループ2つと供給流量、反応器は内部温度 → ジャケット温度のカスケードとスプリットレンジ、加熱炉は出口温度 → 燃料流量のカスケード、ボイラは燃焼・給水・蒸気温度の3系統が基本形です。圧縮機のサージ防止は、ふだん全閉の放出弁を限界の手前で素早く開く制御で、積分飽和の対策が欠かせません。1つを手動にするときは、残りのループへの波及を先に考えてください。

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参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 8.2「プロセス計装への応用」(8.2.1 加熱炉、8.2.2 蒸留塔、8.2.3 反応缶、8.2.6 ボイラ、8.2.7 サージング防止)  Amazonで見る
  • 化学工学協会編『プロセス設計シリーズ7 プロセスの制御と計算機制御』丸善, 2・1・4「積分圧飽和」
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