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石化プラントで働くとはどういうことか|交替勤務・コンビナート・定修——持つ6社の現場を現役技術者が説明する

企業研究シリーズ(→化学メーカー大手29社の違い)で29社を並べたとき、いちばん太い分かれ目は「石化セグメントを持つか」でした。持つのは住友化学・三菱ケミカルグループ・旭化成・三井化学・東ソー・レゾナックの6社。

でも就活生にとっての本当の分かれ目は、決算ではなく現場です。石化プラントは、24時間連続運転・交替勤務・コンビナート立地・数年に一度の定期修理(定修)と、同じ化学メーカーの川下の工場とは働き方が別物です。

私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事は特定の会社の話ではなく、石化の現場が「どういう場所か」を、配属される前に知っておいてほしいことだけに絞って書きます。

石化プラントとは|ナフサクラッカーから始まる巨大装置

出発点はナフサクラッカー

石油化学の出発点はナフサクラッカー(ナフサ分解炉)です。原油から取ったナフサを800℃級の炉で熱分解して、エチレン・プロピレン・C4留分・芳香族という基礎原料を作ります。そこから誘導品(ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン…)の各プラントへ、配管で原料が流れていきます。

現場として押さえるべき性質は3つです。

  • 止まらない。クラッカーは一度立ち上げると数年間、24時間連続で運転します。反応も蒸留も、止めることが一番のリスクでありコストです
  • つながっている。クラッカーの製品は配管で隣のプラントへ直送されます。1つの装置のトラブルが、上下流のプラントに連鎖します。日本ゼオンのように他社のクラッカーからC4・C5留分を受け取る会社もあり(→日本ゼオンの企業研究)、会社の塀を越えてつながっています
  • 大きい。蒸留塔は高さ数十メートル、配管は数万本。1人の運転員が受け持つ範囲も、計器の数も、バッチ式の工場とは桁が違います

交替勤務|4直3交替の生活

現場は4直3交替

24時間止まらない以上、現場は交替勤務です。多くのプラントは4つの班(直)が3つの時間帯(朝勤・昼勤・夜勤)を回す4直3交替で、夜勤明けの休みを挟みながらシフトが一周します。

知っておいてほしいことを現場から。

  • 技術系総合職(大卒・院卒)が交替勤務に入るかは、会社と職種によります。運転は高卒・高専卒のオペレーターが中心で、大卒技術系は日勤(生産技術・プロセス管理)が多い。ただし入社後の研修で数か月交替勤務を経験させる会社は珍しくありません。三洋化成や日本酸素HDのように、募集要項に交替勤務の条件(交替制勤務の年間休日145日、交代勤務手当など)を明記している会社もあります(→三洋化成工業の企業研究、→日本酸素HDの企業研究)
  • 生活は昼夜が入れ替わります。体質に合う人と合わない人がいて、これは慣れの問題だけではありません
  • 手当が付きます。交替勤務手当・深夜手当で、同年次の日勤より月収は高くなるのが普通です。年間休日が日勤より多い会社もあります(三洋化成は日勤128日に対し交替制勤務145日)。休日の数は勤務表の組み方で会社ごとに大きく違います
  • 夜のプラントは少人数です。判断を任される場面が早く来る、という意味で成長は速い。一方で、トラブル対応の緊張感は昼の比ではありません

定修|数年に一度、プラントを全部止めて開ける

石化プラントは法定検査と設備更新のため、数年に一度、全体を止めて開放検査します。これが定期修理(定修・SDM)です。

  • 期間は1〜2か月。この間に数百〜数千人の協力会社の作業員が入り、塔槽・熱交換器・配管を開けて検査し、傷んだところを直します
  • 生産技術者にとっては最大のイベントです。工事計画、安全管理、予算、工程——1年前から準備して、期間中は現場に張り付きます。私はこの時期がいちばん消耗し、いちばん力が付いたと思っています
  • 立ち上げ・停止が一番危ない。定常運転より、止めるときと立ち上げるときに事故が集中します。定修前後は現場全体が張り詰めます
  • 就活で「定修」という言葉を知っているだけで、現場を調べてきたことが伝わります(→化学メーカーの面接で聞かれること)

コンビナートという場所|どこで暮らすことになるか

石化の現場はコンビナートにある

石化プラントは単独では建ちません。原料と用役(蒸気・電気・水素)を融通し合うコンビナート——千葉(市原・袖ケ浦)、川崎、鹿島、四日市、水島、岩国大竹、大牟田、大分など——に集まっています。

会社石化系の主な事業所
住友化学千葉(市原・袖ケ浦)、愛媛(新居浜)
三菱ケミカルグループ茨城(鹿島)、岡山(水島)
旭化成岡山(水島)
三井化学千葉(市原)、山口(岩国大竹)、大阪(高石)
東ソー山口(周南・南陽)、三重(四日市)
レゾナック大分

※ 各社の会社概要・事業所ページから。石化以外の事業所は各社の記事(→化学メーカー大手29社の違い)へ。

暮らしの面で知っておくこと。

  • 海沿いの工業地帯に住むことになります。都市部から通える立地(川崎・四日市)もあれば、事業所城下町(新居浜・周南・水島)もあります
  • 城下町には城下町の良さがあります。家賃が安い、通勤が近い、同期や先輩が近所に住んでいる。単身赴任や転勤の頻度は会社によるので、募集要項と面談で確かめてください(→化学メーカーの選び方)
  • 匂い・音・夜の明かりも含めて、その土地の風景です。可能なら配属候補地に一度行ってみることを勧めます。工場夜景として観光地になっている場所も多い

石化の現場と、川下の工場はどう違うか

比べる軸石化(連続プロセス)川下(バッチ・加工)
運転24時間連続。数年止めない昼だけ・平日だけの工場もある
装置巨大な塔槽・炉。1系列が大きい反応釜・成形機・塗工機など。多品種
仕事の主戦場安定運転・省エネ・定修品種切替・歩留まり・立ち上げ
トラブルの重さ1回のトラブルが億単位・連鎖する影響はライン単位で収まりやすい
化学工学の出番蒸留・伝熱・流動・反応——教科書どおりの世界配合・レオロジー・品質工学寄り

どちらが上ということではありません。「教科書の化学工学を実機で使いたい」なら石化、「製品に近いところでモノを作り込みたい」なら川下が合いやすい、というだけです。

同じ会社の中に両方あることも忘れずに。石化を持つ6社にも川下の事業所は多く、「どの会社か」より「どの事業所のどの装置か」で生活が決まります。

向いている人・確かめておくこと

向いていそうな人:

  • 大きな装置を動かしたい人。日本最大級の化学装置を任される仕事は、石化にしかありません
  • チームで運転する仕事が好きな人。石化はひとりでは何もできません。直のチームワークと引き継ぎが全てです
  • 化学工学を実機で使いたい人。蒸留塔の負荷計算やヒートバランスが日常の道具になります

確かめておくこと:

  • 技術系総合職の交替勤務の有無と期間(研修か、配属か)
  • 配属候補の事業所。石化を持つ会社でも、川下配属なら生活は別物です
  • その石化事業の位置づけ。6社の石化は利益率▲3%から+6%の間で、各社が構造改革の対象にしています(→化学メーカー大手29社の違い)。エチレン設備の再編ニュースは自分の配属先の話になり得ます。それでも石化の現場で得た経験は、どの化学プラントでも通用します。装置が大きいほど、学びも大きい

数字の裏付けはハブ記事(→化学メーカー大手29社の違い)と各社の記事へ。安全の話(なぜ立ち上げ・停止が危ないか)は、プロセス安全のカテゴリ(→プロセス安全とは何か)で書いています。

石化プラントは、ナフサクラッカーを起点に配管でつながった24時間連続運転の世界です。現場は交替勤務、数年に一度の定修、コンビナートの暮らしとセット。同じ化学メーカーでも川下の工場とは別物なので、「どの会社か」より「どの事業所か」で考えること。石化を持つ6社の決算と事業所はハブ記事と各社の記事で確かめてください。

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