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反応速度式の積分|1次・2次反応と半減期、定常状態近似の使いどころ

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困っている人
困っている人

反応次数が分かっても、そこから滞留時間をどう出せばいいのか分からない。

実験データから次数を決める方法が、教科書を読んでも腑に落ちない。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

k の単位を見れば次数が分かる

直線になるプロットで次数を決める(1次は ln C、2次は 1/C)

半減期は1次だけ濃度によらない ── ここが実務の分岐点

定常状態近似は「0 と置く」だけ。使える条件も明確

反応器の容積決定、劣化寿命の予測、暴走反応の解析。反応工学の入口です。

現場で、反応速度式はどこに出てくるか

場面何を決めるか
反応器の容積目標転化率に必要な滞留時間
触媒の必要量接触時間(空間速度)
製品の劣化寿命分解速度から保管期限を出す
暴走反応の解析発熱速度は反応速度に比例する
腐食速度の予測多くの腐食は速度式で表せる
排水処理分解に必要な滞留時間

「どれだけ速いか」が分かると、「どれだけの設備が要るか」が決まります。

逆に、速度が分からないと設備のサイズが決まりません。 だからラボでの速度データが設計の出発点になります。

速度式と積分形

速度の定義

−dC_A/dt = k C_A^n

n:反応次数、k:反応速度定数

次数速度式積分形直線になるプロットk の単位
0次−dC/dt = kC₀ − C = ktC 対 tmol/(m³·s)
1次−dC/dt = kCln(C₀/C) = ktln C 対 ts⁻¹
2次−dC/dt = kC²1/C − 1/C₀ = kt1/C 対 tm³/(mol·s)

k の単位で次数が分かります。 s⁻¹ なら1次。これは覚えておくと速い。

なぜ単位で分かるのか

速度の単位は常に mol/(m³·s)

k C^n の単位 = mol/(m³·s) になるように k の単位が決まる

1次:k × (mol/m³) = mol/(m³·s) → k は s⁻¹

2次:k × (mol/m³)² = mol/(m³·s) → k は m³/(mol·s)

転化率で表す

実務では濃度より転化率 xを使うことが多い。

C = C₀(1 − x) を代入する

1次:ln[1/(1−x)] = kt

2次:x/(1−x) = k C₀ t

2次だけ C₀ が残ります。 初濃度が効くのが2次の特徴です。

半減期 ── 1次だけ濃度によらない

半減期の式

0次:t½ = C₀ / (2k)(濃度に比例

1次:t½ = ln2 / k = 0.693 / k濃度によらない

2次:t½ = 1 / (k C₀)(濃度に反比例

この違いが実務では決定的です。

何が違ってくるか

次数濃度が薄くなると
0次速く消える(半減期が短くなる)
1次いつまでも同じペースで減る
2次なかなか消えない(半減期が長くなる)
例:初濃度100を1まで落とすのに必要な時間(半減期が同じ場合)

1次:半減期の 6.6倍(2^6.6 ≒ 100)

2次:半減期の 99倍

2次反応では、最後の微量を落とすのに膨大な時間がかかります。

排水処理や除害設備で「なかなか基準値まで下がらない」のは、多くが2次以上だからです。

だから低濃度域では別の手法(吸着・膜)に切り替えるのが定石です。

PSAとTSA|吸着によるガス分離除害設備

放射性物質が1次なのは有名だが

1次反応の例は他にもたくさんあります。

  • 熱分解(単分子反応)
  • 異性化
  • 触媒表面が飽和しているときの反応(見かけ0次のこともある)
  • 過剰量の反応物があるとき(擬1次)
擬1次反応

A + B → 生成物 で、B が大過剰のとき

B の濃度がほぼ変わらないので k’ = kC_B と置ける

見かけ上1次になる

加水分解反応は水が大過剰なので擬1次になります。実務で扱う反応の多くがこの形です。

数値で確かめる

例1:実験データから次数を決める

ある物質の濃度が時間とともに次のように変化した。次数と k を求めよ。
t[min]:0、10、20、30、40
C[mol/m³]:100、61、37、22、14

〔解答〕

ln C をプロットしてみる

ln 100 = 4.61/ln 61 = 4.11/ln 37 = 3.61/ln 22 = 3.09/ln 14 = 2.64

差:−0.50、−0.50、−0.52、−0.45 → ほぼ一定=直線

1次反応

k = 0.050 /min = 8.3×10⁻⁴ s⁻¹

1/C でプロットすると直線になりません。 試してみると 0.010、0.016、0.027、0.045、0.071 で差が広がっていく。

これが次数決定の標準手法(積分法)です。

次数決定の3つの方法

① 積分法:積分形でプロットして直線になるものを探す(上記)

② 微分法:log(−dC/dt) 対 log C の傾きが次数

③ 半減期法:初濃度を変えて半減期の変化を見る

③が最も早いことがあります。初濃度を2倍にして半減期が変わらなければ1次、半分になれば2次。

例2:滞留時間の決定

1次反応(k = 8.3×10⁻⁴ s⁻¹)で転化率90%を得たい。
①回分式(バッチ)②押出流れ(PFR)③完全混合槽(CSTR)でそれぞれ必要な時間は?

〔① 回分式・② PFR〕

ln[1/(1−0.9)] = kt

ln 10 = 2.303 = 8.3×10⁻⁴ × t

t = 2,775 s = 46分

〔③ CSTR〕

CSTRの物質収支:τ = C₀x / (k C₀(1−x)) = x / (k(1−x))

τ = 0.9 / (8.3×10⁻⁴ × 0.1) = 10,843 s = 181分

CSTRはPFRの約4倍の容積が要ります。 転化率が高いほど差が広がります。

転化率CSTR / PFR の容積比(1次)
50%1.44
90%3.91
99%21.5

高転化率が必要ならPFR(管型)、混合や除熱が必要ならCSTR(槽型)── これが反応器選定の基本です。

CSTRを直列に並べればPFRに近づきます。 実務ではこの折衷がよく使われます。

例3:温度を上げると何倍速くなるか

アレニウスの式

k = A exp(−Ea/RT)

ln(k₂/k₁) = −(Ea/R)(1/T₂ − 1/T₁)

Ea = 80 kJ/mol の反応で、25℃から35℃に上げると何倍速くなるか。

〔解答〕

ln(k₂/k₁) = −(80,000/8.314) × (1/308.15 − 1/298.15)

 = −9,622 × (−1.089×10⁻⁴) = 1.048

k₂/k₁ = e^1.048 = 2.85倍

10℃で約3倍。 「10℃2倍則」という経験則がありますが、Ea によって2〜4倍と幅があります。

Ea[kJ/mol]25→35℃で何倍
502.0倍
802.9倍
1003.7倍
1507.1倍

これが暴走反応の危険性そのものです。温度が上がる → 速くなる → もっと発熱 → もっと温度が上がる。

暴走反応とSADT活性化エネルギー

定常状態近似 ── 中間体を消す技法

逐次反応

A →(k₁)→ B →(k₂)→ C

B は中間体(生成しては消えていく)

3つの速度式

dC_A/dt = −k₁C_A

dC_B/dt = k₁C_A − k₂C_B … 生成 − 消失

dC_C/dt = k₂C_B

B の式が「生成 − 消失」になるのがポイントです。ここが書ければ半分終わり。

近似の中身

仮定と結果

中間体 B は生成するそばから消えるので濃度がほとんど変わらない

dC_B/dt ≒ 0 と置く

→ k₁C_A − k₂C_B = 0

C_B = (k₁/k₂) C_A

dC_C/dt = k₁C_A

全体の速度が k₁ だけで決まりました。 つまり A→B が律速段階です。

いつ使えるか

条件中間体は近似律速段階
k₂ ≫ k₁ほとんど溜まらない成立A→B
k₂ ≒ k₁ある程度溜まる使えない──
k₁ ≫ k₂大量に溜まる使えないB→C

「遅いほうが律速」。これが結論です。

実務での意味 ── 中間体が溜まるかどうか

これは安全上きわめて重要な判断です。

中間体が溜まる条件だと

反応器内に不安定な中間体が蓄積する

→ 温度が上がったとき、蓄積分が一気に反応する

暴走反応

「滴下反応で、原料を入れているのに反応が進んでいなかった」── これが最も危険なパターンです。

未反応の原料が溜まっていて、何かのきっかけで一気に反応する。 化学工場の重大事故の典型的なシナリオです。

対策

反応の追随性を確認する(滴下速度に反応が追いついているか)

反応熱の発生速度を監視する(除熱量が投入量に見合っているか)

中間体の濃度を分析で確認する

反応熱の発生が止まっていたら、反応が進んでいない証拠です。滴下を止めて原因を確認する。

暴走反応の管理HAZOPによる検討非定常作業の安全

実務での失敗例

失敗例①:ラボの速度データをそのままスケールアップ

何が違うか

除熱能力:容積は3乗、伝熱面積は2乗で増える → 大型ほど除熱が苦しい

混合:大型では均一に混ざらない → 局所的な高濃度・高温

滞留時間分布:理想的なPFR/CSTRにはならない

ラボで安全だった反応が、実機で暴走するのはこの理由です。

特に除熱能力の比表面積は、10倍スケールで約半分になります。

失敗例②:見かけの次数を真の次数と思い込む

触媒反応では、条件によって見かけの次数が変わります。

条件見かけの次数
表面が空いている(低圧・低濃度)1次
表面が飽和(高圧・高濃度)0次
物質移動律速見かけ1次(拡散に支配される)

スケールアップで濃度域が変わると、次数も変わることがあります。

「ラボでは1次だったのに実機では0次だった」── 触媒反応ではよくある話です。

失敗例③:物質移動律速に気づかない

反応律速か物質移動律速か

反応律速:温度を上げると速くなる(Ea が大きい、80 kJ/mol以上)

物質移動律速:温度を上げてもあまり速くならない(見かけEa が 10〜20 kJ/mol)

見かけの活性化エネルギーが小さいときは、物質移動律速を疑ってください。

この場合、温度を上げても無駄で、撹拌や接触面積を増やすべきです。

対策の方向がまったく違うので、律速段階の判定は重要です。

甲種化学ではこう出ます

学識の型7にあたります。令和2〜6年度の60大問中6回出ました。

年度・問内容
R5 検定 問3エタン熱分解(1次+アレニウス)
R2 検定 問31次不可逆反応+アレニウス+ΔH
R5 国試 問32A→B(2次+アレニウス)
R3 国試 問3逐次2段1次反応(定常状態近似
R3 検定 問3同上
R2 国試 問3固体触媒の吸着・被覆率(ラングミュア)
試験で押さえる点

1次・2次の積分形

アレニウス2点式で Ea を出す(ln x = 2.303 log x を使う)

逐次反応の3つの速度式(特に dC_B/dt = 生成 − 消失)

定常状態近似 = 0 と置く

解き方と過去問は学識・型7|反応速度とアレニウス式にまとめています。

平衡定数の温度依存(ファントホッフ)との違いはファントホッフの式とアレニウスの式へ。

まとめ

  • k の単位で次数が分かる(s⁻¹ なら1次、m³/(mol·s) なら2次)
  • 1次:ln(C₀/C) = kt2次:1/C − 1/C₀ = kt
  • 次数決定は積分形でプロットして直線になるものを探す
  • 半減期は1次だけ濃度によらない
  • 2次では低濃度域でなかなか減らない(吸着・膜への切り替えを検討)
  • CSTRはPFRの4倍の容積(転化率90%、1次のとき)
  • 10℃で約3倍速くなる(Ea = 80 kJ/mol)
  • dC_B/dt = 生成 − 消失。定常状態近似は「0と置く」
  • 中間体が溜まる条件は暴走反応のリスク
  • 見かけEaが10〜20 kJ/mol なら物質移動律速を疑う

平衡の側は平衡定数の温度依存性|ファントホッフの式、反応熱はヘスの法則と生成エンタルピーへ。

アレニウスの式そのものはアレニウスの式、活性化エネルギーは活性化エネルギーを参照してください。