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反応次数の見分け方|積分法・微分法・全圧追跡法・半減期法

反応次数は実験でしか決まらない

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反応器を設計するには反応速度式が要ります。速度式が無ければ、必要な体積も滞留時間も出せません。

ところが速度式は実験データから決めるしかない。量論式を見ても分かりません。ではどうやって決めるのか——それがこの記事です。

4つの方法

  • 積分法:次数を仮定して積分形が直線になるか見る。いちばん確実
  • 微分法:濃度曲線の接線から速度を出す。次数を仮定しなくていいが誤差に弱い
  • 全圧追跡法:気相の定容反応で圧力計だけで反応率が追える
  • 半減期法:初濃度を変えて半減期を測る。両対数の傾きが (1−n)

1次・2次の積分形そのものは反応速度式の積分の記事で扱っています。ここでは「手元のデータから次数をどう決めるか」という手順の話をします。

1. 積分法|仮定して直線になるか見る

積分法は「仮定して直線か見る」だけ

手順は3つです。

  1. 速度式の形を仮定する(1次だろう、など)
  2. それを回分反応器の設計方程式に入れて積分する
  3. 実験データを積分形の変数に直し、時間に対してプロットして直線になるか調べる
仮定した次数縦軸にとるもの直線なら
0次CA傾き = −k
1次−ln(1 − xA)傾き = k
2次xA / (1 − xA)傾き = kCA0

直線になれば仮定が正しい。ならなければ別の次数で試す。試行錯誤ですが、結論がはっきり出るのが利点です。

実務的なコツを1つ。直線かどうかを目で見るより、各点から k を計算してばらつきを見るほうが速いです。次の節で実際にやります。

2. 微分法|次数を仮定しなくていいが、誤差に弱い

濃度の経時変化を測り、曲線の接線の傾きから反応速度を直接求める方法です。

  1. CA を時間に対してプロットし、滑らかな曲線を描く
  2. いくつかの点で接線を引き、−dCA/dt を読む
  3. log(−dCA/dt) を log CA に対してプロットする
  4. 傾きが次数 n、切片が log k

次数を仮定しなくていいのが最大の利点です。1.5次のような中途半端な値も出せます。

弱点は微分がデータの誤差を拡大すること。測定点が少しばらつくと接線の傾きは大きく振れます。積分は誤差をならしますが、微分は誤差を拾う。データが粗いときは積分法のほうが信用できます。

3. 全圧追跡法|圧力計だけで反応率が分かる

気相反応で分子数が変わる場合、定容の容器に仕込んで全圧の変化を追うだけで反応率が分かります。組成分析が要りません。

xA = (Pt − Pt0) / (εA Pt0)

εA前の記事で見た体積変化の度合いです。定容系なので濃度は CA = CA0(1 − xA) で出ます。

あとは普通の定容回分の解析に還元されるので、積分法も微分法も使えます。

実際にやってみる

文献に載っているジメチルエーテルの熱分解のデータを、実際に解いてみました。

(CH3)2O → CH4 + H2 + CO を 777 K の定容回分反応器で行なったときの全圧です。1分子が3分子になるので δA = 2、純物質なので yA0 = 1、よってεA = 2

t [s]Pt [kPa]xA−ln(1−xA)k [s−1]
041.60
39054.40.1540.1674.28×10−4
77765.10.2830.3324.27×10−4
119574.90.4000.5114.28×10−4
3155103.90.7491.3824.38×10−4

1次と仮定すると、k は 4.3×10−4 s−1 でばらつきは 2.5% に収まりました。

比較のため、同じデータを2次と仮定して計算し直すと、k は 4.7×10−4 から 9.4×10−4 まで77% もばらつきます

この差が「次数が決まった」ということです。2.5%と77%——グラフを目視するまでもなく決着が付く。

そしてもう1つ。完全反応なら Pt = (1+εA)Pt0 = 124.8 kPa になるはずで、文献の t=∞ の実測値は 124.1 kPa。99.4%まで合っています。量論式が正しいことが同じデータで確認できている。

4. 半減期法|初濃度を変えて測る

原料の濃度が初濃度の半分になる時間を半減期 t1/2 といいます。n次反応では

log t1/2 = 定数 + (1 − n) log CA0

が成り立ちます。初濃度をいろいろ変えて半減期を測り、両対数グラフにプロットすれば、傾きが (1−n) になる。そこから n が出ます。

合成データで確かめました。

本当の nCA0 を 0.5→4.0 にしたときの半減期両対数の傾き求まった n
1.01612 s → 1612 s(変わらない)0.0001.000
2.02000 s → 250 s−1.0002.000
0.5207 s → 586 s+0.5000.500

ぴたりと復元できます。

1次反応だけが特別

表で目を引くのは1次の行です。初濃度を8倍に変えても半減期が 1612 秒のまま動かない。

1次反応では t1/2 = ln2 / k で、初濃度が式に入らないからです。これは1次反応に特有の性質で、逆に言えば

「濃度を変えても半減期が変わらなければ1次」

という判定に使えます。プロットも計算も要らない。2点測るだけで1次かどうかが分かる——現場で効く判定法です。

5. どれを使うか

状況向いている方法
データが数点しかない・ばらつく積分法(誤差がならされる)
次数が整数でなさそう微分法(仮定が要らない)
気相・分子数が変わる・分析が面倒全圧追跡法(圧力計だけ)
1次かどうかだけ知りたい半減期法(2点で分かる)

実務では複数の方法で同じ答えになるかを見るのが安全です。上のジメチルエーテルの例のように、次数の決定と量論式の検算が同じデータでできると信頼度が上がります。

6. 決めた次数を鵜呑みにしない

最後に、この記事でいちばん大事な注意です。

ここで求めた「次数」は、測った条件の範囲での見掛けの値です。

  • 温度が変われば律速する段階が変わり、見掛けの次数も変わることがある
  • 濃度域が変われば次数が変わる反応がある(次の記事で扱う酵素反応は、低濃度で1次・高濃度で0次)
  • 触媒反応では、拡散が効き始めると見掛けの次数も活性化エネルギーも変わる

実機の条件がラボの測定範囲の外に出るなら、そこで次数が変わっていないかを疑う。T2ラボラトリーズの事故が「試験は380°Fまで、暴走は390°Fから」だったように、測っていない範囲は分かっていない範囲です。

まとめ

反応次数は実験データから決めるしかなく、方法は4つあります。積分法は次数を仮定して直線性を見る方法で誤差に強い。微分法は仮定が要らないが誤差を拡大する。全圧追跡法は気相の定容反応で圧力計だけから反応率を出せます。半減期法は初濃度を変えて測り、両対数の傾き (1−n) から次数を出す方法で、1次反応だけは半減期が初濃度によらないという特徴があります。文献のジメチルエーテル熱分解データを実際に解くと、1次と仮定したときの k のばらつきは 2.5%、2次なら 77% で決着が付きました。ただし求まった次数は測定範囲での見掛けの値であり、温度域・濃度域が変われば変わりうることは忘れないでください。

次の記事:複合反応と選択率|反応率98%で収率1.8%が起きる理由

参考文献

  • 橋本健治『反応工学 改訂版』培風館, 第4章 4・2「回分反応器による反応速度解析」(積分法・微分法・全圧追跡法・半減期法、例題4・2 ジメチルエーテルの熱分解) Amazonで見る
  • 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善, 第3章「化学反応速度」 最新版をAmazonで見る