動画解説はこちら|YouTube

配管の圧力損失計算|Darcy-Weisbach式を設計に使う

配管の圧力損失計算|Darcy-Weisbach式を設計に使う

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

配管の口径を決めるとき、「標準流速の範囲に入ったから大丈夫」とは限りません。流体を必要な流量で運ぶには、配管、継手、弁、機器で失われるエネルギーを供給側の圧力やポンプ揚程でまかなえることを確認する必要があります。

この記事では、液体の直管を中心に、Darcy-Weisbach(ダルシー・ワイスバッハ)式を実務で使う手順を説明します。初学者向けに式の意味から始め、設計者が間違えやすい摩擦係数の定義、物性値、内径、運転ケースまで扱います。

エルボ、ティー、バルブの局部損失はPIP-17、密度変化を無視できないガス・蒸気はPIP-18で詳しく扱います。

まず結論:圧力損失は「使える差圧」の範囲内に収める

圧力損失計算の目的は、式へ数値を代入することではありません。次の問いに答えることです。

  • 最大流量でも要求流量を流せるか
  • 末端で必要な圧力を確保できるか
  • ポンプや圧縮機の能力が不足しないか
  • 調節弁や流量計に必要な差圧を残せるか
  • 最小流量から最大流量まで運転点が成立するか

設計では、供給側と受入側の圧力差、位置の高低差、ポンプが加えるエネルギーを「使える側」として整理します。直管、継手、弁、機器、流量計などの損失は「消費する側」です。両者の収支が合わなければ、口径、ルート、機器、ポンプ仕様を見直します。

供給圧力とポンプ揚程から位置差、直管、継手、弁、機器の損失を差し引き末端必要圧力を確保する圧力収支
供給圧力とポンプ揚程から位置差、直管、継手、弁、機器の損失を差し引き末端必要圧力を確保する圧力収支(一次資料を参考に当サイト作成)

圧力損失の正体は、流れの機械エネルギーが熱へ変わること

実際の流体には粘性があります。管壁では流速がほぼゼロとなり、管の中央へ向かって流速が大きくなります。この速度差によってせん断応力が生じ、機械エネルギーの一部が熱へ変わります。

乱流では、壁面摩擦に加えて、流体の混合、渦、剥離による散逸が増えます。そのため、流れが続く直管でも下流へ進むほど全エネルギーは低下します。

「圧力が下がった」という観察だけでは、摩擦損失とは限りません。管が上へ向かえば位置エネルギーが増え、同じ管径で流速が変われば速度エネルギーも変わります。摩擦や渦によって回収できない形へ変わった分が、圧力損失です。

管壁近くの速度勾配と乱流の渦によって流体の機械エネルギーが熱へ変わり下流ほど圧力が低下する様子
管壁近くの速度勾配と乱流の渦によって流体の機械エネルギーが熱へ変わり下流ほど圧力が低下する様子(一次資料を参考に当サイト作成)

圧力損失・静圧・位置水頭を分けて考える

液体配管では、エネルギーを「液柱の高さ」で表すと理解しやすくなります。単位重量あたりのエネルギーは、主に次の4項で整理できます。

  • 位置水頭 z:基準面からの高さ
  • 圧力水頭 p/(ρg):静圧に相当する高さ
  • 速度水頭 v²/(2g):流速が持つ運動エネルギー
  • 損失水頭 hL:摩擦や渦で失われた分

同じ内径の水平な直管で液体密度と流速がほぼ一定なら、位置水頭と速度水頭は変わりません。したがって、損失水頭の増加が静圧の低下として現れます。

一方、上り配管では、静圧の低下に位置水頭の増加も含まれます。高低差を摩擦損失へ入れてしまうと、ポンプ揚程や必要差圧を誤って評価します。エネルギー収支では、位置差と摩擦損失を別項目にしてください。

水平部と上り部を持つ液体配管で位置水頭、圧力水頭、速度水頭、損失水頭を分けたエネルギー線と水力勾配線
水平部と上り部を持つ液体配管で位置水頭、圧力水頭、速度水頭、損失水頭を分けたエネルギー線と水力勾配線(一次資料を参考に当サイト作成)

Darcy-Weisbach式を読む

円形直管の摩擦による圧力損失は、Darcy-Weisbach式で表せます。

Δpf = fD × (L/D) × (ρv²/2)

損失水頭で表す場合は、次の形です。

hf = fD × (L/D) × {v²/(2g)}

ここで、

  • Δpf:直管摩擦による圧力損失[Pa]
  • hf:直管摩擦による損失水頭[m]
  • fD:Darcyの管摩擦係数[-]
  • L:直管長さ[m]
  • D:管内径[m]
  • ρ:運転状態の流体密度[kg/m³]
  • v:断面平均流速[m/s]
  • g:重力加速度[m/s²]

です。

直管長さL、内径D、平均流速v、密度ρ、管摩擦係数fDがDarcy-Weisbach式のどこに対応するかを示す配管図
直管長さL、内径D、平均流速v、密度ρ、管摩擦係数fDがDarcy-Weisbach式のどこに対応するかを示す配管図(一次資料を参考に当サイト作成)

式から分かる圧力損失の傾向

ほかの条件が同じなら、直管損失は管長L、密度ρ、摩擦係数fDに比例し、流速vの2乗に比例します。

体積流量Qを固定すると、v = 4Q/(πD²)です。これをDarcy-Weisbach式へ代入すると、fDの変化をいったん無視した近似では、圧力損失は内径Dの5乗に反比例します。

口径を一段小さくしただけで圧力損失が大きく増えるのは、この強い内径依存性があるためです。ただし、実際にはDを変えるとレイノルズ数と相対粗さも変わり、fDも変化します。Dの5乗則は「感度を理解する近似」として使ってください。

圧力損失と損失水頭の使い分け

液体では、ポンプ揚程との比較に損失水頭[m]が便利です。同じ損失水頭でも、圧力損失Δp = ρg hなので、密度が異なれば圧力損失は異なります。

ガスでは密度が圧力低下に伴って変化するため、液柱高さより圧力で扱います。入口から出口までの密度変化が無視できない場合は、単一密度を入れたDarcy-Weisbach式だけで完結させません。

レイノルズ数で層流・遷移域・乱流を判定する

管摩擦係数fDは一定値ではありません。まずレイノルズ数Reを求め、流れの状態を判断します。

Re = ρvD/μ = vD/ν

  • μ:粘性係数[Pa·s]
  • ν:動粘性係数[m²/s]

円管内流れでは、一般に次を目安にします。

  • Re ≦ 2,300:層流
  • 2,300 < Re ≦ 4,000:遷移域
  • Re > 4,000:乱流

層流では、流体が層を保って整然と流れ、速度分布は放物線状になります。乱流では流れ方向と直角方向の速度変動が生じ、中央部の速度分布はより平らになります。

遷移域は、わずかな振動、入口条件、管内面状態によって層流にも乱流にも変わる不安定な領域です。設計点が遷移域へ入る場合は、単一の摩擦係数だけで確定せず、両側の条件を確認します。

円管内の層流、遷移域、乱流をレイノルズ数の範囲と流線、速度分布の違いで比較した図
円管内の層流、遷移域、乱流をレイノルズ数の範囲と流線、速度分布の違いで比較した図(一次資料を参考に当サイト作成)

管摩擦係数はReと相対粗さから求める

Darcyの管摩擦係数fDは、流れの状態によって決まり方が変わります。

層流では、管内面粗さの影響を受けず、次式で求めます。

fD = 64/Re

乱流では、レイノルズ数Reに加えて相対粗さε/Dが必要です。εは管内面の絶対粗さです。

Colebrook式は、乱流域の代表的な関係式です。

1/√fD = -2 log10 { ε/(3.7D) + 2.51/(Re√fD) }

fDが式の両辺にあるため、反復計算が必要です。表計算やプログラムではColebrook式を反復計算し、手計算や概算ではムーディ線図や陽形式の近似式を使います。

Haaland式は、乱流域で使いやすい陽形式の一つです。

1/√fD = -1.8 log10 { [(ε/D)/3.7]^1.11 + 6.9/Re }

横軸のレイノルズ数と相対粗さの曲線の交点から縦軸のDarcy管摩擦係数を読むムーディ線図
横軸のレイノルズ数と相対粗さの曲線の交点から縦軸のDarcy管摩擦係数を読むムーディ線図(一次資料を参考に当サイト作成)

絶対粗さは材料名だけで固定しない

一次資料には、新しい市販鋼管の概算値として絶対粗さ0.05 mmが示されています。ただし、設計ではこれをすべての鋼管へ無条件に使うべきではありません。

腐食、スケール、ライニング、製作方法、使用年数によって有効な粗さは変化します。既設配管の能力評価では、新管値だけでなく、実測流量・差圧、内部状態、会社標準、設計基準の粗さを確認します。

計算例:50A Sch40の水配管

25 ℃の水を、50A Sch40の鋼管で50 m輸送する例を計算します。ここでは直管摩擦だけを対象とします。

設計条件

項目
体積流量Q0.20 m³/min
管内径D52.7 mm
直管長さL50 m
密度ρ995.5 kg/m³
粘性係数μ0.90 mPa·s
絶対粗さε0.05 mm

物性値は運転温度に合わせます。呼び径50Aや外径60.5 mmをDへ入れず、スケジュール番号から求めた内径52.7 mmを使います。

1. 流量をSI単位へ直す

Q = 0.20/60 = 0.00333 m³/s

2. 断面積と平均流速を求める

A = πD²/4 = 0.00218 m²

v = Q/A = 1.53 m/s

3. レイノルズ数と相対粗さを求める

Re = ρvD/μ = 8.91×10⁴

ε/D = 0.00005/0.0527 = 9.49×10⁻⁴

Reは4,000を超えるため乱流です。

4. Darcy摩擦係数を求める

Haaland式を使うと、

fD ≒ 0.0220

となります。ムーディ線図で読めば、有効数字2桁程度の近い値になります。

5. 損失水頭と圧力損失を求める

hf = fD(L/D)v²/(2g) = 2.49 m

Δpf = ρg hf = 24.3 kPa

したがって、この50 mの直管だけで約24 kPaを消費します。実際の配管系では、エルボ、ティー、弁、ストレーナ、流量計、熱交換器などの損失を別途加えます。

流量と内径から流速、物性からレイノルズ数、粗さから摩擦係数、最後にDarcy-Weisbach式で損失を求める順序
流量と内径から流速、物性からレイノルズ数、粗さから摩擦係数、最後にDarcy-Weisbach式で損失を求める順序(一次資料を参考に当サイト作成)

設計では最小・通常・最大流量を同じ表で確認する

乱流で摩擦係数の変化が小さい範囲では、圧力損失はおおむね流量の2乗に比例します。通常流量だけで成立しても、最大流量で流量が1.5倍になれば、直管損失は概ね2.25倍になります。

一方、最小流量では、調節弁の開度、流量計の測定下限、固形物の沈降、気液の滞留など、別の制約が支配することがあります。

設計表には少なくとも次を並べます。

  • 最小、通常、最大流量
  • 各ケースの温度・圧力・密度・粘度
  • 内径と流速
  • Re、ε/D、fD
  • 直管損失、局部損失、機器損失
  • 高低差と末端必要圧力
  • 供給可能圧力またはポンプ揚程との余裕
流量の増加に対して配管摩擦損失がほぼ二乗で増え、静水頭を加えたシステム必要揚程が上昇する曲線
流量の増加に対して配管摩擦損失がほぼ二乗で増え、静水頭を加えたシステム必要揚程が上昇する曲線(一次資料を参考に当サイト作成)

よくある間違い

Darcy係数とFanning係数を混同する

化学工学の資料ではFanningの摩擦係数fFを使うことがあります。両者の関係は、

fD = 4fF

です。

Darcy-Weisbach式へFanning係数をそのまま入れると、摩擦損失を4分の1に見積もります。式、線図、ソフトがどちらの係数を採用しているかを確認してください。本記事では一貫してDarcy係数fDを使っています。

同じ圧力損失をDarcy係数とFanning係数で表すと係数値が4倍異なることを示す比較図
同じ圧力損失をDarcy係数とFanning係数で表すと係数値が4倍異なることを示す比較図(一次資料を参考に当サイト作成)

呼び径や外径を内径Dへ入れる

流速、Re、L/Dのすべてに内径が効きます。同じ呼び径でもSchが違えば内径は違います。配管規格表から実内径を確認してください。

常温の物性値を高温・低温流体へ使う

粘度は温度によって大きく変わります。Reと摩擦係数が変わるため、密度と粘度は運転ケースごとに設定します。濃度依存性の大きい液や非ニュートン流体では、単純な水の物性で代用しません。

直管長だけを数えて終える

実配管には局部損失と機器損失があります。エルボ・ティー・弁はK値または相当長さ、機器はメーカー提示値や設計データで加えます。K値法と相当長さ法を同じ部品へ重ねて使うと二重計上になります。

高低差を摩擦損失へ入れる

高低差はエネルギー収支の位置水頭です。摩擦で失われるエネルギーとは分けて集計します。

1本の線で物性と内径を平均する

途中で口径、材質、温度、相、流量が変わる場合は区間を分割します。各区間でv、Re、ε/D、fD、Δpを求め、最後に合計します。

Darcy-Weisbach式だけでは扱えない範囲

本記事の手順は、主に定常な単相流を対象とします。次の場合は追加検討が必要です。

  • ガス・蒸気で入口から出口までの密度変化が無視できない
  • チョーク流れが起こり得る
  • 気液二相流で流動様式が変化する
  • スラリーで沈降、堆積、非ニュートン性がある
  • 脈動流やウォータハンマなど非定常現象がある
  • 極端に短い助走区間や特殊な流路断面である

これらへ液体直管の式をそのまま適用すると、計算値が出ても設計判断を誤ります。適用範囲を確認し、PIP-18、PIP-20、PIP-45などの専門計算へ進んでください。

まとめ

  • 圧力損失は、流体の機械エネルギーが摩擦や渦で散逸した分
  • 直管摩擦はDarcy-Weisbach式で計算する
  • 内径、運転状態の密度・粘度、流速を正しく設定する
  • Reで流れの状態を判定し、Reとε/DからDarcy摩擦係数を求める
  • 圧力損失と高低差を分け、供給可能圧力との収支を確認する
  • 最小・通常・最大流量を同じ条件表で照査する
  • Darcy係数とFanning係数の4倍差を必ず確認する

圧力損失計算は、口径選定、ポンプ仕様、調節弁差圧、流量計選定をつなぐ計算です。式を一度解くだけでなく、運転ケースと配管区間を変えて成立範囲を確認してください。

関連記事

参考文献

  • 西野悠司『配管設計実用ノート』PDF p.25-32(ベルヌーイ式、水力勾配線、Re、Darcy-Weisbach式、ムーディ線図) Amazonで見る
  • 西野悠司『絵とき「配管技術」基礎のきそ』PDF p.76-83、p.96-98(Darcy-Weisbach式、Re、摩擦係数、Fanning係数、計算例) Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』PDF p.199-200(Fanning係数とDarcy係数の関係、摩擦係数線図)
  • 日本機械学会『流体力学』第6章(円管内流れ、管摩擦損失、ムーディ線図)