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重要度:△ 出題は少なめですが電卓なしで解ける計算の型です(市販問題集の頻出印はなく、公式公開問題でも見当たりません。当サイトの判断)
最終確認:2026年9月23日
灯油のポリタンクを、寒い屋外で口元までいっぱいに入れたとします。そのまま日なたに置くと、温まった灯油は体積が増え、上にすき間がないと逃げ場がありません。危険物乙4では、この「温まると増える量」を掛け算だけで求める問題が出ます。
この記事でわかること
- 液体が温まると体積が増える理由と、体膨張率(たいぼうちょうりつ)の意味
- 容器を満タンにせず、すき間を残す理由
- 増える体積=元の体積×体膨張率×温度差の解き方(例題2題)
液体は温まると体積が増えるので、容器には増えた分を受けるすき間を残します。
増える体積は「元の体積×体膨張率×温度差」で求め、温度そのものではなく温度差を掛けます。
膨張したあとの体積は、元の体積に増えた分を足して求めます。
まず場面で:満タンのポリタンクを日なたに置くと
液体は、温度が上がると少しだけ体積が増えます。ふだんは目に見えないほどの差ですが、容器がいっぱいだと話が変わります。増えた分が入る場所がないからです。

口元まで入れたポリタンクが温まると、増えた分の液が口からあふれたり、容器を内側から押したりします。すき間のない容器が温まると、液があふれたり容器が壊れたりするおそれがあります。 上に空いたすき間があれば、増えた分はそこに収まります。
同じことは、工場の大きなタンクでも起きます。量が多いほど、増える量も多くなります。だから危険物(きけんぶつ)を入れる容器やタンクは、満タンにしないで使います。
液体はなぜ温まると増えるのか:体膨張率の意味
物が温まって体積が増えることを、熱膨張(ねつぼうちょう)といいます。液体では、縦・横・高さのすべての向きに広がる体膨張(たいぼうちょう)で考えます。どれだけ増えやすいかは、物によって違います。
体膨張率とは、温度が1℃上がったときに増える体積が、元の体積の何倍かを表す値のことです。たとえば体膨張率が0.001なら、1℃上がるごとに元の体積の1000分の1ずつ増えます。単位は「1Kあたり」を表す K⁻¹(毎ケルビン)で書かれます。
ケルビン(K)は温度の目盛りの1つで、目盛りの幅は℃と同じです。そのため、温度差だけを見るなら、20℃の差は20Kの差と同じです。計算では、℃の差をそのままKの差として使えます。
体膨張率は、温度が1℃上がるたびにもらえる「体積の利子」のようなものです。元の体積が大きいほど、温度差が大きいほど、増える量も大きくなります。正確には、増える体積は元の体積と体膨張率と温度差の3つを掛けた値で、利子のように増えた分にまで上乗せはしません。
液体の体膨張率は、気体の体膨張率より小さい値です。気体の体積が温度でどう変わるかは、別の法則で扱います。液体は「少しだけ増える」けれど、容器がいっぱいならその少しが問題になる、と押さえます。
危険物を運ぶ容器には、このすき間の決まりがあります。液体は、容器の内容積の98%以下で入れます。さらに、55℃になっても漏れないすき間を残します。
運ぶときの決まりは、運搬の基準で扱います。
気体の体積と温度の関係は、物理・化学のボイルの法則とシャルルの法則の記事で扱います。
解き方の手順(3ステップ):温度差を出してから3つを掛ける
計算の型の全体は、計算問題は捨てていい?電卓なしで解ける5つの型で見渡せます。熱膨張の計算は、手順が決まっている型の1つです。

- ステップ1 温度差を出す:上がったあとの温度−元の温度
- ステップ2 増える体積を出す:元の体積×体膨張率×温度差
- ステップ3 問われた量に合わせる:膨張後の体積なら元の体積に足す
例題1は、体膨張率が1.0×10⁻³ K⁻¹の液体20Lを、5℃から35℃まで温める場合です。10⁻³は1000分の1のことなので、1.0×10⁻³は0.001です。
- ステップ1 温度差:35℃−5℃=30℃(30K)
- ステップ2 増える体積:20L×0.001 K⁻¹×30K=0.02L×30=0.6L
- ステップ3 膨張後の体積:20L+0.6L=20.6L
温度差の30ではなく、上がったあとの温度の35を掛けると0.7Lになり、答えがずれます。 元の温度が0℃でない限り、温度そのものを掛けると誤りです。
例題2は、内容積500Lのタンクが、10℃で体膨張率1.2×10⁻³ K⁻¹の液体に満たされている場合です。液温が30℃まで上がったとき、あふれる量を求めます。1.2×10⁻³は0.0012です。
- ステップ1 温度差:30℃−10℃=20℃(20K)
- ステップ2 増える体積:500L×0.0012 K⁻¹×20K=0.6L×20=12L
- ステップ3 タンクは満タンなので、増えた12Lがそのままあふれる
10⁻³を落として1.2のまま掛けると12000Lになり、元の体積より大きい答えが出ます。 増える量が元の体積に比べて小さいかどうかで、桁の誤りに気づけます。温度差の代わりに30℃を掛けると、18Lと答えてしまいます。
ここは覚えなくていい
固体の線膨張率(せんぼうちょうりつ)、つまり長さの伸びの計算と、体膨張率との関係は、乙4では後回しでかまいません。膨張後の体積から温度を逆に求める計算も、余力がなければ後回しでかまいません。
試験ではこう聞かれる:すき間の理由と温度差の取り違え
1つめは、容器にすき間を残す理由を選ぶ形です。体膨張とは別の、もっともらしい理由が選択肢に並びます。正しい理由は、液体の体膨張で容器があふれたり壊れたりするのを防ぐためです。
2つめは、計算で温度差を使わせない形です。元の温度と上がったあとの温度が両方書かれていて、片方だけを掛けると選択肢の1つに当たります。温度は必ず引き算してから掛けます。
3つめは、増える体積と膨張後の体積の取り違えです。「何L膨張するか」と「何Lになるか」では、答えが違います。問われた量を最後に確かめます。
4つめは、液体と気体の大小を逆にする形です。「液体の体膨張率は、気体の体膨張率より大きい」は誤りです。液体の体膨張率は、気体より小さい値です。
工場・現場ではこうなる:タンクは「満」まで入れず、液を閉じ込めない
化学プラントのタンクには、液面の上限を知らせる警報が付いていて、受け入れはその手前で止めます。温度が上がって液が増えても、あふれないだけの空間を残すためです。バルブを両側とも閉めた配管に液を閉じ込めたまま温まると、逃げ場のない膨張で圧力が上がるので、逃がし弁を付けて守ります。
確認問題
問1 液体や気体の熱膨張は、長さではなく体積の増え方で考える。
答え:○
根拠:熱膨張には長さが伸びる線膨張と体積が増える体膨張があり、液体と気体は体膨張で考えます。
なぜか:液体は入れ物の形に合わせて形が変わるので、長さでは増え方を表せません。灯油のポリタンクでも、ふくらむのは中の液の体積です。
狙われる形:液体の熱膨張を、固体の棒と同じ長さの伸びで考えさせる形で出ます。
問2 満タンのタンクで液温が上がったときにあふれる量は、ふくらんだあとの液体全体の体積に等しい。
答え:×
訂正:あふれる量は、液体全体の体積ではなく、ふくらんで増えた分の体積(膨張量)に等しい。
根拠:満たした容器からあふれるのは、液体がふくらんで増えた分の体積です。
なぜか:たとえば1000Lの液体が1020Lにふくらんだとき、あふれるのは増えた20Lです。タンクに入っていた1000Lは、タンクの中に残ります。
狙われる形:あふれる量を、膨張したあとの全体の体積と取りかえた形で出ます。
問3 灯油を10℃から30℃に温めたときの膨張量は、始めと終わりの液温の差を使って求める。
答え:○
根拠:膨張量は、元の体積×体膨張率×温度差で求めます。
なぜか:この場合の温度差は30−10=20℃です。終わりの30℃をそのまま入れると、膨張量を1.5倍に見積もってしまいます。
狙われる形:温度差の代わりに、終わりの液温を式に入れさせる形で出ます。
まとめ
液体は温まると体積が増えるので、容器やタンクには増えた分を受けるすき間を残します。増える体積は「元の体積×体膨張率×温度差」で、温度そのものではなく温度差を掛けます。膨張後の体積を問われたら、元の体積に増えた分を足します。
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参考文献
- 『乙種4類 危険物取扱者試験 令和8年版』公論出版、2-18 熱膨張(最新版は令和9年前期版)最新版をAmazonで見る
- 『7日間で集中学習! 乙種4類危険物取扱者 王道問題集』飯島晃良、オーム社、第1版、1-5 熱の移動と熱膨張 Amazonで見る
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