動画解説はこちら|YouTube

危険物取扱者甲種の化学反応式・燃焼計算攻略|モルと酸素量を5段階で解く

危険物取扱者甲種の化学反応式と燃焼計算を解説する記事のアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

困っている人
困っている人

「化学反応式の係数を合わせても、その後の計算で止まる」

「質量、モル、気体体積、空気量のどれを先に変換するの?」

「22.4 Lを使う問題と、温度補正が必要な問題を見分けたい」

そんな疑問を解決します。

この記事の内容

化学反応式の係数をC、H、Oの順で合わせる方法

質量、モル、標準状態の気体体積を変換する方法

完全燃焼に必要な理論酸素量と空気量の求め方

20℃など、標準状態ではない気体体積の補正

燃焼計算で間違えやすい10項目

先に結論を言うと、燃焼計算は次の一本道で解けます。

  • 完全燃焼の生成物を決める
  • 化学反応式の係数を合わせる
  • 与えられた質量や体積をモルへ直す
  • 係数比で必要な酸素のモルへ移る
  • 問題が求める体積、空気量、温度条件へ変換する

計算が苦手な人ほど、最初から比例式を一つにまとめないでください。「モルへ入る」「係数比で横へ移る」「求める単位へ出る」の三つへ分けると、単位と係数の取り違えを防げます。

消防試験研究センターの公式公開例題でも、メタノールの完全燃焼、係数比、モル体積、20℃への温度補正を組み合わせた問題が示されています。係数合わせだけでなく、条件を読んで最後の換算まで行う力が必要です。

物理・化学10問全体の学習順序を先に確認したい人は、危険物取扱者甲種の物理・化学の出題傾向|10問中6問以上を取る勉強法を確認してください。

燃焼計算は一本の変換ルートで解く

燃焼計算で扱う数値は、質量、モル、気体体積、空気量と形を変えます。しかし、反応式の係数が直接表すのはモル比です。

燃焼計算を条件確認、反応式、モル換算、係数比、要求単位と気体条件への換算の5段階で示した図
燃焼計算は、条件確認、反応式、モルへの変換、係数比、求める単位への変換の5段階で解きます。(一次資料を参考に当サイト作成)
入力モルへ直す方法係数比の後最後の換算
質量g質量÷モル質量必要酸素のmolmol×モル質量で質量へ
物質量molそのまま必要酸素のmol求める単位へ変換
標準状態の気体体積L体積÷22.4 L/mol必要酸素のmolmol×22.4 L/molで体積へ
空気量先に酸素量との関係を確認必要酸素のmol問題指定の酸素割合で割る

中心に置くのは必ずモルです。質量比や体積比を暗記するのではなく、いったんモルへそろえてから係数比を使います。

この順序は、与えられる物質が燃料でも生成物でも同じです。たとえば生成した水の量から消費酸素量を求める問題でも、水をモルへ直し、反応式の水と酸素の係数比を使います。

化学反応式の係数が表す三つの比

化学反応式の係数は、反応に関わる粒子数の比であり、モル比を表します。すべてが気体で温度・圧力が同じなら、気体の体積比としても扱えます。

関係係数から分かること注意点
分子・粒子の数反応する粒子数の比係数と化学式中の添字を混同しない
物質量反応するモル数の比燃焼計算の中心となる
気体体積同温・同圧での気体体積比液体や固体へそのまま使わない

質量比は係数だけでは決まりません。各物質について「係数×モル質量」を計算して比較します。

たとえば、プロパンの完全燃焼は次の式です。

C₃H₈+5O₂→3CO₂+4H₂O

プロパン1 molに対して酸素5 molが必要です。同温・同圧でプロパンと酸素がともに気体なら、体積比も1:5です。一方、質量比は1:5ではありません。

モル・質量・気体体積を相互変換する

燃焼計算で使う基本変換は三つです。

変換使う条件
質量からモル物質量mol=質量g÷モル質量g/mol固体、液体、気体に共通
モルから粒子数粒子数=物質量mol×6.02×10²³個/mol分子数・原子数を問うとき
標準状態の気体体積からモル物質量mol=体積L÷22.4 L/mol0℃、1気圧の理想気体として扱うとき

モル質量は、化学式に含まれる原子量を合計して求めます。CH₄なら12+1×4=16 g/mol、CH₃OHなら12+1×4+16=32 g/molです。

1 molは6.02×10²³個の粒子を含みます。また、0℃・1気圧の標準状態では、気体1 molを22.4 Lとして扱います。

22.4 Lは気体ならいつでも使える値ではありません。温度や圧力が標準状態と異なるときは、問題文の条件に合わせて補正します。

係数はC、H、Oの順で合わせる

炭素、水素、酸素からなる燃料の完全燃焼では、次の順序で係数を合わせると安定します。

完全燃焼の化学反応式で炭素、水素、酸素の順に係数を合わせ、酸素分子を最後に決める流れを示した図
完全燃焼の係数は、C、H、Oの順に合わせ、燃料中のOも数えてO₂を最後に決めます。(一次資料を参考に当サイト作成)
  1. 燃料の係数を仮に1とする
  2. 炭素Cの数を見てCO₂の係数を決める
  3. 水素Hの数を見てH₂Oの係数を決める
  4. 右辺の酸素原子数を数え、最後にO₂の係数を決める
  5. 分数が出たら式全体を整数倍し、最も簡単な整数比へ直す

プロパンC₃H₈なら、Cが3個なのでCO₂は3、Hが8個なのでH₂Oは4です。右辺のO原子は3×2+4×1=10個なので、O₂は5となります。

C₃H₈+5O₂→3CO₂+4H₂O

酸素Oを先に合わせると、CO₂とH₂Oの係数を変えるたびにやり直しになります。燃料中にもOが含まれる場合があるため、O₂は必ず最後に決めてください。

完全燃焼の生成物を最初に決める

試験問題で炭化水素やアルコールが完全燃焼するとき、基本の生成物は二酸化炭素CO₂と水H₂Oです。

燃料中の元素完全燃焼で考える基本生成物
炭素C二酸化炭素CO₂
水素H水H₂O
硫黄S二酸化硫黄SO₂

「完全燃焼」という条件を読み落として、一酸化炭素COや炭素Cを生成物へ置くと係数も必要酸素量も変わります。不完全燃焼、分解燃焼、表面燃焼などの現象論は別記事の範囲です。

また、化学式の元素を勝手に増減させてはいけません。反応の前後で各元素の原子数が等しくなるように係数を調整します。化学式中の添字そのものは変えません。

理論酸素量は係数比から求める

理論酸素量とは、燃料を完全燃焼させるために化学反応式上ちょうど必要となる酸素量です。過剰酸素や未燃分を考えない化学量論上の値です。

求め方は次のとおりです。

  1. 完全燃焼の化学反応式を完成させる
  2. 燃料の与えられた量をモルへ直す
  3. 燃料とO₂の係数比を掛ける
  4. 酸素の質量または体積へ変換する

例として、メタノールの完全燃焼は次の式です。

2CH₃OH+3O₂→2CO₂+4H₂O

メタノール1 molに必要な酸素は3÷2=1.5 molです。メタノール16 gは16÷32=0.5 molなので、必要酸素量は0.5×1.5=0.75 molとなります。

標準状態の酸素体積なら、0.75×22.4=16.8 Lです。係数の3だけを掛けず、燃料の係数2で割った比を使うことが重要です。

酸素量から空気量へ換算する

問題が空気量を求めているときは、必要酸素量を求めた後、問題文が指定する空気中の酸素割合で割ります。

空気量=必要酸素量÷空気中の酸素の体積割合

空気中の酸素を体積割合20%とする問題なら、空気量は酸素量÷0.20、つまり酸素量の5倍です。

例として、硫黄24 gが完全燃焼する場合を考えます。

S+O₂→SO₂

硫黄のモル質量を32 g/molとすると、24 gは0.75 molです。必要なO₂も0.75 molで、標準状態の体積は0.75×22.4=16.8 Lです。問題文が空気中の酸素を20%と指定していれば、必要空気量は16.8÷0.20=84.0 Lです。

現実の空気組成を暗記値で上書きせず、試験では問題文の指定値を使ってください。資格試験で指定された20%という簡略条件と、実務の燃焼設備で用いる空気比・湿度・過剰酸素を含む設計計算を混同しないことも大切です。

22.4 Lを使える条件と温度補正

22.4 L/molは、0℃・1気圧の標準状態における気体のモル体積です。問題が20℃・1気圧の体積を求めているなら、標準状態の体積をそのまま答えにできません。

圧力が同じで物質量が変わらない場合は、絶対温度に比例する関係を使います。

V₂=V₁×T₂÷T₁

温度は必ずケルビンKへ直します。0℃は273 K、20℃は293 Kです。

判定処理
0℃・1気圧の体積mol×22.4 L/molで求める
同じ1気圧で20℃の体積標準状態の体積×293÷273
圧力も変わる温度と圧力の両方を含む気体の関係式を使う

圧力まで変化する計算や状態方程式の使い分けは、今後公開する「気体・熱・濃度計算」の記事で詳しく扱います。本記事では、燃焼計算の最後に必要となる温度補正へ絞ります。

公式公開例題を5段階で解く

消防試験研究センターの公式公開例題には、メタノール3 molを完全燃焼させたとき、消費する酸素の20℃・1気圧での体積を求める問題があります。0℃・1気圧で気体1 mol=22.4 Lという条件も与えられています。

1. 完全燃焼の式を書く

2CH₃OH+3O₂→2CO₂+4H₂O

2. 与えられた量をモルで確認する

メタノールは3 molと与えられているため、質量からの変換は不要です。

3. 係数比で酸素のモルへ移る

メタノール:酸素=2:3なので、必要なO₂は3×3÷2=4.5 molです。

4. 標準状態の酸素体積を求める

4.5×22.4=100.8 Lです。

5. 20℃へ温度補正する

100.8×293÷273=約108.2 Lです。

正解は108.2 Lです。100.8 Lは係数比と標準状態までの計算としては正しいものの、20℃という条件を反映していません。

このように、選択肢には途中計算の値が含まれる場合があります。「何を求めるか」「温度と圧力は何か」を最後にもう一度確認してください。

燃料中の酸素を数え落とさない

炭化水素CxHyは燃料中に酸素を含みませんが、アルコールやアセトン、酢酸などは燃料中にOを含みます。

メタノールCH₃OHの式を合わせるとき、右辺の酸素原子はCO₂に2個、2H₂Oに2個、合計4個です。左辺のメタノールがすでにO原子を1個持つため、O₂から補うのは残り3個、つまり1.5 molです。

CH₃OH+3/2O₂→CO₂+2H₂O

最も簡単な整数比に直すと、次の式です。

2CH₃OH+3O₂→2CO₂+4H₂O

燃料中のOを無視すると、必要酸素量を過大に計算します。CとHを合わせた後、左右のO原子をすべて数えてください。

試験で間違えやすい10項目

係数と化学式の添字を同じものとして扱う

係数は分子・モルの個数を表し、添字は1分子中の原子数を表します。原子数を合わせるために化学式の添字を変えてはいけません。

係数を最も簡単な整数比にしない

分数で原子数を合わせた後は、式全体を整数倍します。共通因数が残るなら約分します。

質量比へ係数比をそのまま使う

係数比はモル比です。質量を比較するなら係数へモル質量を掛けます。

完全燃焼でCOを生成物にする

炭化水素やアルコールの完全燃焼の基本生成物はCO₂とH₂Oです。問題文の「完全」を確認します。

O₂の係数を最初に決める

CとHを合わせた後、右辺と燃料中のOを数えてO₂を最後に決めます。

燃料中のO原子を無視する

アルコールなどは燃料側にもOを含みます。必要酸素量からその分を差し引く形になります。

22.4 Lを温度に関係なく使う

22.4 L/molは0℃・1気圧の標準状態です。20℃などの指定があれば温度補正が必要です。

摂氏温度のまま比例計算する

気体体積の温度補正には絶対温度Kを使います。20÷0のような計算はできません。

酸素量を求めたところで空気量の問題を終える

空気量が問われたら、問題文の酸素体積割合で割ります。20%指定なら5倍です。

問題文の酸素割合より暗記値を優先する

試験では与えられた条件を使います。20%と書かれていれば0.20で計算します。

5段階の解答手順

選択肢は次の順番で処理します。

  1. 「完全燃焼」「標準状態」「温度」「圧力」「空気中の酸素割合」へ印を付ける
  2. 生成物を決め、C、H、Oの順に係数を合わせる
  3. 与えられた質量または標準状態の体積をモルへ直す
  4. 係数比で燃料、O₂、生成物の必要なモルへ移る
  5. 求める質量、気体体積、空気量へ直し、温度・圧力条件を反映する

計算欄には、各数値の後ろへg、mol、Lを書いてください。単位が「g→mol→mol→L」と並べば、途中で係数比を質量比へ誤用した箇所を見つけやすくなります。

答えが選択肢と合わないときは、次の順で戻ります。

  • 反応式の係数
  • モル質量
  • 燃料と酸素の係数比
  • 22.4 Lを使う条件
  • 空気中の酸素割合
  • 摂氏からケルビンへの変換

30秒セルフテスト

次の十問に答えてください。

  1. 化学反応式の係数が直接表す比は何か
  2. プロパンC₃H₈の完全燃焼で生じるCO₂とH₂Oの係数はいくつか
  3. プロパン1 molに必要なO₂は何molか
  4. CH₄のモル質量はいくらか
  5. 0℃・1気圧で気体1 molは何Lか
  6. メタノール1 molに必要なO₂は何molか
  7. 空気中の酸素が体積割合20%なら、空気量は酸素量の何倍か
  8. 気体の温度補正に摂氏温度をそのまま使ってよいか
  9. 20℃は何Kとして扱うか
  10. 完全燃焼の酸素量を求めるとき、燃料中のO原子を数えるか

答えは、モル比、3と4、5 mol、16 g/mol、22.4 L、1.5 mol、5倍、使わない、293 K、数える、です。

次に読む記事

物理・化学10問の優先順位を組み直す人は、危険物取扱者甲種の物理・化学の出題傾向|10問中6問以上を取る勉強法へ戻ってください。

酸・塩基、中和、酸化還元、電池を続けて復習する人は、危険物取扱者甲種の酸・塩基と酸化還元・電池攻略|計算と極性を整理を確認してください。

危険物取扱者甲種の記事を学習順に読む人は、危険物取扱者甲種の完全攻略ロードマップを確認してください。

まとめ

危険物取扱者甲種の化学反応式と燃焼計算を、係数、モル、理論酸素量、空気量、気体条件の順に整理しました。

  • 完全燃焼の生成物を先に決める
  • 係数はC、H、Oの順で合わせる
  • 化学反応式の係数はモル比を表す
  • 質量や標準状態の体積は、いったんモルへ直す
  • 係数比で必要酸素量へ移る
  • 空気量は問題文が指定する酸素割合で割る
  • 22.4 L/molは0℃・1気圧の標準状態で使う
  • 温度補正では摂氏をケルビンへ直す
  • 燃料中にOが含まれる場合は、その酸素原子も数える
  • 途中値ではなく、設問が求める単位と条件まで変換する

迷ったら、計算を「モルへ入る→係数比で横へ移る→求める単位へ出る」の三つに分けてください。燃焼計算の見た目が変わっても、この一本道は変わりません。

参考文献