※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。
送風機の風量を下げる方法には、吐出ダンパ、吸込ダンパ、吸込ベーン、回転数制御、翼角制御、ON-OFF・台数制御などがあります。どの方法でも風量は減らせますが、送風機が発生する圧力、余分な損失、軸動力、調整範囲は同じではありません。
特に注意したいのが「インバータにすれば、風量比の三乗まで電力が下がる」という理解です。管路抵抗が主体のターボ形送風機では有効な目安ですが、水深、炉内圧、槽内圧などの固定抵抗が大きい系や、ルーツブロワーなどの容積形へ、そのまま当てはめることはできません。
この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、制御方式の違い、固定抵抗があるときの注意、改造前に測る値、省エネ効果の確認方法を説明します。
この記事の結論
- 吐出ダンパは簡単で応答も速い一方、送風機が作った圧力をダンパで消費するため、部分負荷の省エネには不利です。
- 吸込ダンパと吸込ベーンは別物です。吸込ベーンは予旋回で送風機特性を変えるため、単純な吸込絞りより軸動力を下げやすい方式です。
- ターボ形の回転数制御は、固定抵抗が小さい系で有利です。ただし実際の軸動力には送風機・モータ・インバータ効率が影響します。
- 固定抵抗が大きい系では、回転数を下げても圧力を下げられず、遠心形ではサージ余裕が先に制約となる場合があります。
- ルーツ形などの容積式では、固定圧力下の軸動力は三乗ではなく、概ね回転数に比例して下がります。
- 改造前に、必要風量、固定抵抗、変動抵抗、年間の負荷時間、実電力を測ります。フィルタ・ダクトの汚れや過大設計余裕を直す方が先の場合もあります。
1. まず「何を一定にしたいか」を決める
風量制御の目的は、ダンパ開度や周波数を一定にすることではありません。プロセスが必要とする状態を維持することです。
| 主な制御目的 | 操作量の例 | 監視すべき値 |
| ダクト風量を一定にする | ダンパ、吸込ベーン、回転速度 | 流量、差圧、回転速度、電力 |
| 炉内・槽内圧を一定にする | 排気・給気送風機の回転速度やダンパ | 圧力、上下限、相互干渉、失陥時の状態 |
| 曝気量を需要に合わせる | 回転速度、台数、弁 | 空気量、水深、吐出圧、溶存酸素など |
| 局所排気の捕集を維持する | 系統ダンパ、回転速度 | 制御風速・風量、フード差圧、処理装置差圧 |
| 燃焼空気比を保つ | 回転速度、ベーン、ダンパ | 燃料量、空気量、酸素濃度、炉内圧、安全条件 |
目標値が流量か圧力かで、同じ操作に対する応答が変わります。複数系統が共通ダクトへつながる場合は、一つのダンパ操作が他系統の風量へ影響することもあります。制御方式を選ぶ前に、制御量、操作量、外乱、上下限、異常時の安全側を整理します。
2. 制御方式を最初に比較する
代表的な方式の違いを先にまとめます。評価は一般的な傾向であり、実機の性能曲線とメーカーの許容範囲を優先してください。
| 方式 | 風量を下げる原理 | 部分負荷の動力 | 主な長所 | 主な注意 |
| 吐出ダンパ | 系統抵抗を増やす | 下がりにくい | 構成が簡単、応答が速い、既設へ追加しやすい | 圧力をダンパで捨てる。小風量側の許容範囲を確認 |
| 吸込ダンパ | 吸込側を絞る | 吐出絞りより下がる場合がある | 比較的簡単 | 吸込負圧、漏れ込み、騒音、調整範囲を確認 |
| 吸込ベーン | 予旋回を与え、羽根車の仕事を変える | 単純絞りより下がりやすい | 制御性がよく、固定抵抗がある系にも選択肢 | 機構・リンクの点検、低開度特性、メーカー曲線が必要 |
| 回転数制御 | 送風機の圧力曲線自体を下げる | 固定抵抗が小さい系では大きく低下 | 広い範囲で高効率になりやすい | 最低速度、固定抵抗、サージ、モータ冷却、共振、効率低下 |
| 可変翼・可変ピッチ | 翼角を変えて特性を変える | 軸流形で有利な場合がある | 広い調整範囲、高効率 | 機構が複雑、保守が必要 |
| ON-OFF・台数制御 | 停止または運転台数を変える | 待機時損失を抑えやすい | 変動が段階的・間欠的な系に適する | 起動頻度、圧力変動、逆流、順次起動、予備機方針 |
| バイパス・放風 | 余剰流量を戻す・捨てる | 全負荷に近い動力が残りやすい | 最低流量確保や短時間調整に使える | 省エネ目的には不利。ガス温度・安全・循環先を確認 |

方式を一つに固定せず、通常運転は回転数、微調整はベーン、低流量限界ではリサイクル、需要が大きく変わる場合は台数制御、という組合せもあります。
3. 吐出ダンパは「圧力を作ってから捨てる」
吐出ダンパを絞ると、プラント側の抵抗曲線が立ち、運転点は小風量側へ移ります。送風機の回転速度と羽根条件が同じなら、送風機の圧力曲線自体は基本的に変わりません。
そのため、送風機は必要な末端圧力に加えて、ダンパの圧力損失も作ります。風量は減っても、発生圧力が高いままなので、軸動力は風量と同じ割合では下がりません。羽根形式によっては、絞り側で電流が下がりにくい、または軸流形のように負荷が増える場合もあります。
吐出ダンパは悪い方式と決めつけるものではありません。運転時間が短い、風量変動が小さい、応答性を優先する、既設改造を最小にしたい、といった条件では合理的です。省エネ評価では、設備費だけでなく年間の部分負荷時間を含めます。
ダンパ操作による運転点の動きは送風機の性能曲線と運転点で詳しく説明しています。
4. 吸込ダンパと吸込ベーンを混同しない
吸込ダンパは、吸込側へ抵抗を追加して風量を減らします。吐出ダンパと比べて軸動力が下がる場合がありますが、吸込圧力が低下するため、外気の漏れ込み、シール部や継手の状態、騒音、吸込偏流を確認する必要があります。
吸込ベーンは、羽根車の前で気体に予旋回を与え、羽根車入口の速度三角形を変える方式です。単に流路を狭めるだけではなく、送風機の圧力・軸動力特性を変えます。一般に低風量域では吸込ダンパより軸動力を下げやすく、回転数制御より高い締切圧力を保てるため、固定抵抗がある系でも候補になります。
ただし、ベーン開度と風量は直線関係ではありません。リンク機構のがた、固着、左右不ぞろい、開度指示のずれも制御性能へ影響します。選定・調整にはベーン角ごとのメーカー曲線を使います。
5. 回転数制御の相似則は「成立条件」と一緒に使う
同じターボ形送風機で、ガス条件と効率が大きく変わらず、系統抵抗が主に流速の二乗で変わる場合、回転速度Nを変えたときの代表的な相似関係は次のとおりです。
Q₂ / Q₁ ≒ N₂ / N₁
ΔP₂ / ΔP₁ ≒(N₂ / N₁)²
L₂ / L₁ ≒(N₂ / N₁)³ ×(η₁ / η₂)
| 記号 | 意味 |
| Q | 吸込実体積流量 |
| ΔP | 送風機の圧力上昇 |
| L | 軸動力 |
| N | 回転速度 |
| η | 送風機効率 |
たとえば回転速度を80%へ下げると、理想的な二乗抵抗系では風量80%、圧力64%、軸動力約51%が目安になります。ただし、この51%は送風機効率が同じと仮定した軸動力です。実際の受電電力には、部分負荷時の送風機効率、モータ効率、インバータ損失、伝動損失が加わります。
また、周波数と回転速度は厳密には同じではありません。誘導電動機ではすべりがあり、ベルト駆動ではプーリ比とすべりも影響します。効果確認では周波数だけでなく実回転速度と電力を測ります。
6. 固定抵抗があると三乗則どおりにならない
送風系の必要圧力は、次の二つに分けて考えます。
必要圧力 = 固定抵抗+風量で変わる抵抗
| 抵抗 | 代表例 | 風量を下げたとき |
| 固定抵抗 | 曝気槽の水深、炉内圧、加圧槽、設備間の圧力差 | ほとんど残る |
| 変動抵抗 | ダクト、曲管、分岐、フィルタ、熱交換器、スクラバー | 乱流域では概ねQ²で低下 |

回転数を下げると、ターボ形送風機が発生できる圧力は概ね回転速度の二乗で下がります。しかし固定抵抗は同じ割合で下がりません。送風機の圧力曲線が固定抵抗を上回れなくなると、必要な風量を送れなくなります。
遠心形では、回転数低下に伴って運転点がサージ側へ近づく場合があります。一次資料の例では、全抵抗の80%が固定抵抗、20%が配管抵抗で、サージ点が定格風量の50%にある系を検討すると、速度低下より先にサージ余裕が調整範囲を制限しています。この数値を一般値として使うのではなく、「固定抵抗の割合とサージラインを入れない省エネ計算は過大評価になり得る」という教訓として使います。
固定抵抗が大きい場合は、回転数だけでなく吸込ベーン、台数制御、設備側の固定圧力見直し、送風機の再選定を比較します。最低回転速度はインバータの下限周波数だけでは決められません。
7. ルーツブロワーへターボ形の三乗則を当てはめない
ルーツブロワーなどの容積形は、一回転あたりに送り出す容積が構造でほぼ決まります。漏れを無視すれば、風量は回転速度に概ね比例します。一方、吐出圧力はブロワーが自由に決めるのではなく、吐出側の槽圧、水深、配管抵抗などプラント側で決まります。
| 系統 | 回転数を下げたときの代表傾向 |
| 配管抵抗主体 | 風量は回転数に概ね比例し、必要差圧も低下するため、動力低下は大きくなりやすい |
| 固定圧力主体 | 風量は回転数に概ね比例するが差圧はほぼ残り、軸動力は効率補正を除けば概ね回転数比例 |

したがって、固定圧力系のルーツブロワーを80%速度にしても、電力が51%になるとは限りません。概ね80%に近い傾向へ効率変化が加わると考え、実機性能と差圧から計算します。
容積形のバイパス・放風制御は、ブロワー自体が全風量を扱い続けるため、風量変動が大きい用途では省エネに不利です。また吐出側を閉じて流量を止める操作は、差圧上昇、温度上昇、過負荷、保護装置作動や破損につながるため、ターボ形のダンパ制御と同じ感覚で扱いません。
機種の見分け方は送風機の種類と特徴を参照してください。
8. インバータ改造の前に設備側の無駄を除く
省エネ診断では、最初からインバータを選ぶのではなく、現在の必要仕事と余分な抵抗を分けます。
| 先に確認する項目 | 確認方法 | 改善の方向 |
| 実際の必要風量 | 生産量・時間帯ごとの風量、品質・環境条件との関係を記録 | 過剰風量を減らす。設定値と設計余裕を見直す |
| フィルタ・コイル・スクラバーの汚れ | 清浄時と現在の差圧を比較 | 清掃・交換で抵抗を戻す |
| ダクト・曲管・吸込偏流 | 現場配置、圧力分布、吸込状態を確認 | 曲管・整流・断面・ダンパ配置を改善 |
| 漏れ・不要な開口・バイパス | 系統ごとの風量収支と現場確認 | 不要経路を閉じ、必要箇所の給気を整える |
| 過大な設計余裕 | 計画点と実測点、ダンパ差圧を比較 | 羽根外径調整、再選定、回転速度見直しを比較 |
| 固定抵抗 | 水深、槽圧、炉内圧、設備間差圧を分離 | 下げられる固定圧力か、プロセス条件と再確認 |
フィルタ目詰まりやダクト汚れで抵抗が増えた設備は、計画風量を出すために回転速度を上げ、電力を余計に使います。制御装置の追加前に、抵抗増加の原因を直す方が、設備費が小さく効果も持続する場合があります。
9. 年間電力量は負荷時間で評価する
定格点の動力だけで方式を比較すると、実際の省エネ効果を誤ります。各負荷帯の入力電力と運転時間を積算します。
年間電力量 = Σ(各負荷帯の入力電力 × その運転時間)
| 負荷帯 | 必要風量 | 固定抵抗 | 実測または予測入力電力 | 年間時間 | 電力量 |
| 高負荷 | |||||
| 中負荷 | |||||
| 低負荷 | |||||
| 待機・停止 |
比較する方式ごとに、送風機効率、モータ効率、インバータや流体継手の損失、ダンパ・ベーンの圧力損失、最低流量用バイパスを含めます。さらに初期費用、保守費、停止リスク、予備品、耐用年数を加えて総合評価します。
送風機の風量・圧力・軸動力の単位と密度補正は送風機の風量・圧力・軸動力と密度補正で確認できます。
10. 改造前後は同じ条件で測る
省エネ効果は、電流だけではなく入力電力で評価します。三相電力は電圧、電流、力率の影響を受けるため、可能なら電力計・電力モニタを使います。
| 同時に記録する値 | 目的 |
| 吸込実風量または風速 | 実際の仕事量をそろえる |
| 吸込・吐出圧力、主要機器差圧 | 固定抵抗と変動抵抗、ダンパ損失を分ける |
| 入力電力・電流・電圧・力率 | 受電側の効果と過負荷を確認する |
| 回転速度・周波数・ダンパ/ベーン開度 | 操作量と実機状態を対応させる |
| 吸込温度・気圧・湿度・ガス組成 | 密度差を補正する |
| 振動・音・軸受温度 | サージ、共振、機械異常を監視する |
| 生産量・プロセス状態 | 省エネと品質・能力の両立を確認する |
改造前後は、同じ生産量、同じガス条件、同じ必要風量で比較します。気温やフィルタ差圧が違う日の電力を単純比較しないでください。日単位ではなく、代表的な高・中・低負荷を含む期間で確認します。
11. 制御と安全保護を一つにしない
風量制御が正常に動いていることと、異常時に設備が安全であることは別です。特に可燃性・有毒・高温ガス、燃焼設備、局所排気では、制御ダンパや回転数指令の誤り一つで危険状態にならないようにします。
| 想定する異常 | 別に確認する保護・設計 |
| ダンパ誤操作・固着 | 開度フィードバック、上下限、流量・圧力の独立監視、機械的な安全位置 |
| 風量計の故障 | 故障診断、代替指標、警報、必要に応じたトリップ |
| インバータ停止・電源喪失 | 安全側動作、非常電源・予備機、再起動条件、プロセス停止手順 |
| 小風量・サージ | メーカーの許容運転範囲、最低流量・アンチサージ制御 |
| 容積形の吐出閉塞 | リリーフ、差圧・温度・電流保護、閉止弁とのインターロック |
| 過速度・共振・冷却不足 | 最高・最低速度、禁止速度帯、モータ・軸系・軸受の検討 |
固定の「安全濃度」や一つのダンパ開度だけで安全を保証せず、適用法令、リスク評価、検知、着火防止、換気喪失時の処置を設備ごとに決めます。インバータ特有の共振、低速冷却、絶縁、商用切換えはBL-09で詳しく扱います。
12. 制御方式を選ぶ実務手順
- 必要な制御量と許容変動を決める
- 高・中・低負荷の必要風量と年間時間を記録する
- 固定抵抗と風量で変わる抵抗を分ける
- ターボ形か容積形か、羽根形式と許容運転範囲を確認する
- 吐出ダンパ、吸込ベーン、回転数、可変翼、ON-OFF・台数制御を比較する
- 各負荷点の運転点、軸動力、入力電力、サージ・最低速度・温度を確認する
- 制御応答、設備費、保守費、安全保護、停止リスクを加える
- 改造前後を同じ仕事量・ガス条件で測定し、年間電力量で検証する

小さな風量変動で運転時間が短ければ、ダンパが合理的な場合があります。変動が大きく、固定抵抗が小さく、部分負荷時間が長ければ、回転数制御の効果が大きくなりやすいです。固定抵抗が大きい系では、吸込ベーン、台数制御、設備側の圧力低減、送風機の再選定を含めて比較します。
13. まとめ
送風機の風量制御は、風量を下げられるかだけでなく、「どこで圧力を作り、どこで損失にしているか」で評価します。吐出ダンパは作った圧力をダンパで消費し、回転数制御は送風機の圧力曲線自体を下げます。吸込ベーンは予旋回で特性を変えるため、単純な吸込絞りとは別です。
ただし、回転数制御の三乗則は万能ではありません。固定抵抗が大きい系では必要圧力が残り、遠心形ではサージ余裕が先に制約となることがあります。ルーツ形など容積式では、固定圧力下の動力は概ね回転数比例で、ターボ形の三乗則を当てはめられません。
改造前に必要風量、固定抵抗、変動抵抗、入力電力、年間負荷時間を測り、汚れ・漏れ・過大余裕を先に除いてください。方式ごとの年間電力量、設備費、保守、安全を比較することが、実際に効く省エネにつながります。送風機記事群の全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで確認できます。
参考文献
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』PDF p.34–41, 47–49, 121–123, 144–148 Amazonで見る
- 化学工学会編『プロセス設計シリーズ7 プロセスの制御と計算機制御』PDF p.20–21(PDF p.32–33)
- 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』流体輸送機器、PDF p.314–315(リンクは改訂七版) 最新版をAmazonで見る
- 化学工学会編『化学装置便覧 改訂二版』18章、PDF p.736–737
- 『環境保全技術シリーズ(悪臭・炭化水素排出防止技術)(2) 方法別防止技術』PDF p.72, 189(PDF p.87, 204)
化学プラント大全 
