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配管の必要肉厚を計算する|内圧式・腐れ代・製造公差からSchを選ぶ

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配管の肉厚は、設計圧力を計算式へ入れて終わりではありません。設計温度における許容応力、溶接継手の扱い、腐れ代やねじ・溝加工の付加厚さを決め、さらに鋼管の負の肉厚公差を考慮して、市販されるスケジュール番号を選ぶ必要があります。

この途中で「計算上は3 mmだから3 mmの管でよい」と判断すると、製造公差で薄くなった部分や、開先加工後の部分が必要厚さを下回る可能性があります。また、内圧式を満足しても、真空、外力、熱応力、振動、ねじ加工、局部腐食まで安全とは限りません。

この記事では、初学者が式の意味を理解できるようにフープ応力から説明し、設計担当者向けに、代表的な規格式、数値例、負の公差、腐れ代、Sch選定、内圧計算で確認できない荷重まで整理します。

まず結論:計算肉厚ではなく採用する呼び厚さまで確認する

直管の肉厚選定は、次の順序で行います。

  1. 適用法規、設計コード、適用版を固定する
  2. 設計圧力と設計温度をシナリオから決める
  3. 管外径、材質、許容応力、継手効率などの入力値を規格表から得る
  4. 内圧に対する圧力設計厚さを計算する
  5. 腐れ代、ねじ・溝、加工代などの付加厚さを加える
  6. 負の肉厚公差や開先加工後の最小厚さを確認する
  7. 条件を満たす一つ上の市販Sch管を採用する
  8. 外圧、重量、熱応力、振動、局部荷重などを別途確認する
設計条件、規格式、付加厚さ、製造公差、スケジュール選定、他荷重確認の順に配管肉厚を決める手順
設計条件、規格式、付加厚さ、製造公差、スケジュール選定、他荷重確認の順に配管肉厚を決める手順(一次資料を参考に当サイト作成)

重要なのは、計算式が返す値と、購入仕様に記載する呼び厚さを区別することです。最終判定は、実際に最も薄くなり得る部分が必要厚さ以上かどうかで行います。

内圧を受ける管ではフープ応力が肉厚を支配する

内圧を受ける直管には、管軸方向の応力と、管を縦に割ろうとする周方向応力が生じます。後者をフープ応力と呼び、閉止端を持つ薄肉円筒では、周方向応力は長手方向応力のおおむね2倍になるため、直管の内圧肉厚を支配します。

内圧が管の投影面を押し広げる力と、左右の管壁が引張力で抵抗する関係を示す半割管の図
内圧が管の投影面を押し広げる力と、左右の管壁が引張力で抵抗する関係を示す半割管の図(一次資料を参考に当サイト作成)

内径を d、内圧を P、管壁に生じる応力を S、厚さを t とする単純な薄肉モデルでは、半割管の力の釣合いは次の形になります。

P d = 2 S t

したがって、Sを材料の許容応力とすれば、必要厚さの基本形は t = P d / 2S です。ただし実際の設計コードは、外径基準か内径基準か、材料、溶接、温度域、付加厚さなどを反映するため、この単純式をそのまま採用しません。

内径基準の式は一般に厚めの結果となり、外径基準の式は薄めの結果となります。規格式では、実際の圧力作用位置に近い平均径の考え方を基礎にしながら、規格ごとの係数と適用範囲が組み込まれています。

代表的な必要厚さ計算式と記号を理解する

『配管設計実用ノート』がJIS B 8201:2013の例として示す外径基準式は、次の形です。

必要厚さ t_req = P D / {2(S E + k P)} + A

記号意味単位・確認先
P設計圧力MPa。ゲージ圧か絶対圧かを式の定義で確認
D管外径mm。呼び径ではなく規格外径
S設計温度における許容応力MPa=N/mm²。材料と温度から規格表で確認
E長手継手効率継目なし、電縫、溶接品質などにより決定
k温度などで変わる係数適用規格の表で確認
A腐れ代などの付加厚さmm。腐食、ねじ・溝、機械的要求を考慮
設計圧力と外径は必要肉厚を増やし、許容応力と継手効率は必要肉厚を減らし、付加厚さは最後に加算される関係図
設計圧力と外径は必要肉厚を増やし、許容応力と継手効率は必要肉厚を減らし、付加厚さは最後に加算される関係図(一次資料を参考に当サイト作成)

圧力Pと許容応力SをともにMPa、外径Dをmmで入れれば、厚さはmmで求まります。単位が一致していても、常温の許容応力を高温配管へ使う、呼び径を外径として使う、継手効率を無条件に1とする、といった入力ミスがあれば結果は正しくありません。

ASME B31.3系の外径基準式は、参考資料では圧力設計厚さを次の一般形で示しています。

圧力設計厚さ t = P D / {2(S E W + P Y)}

そのうえで、腐食、ねじ、溝などの付加厚さcを加えて必要厚さを決めます。Wは溶接強度減少係数、Yは材料・温度などに関係する係数です。記号の定義、係数、適用限界は規格と版によって異なるため、この記事の式だけで実設計を確定せず、契約で指定されたコード本文を確認してください。

計算例:100A Sch40を採用できるか確認する

ここでは『配管設計実用ノート』の例を使い、JIS B 8201:2013の式で計算からSch選定までを追います。規格値は版によって変わり得るため、計算手順を理解するための例として読んでください。

入力
設計圧力 P3.90 MPa
管外径 D114.3 mm(100A)
許容応力 S106 MPa
長手継手効率 E1.0
係数 k0.4
付加厚さ A1.0 mm

式へ代入すると、

t_req = 3.90 × 114.3 / {2 × 106 × 1.0 + 2 × 0.4 × 3.90} + 1.0

t_req = 3.08 mm

計算で得た3.08 mmは、必要な最小厚さです。これをそのまま発注厚さにしてはいけません。

100A Sch40の呼び厚さを6.0 mm、負の肉厚公差を12.5%とする例では、製造上最も薄くなり得る厚さは、

t_min = 6.0 ×(1 − 0.125)= 5.25 mm

5.25 mm > 3.08 mm なので、この例の内圧条件に対しては100A Sch40を採用できます。

必要厚さ3.08mmに対し100A Sch40の負の肉厚公差を考慮した最小厚さが5.25mmで上回ることを示す比較グラフ
必要厚さ3.08mmに対し100A Sch40の負の肉厚公差を考慮した最小厚さが5.25mmで上回ることを示す比較グラフ(一次資料を参考に当サイト作成)

この判定は内圧だけに対するものです。Sch40を採用しただけで、外圧、熱応力、サポート荷重、振動、腐食形態まで満足したことにはなりません。

呼び厚さ・最小実厚・開先部の厚さを区別する

鋼管のカタログやJIS表に示される肉厚は呼び厚さです。実際の製品には規格で認められた寸法公差があるため、呼び厚さより薄い部分が存在し得ます。

呼び厚さ、負の肉厚公差後の最小実厚、開先やねじ溝加工後の局部最小厚さを順に比較する管端断面図
呼び厚さ、負の肉厚公差後の最小実厚、開先やねじ溝加工後の局部最小厚さを順に比較する管端断面図(一次資料を参考に当サイト作成)

負の肉厚公差を割合m、開先・ねじ・溝などによる局部的な減肉をδとすると、確認の基本形は次のとおりです。

最小残存厚さ t_min = 呼び厚さ t_nom ×(1 − m)− δ

採用条件は t_min ≧ t_req です。

公差の値は、材質規格、製造方法、寸法、適用版、購入仕様によって異なります。どの鋼管にも一律で12.5%を使えるわけではありません。ミルシートに実測肉厚があっても、設計段階では購入仕様で保証される最小値を基準にします。

突合せ溶接の開先合わせで管内面を削る場合、ねじ込み接続でねじ谷ができる場合、溝形管継手で溝を加工する場合は、その局部最小厚さを確認します。直管中央部が十分厚くても、加工部だけが不足することがあります。

腐れ代などの付加厚さは流体と寿命から決める

付加厚さAまたはcは、圧力を保持するための純粋な計算厚さへ追加する厚さです。一方、機械的最小厚さや事業所基準の最小呼び厚さは、加算項ではなく下限値として比較します。両者を区別して整理すると、代表的な確認項目は次のとおりです。

  • 全面腐食や摩耗に対する腐れ代
  • ねじ、溝、内面加工で失われる厚さ
  • 機械的最小厚さ:サポート反力による局部変形や取扱い時の損傷を避ける下限
  • 事業所基準や購入仕様で要求する最小呼び厚さ
圧力設計厚さへ腐れ代と加工代を加えた必要厚さを、機械的最小厚さと比較して大きい方を採用する図
圧力設計厚さへ腐れ代と加工代を加えた必要厚さを、機械的最小厚さと比較して大きい方を採用する図(一次資料を参考に当サイト作成)

全面腐食が支配し、腐食速度を信頼できる場合は、腐食速度と設計寿命から腐食量を見積もれます。ただし、孔食、隙間腐食、応力腐食割れ、流れ加速型腐食などは、平均減肉量を加えるだけでは管理できません。材料変更、流速・水質管理、ライニング、検査計画などを組み合わせます。

腐れ代を大きく取るほど常に安全とは限りません。重量とサポート荷重が増え、溶接入熱、予熱・後熱、調達性、コストにも影響します。腐食機構を特定し、検査可能性と更新方針を含めて決めます。

内圧式だけでは確認できない条件がある

直管の内圧必要厚さは、配管設計の一つのチェックにすぎません。次の条件は別の式、解析、規格部品の適合確認が必要です。

外圧真空、重量、熱応力、振動、分岐補強、局部荷重、継手定格を内圧計算とは別に確認する図
外圧真空、重量、熱応力、振動、分岐補強、局部荷重、継手定格を内圧計算とは別に確認する図(一次資料を参考に当サイト作成)
条件主な確認内容
外圧・真空弾性座屈、真円度、補強リング、ライニング剥離
重量・サポート自重、液重量、保温材、弁などの集中荷重、支持間隔
熱膨張・強制変位ノズル荷重、曲げ応力、疲労、サポート反力
振動・脈動高サイクル疲労、小口径分岐、圧縮機・調節弁近傍
分岐・開口面積補償、補強板、管台の有効厚さと補強範囲
エルボ・ベンド成形減肉、偏平、曲げ部の局部応力、購入規格
フランジ・弁・継手圧力温度定格、シート・ガスケット限界、適用規格

市販の規格エルボや継手は、対応する管スケジュールで使用できるよう設計されていますが、適用範囲と材料・製造規格の一致を確認します。特殊ベンド、マイタベンド、薄肉加工品、高圧配管では個別評価が必要です。

設計レビューで確認する12項目

  1. 適用法規、設計コード、版、流体区分が決まっているか
  2. 設計圧力・設計温度の根拠シナリオが残っているか
  3. 呼び径ではなく正しい外径または内径を使ったか
  4. 材料と設計温度に対応する許容応力を使ったか
  5. 継目なし、電縫、溶接管の区分と継手効率が正しいか
  6. 高温域の溶接強度減少係数や温度係数を確認したか
  7. 腐れ代、摩耗、ねじ、溝、開先加工を考慮したか
  8. 呼び厚さではなく負の公差後の最小厚さで判定したか
  9. 採用Schが材料規格と口径範囲に実在するか
  10. 外圧・真空を別途確認したか
  11. 重量、熱応力、振動、局部荷重、分岐補強を確認したか
  12. 計算書、ラインリスト、配管クラス、購入仕様の値が一致しているか

まとめ

配管の必要肉厚は、内圧式で求めた圧力設計厚さへ、腐れ代や加工代などの付加厚さを加えて決めます。その後、負の肉厚公差や局部加工を考慮した最小残存厚さが必要厚さを上回る、市販のSch管を選びます。

計算例では必要厚さ3.08 mmに対し、100A Sch40の呼び厚さ6.0 mmから負の公差を考慮した最小厚さは5.25 mmとなり、内圧条件を満足しました。ただし、これは外圧、熱応力、重量、振動、分岐補強、継手定格まで保証するものではありません。

実設計では、適用コードと版を先に固定し、許容応力、係数、公差をその規格と購入仕様から確認してください。計算値、採用Sch、最小実厚、他荷重の確認結果を一つの設計記録として残すことが重要です。

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参考文献

  • 西野悠司『絵とき「配管技術」基礎のきそ』第2章「管・管継手の強度」、PDF p.36-39、52-53 Amazonで見る
  • 西野悠司『配管設計実用ノート』第5章「管・管継手の強度を評価する」、第13章「ポンプ・配管系を実際に設計する」、PDF p.82、219 Amazonで見る
  • 西野悠司『プラント配管の原理としくみ』第2章「内圧により生じる力と応力」、PDF p.36-39 Amazonで見る
  • ASME「B31.3 Process Piping」2024 Edition ASME公式ページ
  • 日本産業標準調査会「JIS検索」 JIS検索