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熱交換器の効率ってどうやって計算するの?
熱交換器の設計にどう使うの?
そんな悩みを解決します。
・温度効率とは何か、どう計算するか
・出口温度が未知でも出口温度を求める方法(NTU法)
・国際的に使われる ε-NTU 法との対応関係

私の仕事は化学プラントの設計です。
その経験をもとに分かりやすく解説します。
伝熱面積を求める式 A = Q /(U・ΔTlm) には弱点があります。対数平均温度差 ΔTlm を計算するには、4つの温度(両流体の入口・出口)がすべて分かっていなければなりません。
ところが実務では、こういう問い方をされることがよくあります。
「手持ちの34 m2 の熱交換器に、この流体を流したら何℃まで冷えるのか」
出口温度が未知です。ΔTlm が計算できないので、A = Q/(U・ΔTlm) は使えません。このときに使うのが温度効率とNTU法です。
・出口温度が未知でも、伝熱面積 A と総括伝熱係数 U が分かっていれば出口温度は計算できます。
・鍵になるのは、熱容量流量比 R と伝熱単位数 N(NTU)という2つの無次元数。
・向流は並流より効率が良い。同じ機器・同じ流量でも交換熱量が1割以上変わります。
・日本の教科書の「温度効率 φ」と、国際的に使われる「ε-NTU法」は同じものを別の基準で書いたものです。
熱交換器の性能を測る2つのものさし
熱交換器の性能は、2つの視点から評価されます。
| 視点 | 内容 | 測る指標 |
|---|---|---|
| 熱交換性能 | 高温流体から低温流体へ、どれだけの熱エネルギーを移動させられるか | 全交換熱量 Q[W] |
| 温度交換性能 | 高温流体と低温流体の温度を、どれだけ変化させられるか | 温度効率 φ[−] |
前者は Q = U・A・ΔTlm で求まります。詳細は以下の記事で解説しています。
後者を測るのが温度効率です。ここから分かりやすく解説していきます。
温度効率とは
温度効率は、「理論上あり得る最大の温度変化に対して、実際にどれだけ温度が変わったか」の割合です。
理論上あり得る最大の温度変化とは、伝熱面積が無限にあったときの温度変化、すなわち入口温度差(Thi − Tci)です。どんなに大きな熱交換器を持ってきても、高温流体が低温流体の入口温度より冷えることはありません。
同じ伝熱面積・伝熱係数の条件でも、向流は並流より高い温度効率を得やすい形式です。

流体の出入口温度が分かるとき
高温流体側の温度効率
$$φ_h=\frac{T_{hi}−T_{ho}}{T_{hi}−T_{ci}}・・・①$$
低温流体側の温度効率
$$φ_c=\frac{T_{co}−T_{ci}}{T_{hi}−T_{ci}}・・・②$$
φ:温度効率[−]
T:流体温度[K または ℃]
添字 h:高温側流体、c:低温側流体
添字 i:入口、o:出口
出口温度が未知のとき ― R と N を使う
出口温度が分からないときは、熱容量流量比 Rh と伝熱単位数 Nh から温度効率を計算します。
熱容量流量比 Rh
$$R_h=\frac{m_hc_h}{m_cc_c}・・・③$$
m:質量流量[kg/s]
c:比熱[J/(kg・K)]
熱容量流量(流量×比熱)の比です。「どちらの流体が温度変化しにくいか」を表します。
Rh が大きいほど高温側の熱容量流量が大きく、高温側は温度が下がりにくくなります。
伝熱単位数 Nh(NTU)
$$N_h=\frac{UA}{m_hc_h}・・・④$$
U:総括伝熱係数[W/(m2・K)]
A:伝熱面積[m2]
高温流体の熱容量流量に対して、伝熱面の熱の通しやすさがどれくらいあるかを表します。伝熱単位数、NTU(Number of Transfer Units)と呼ばれます。
N が大きいほど熱交換器として「立派」ということですが、N を大きくするには面積を増やす、つまりコストがかかります。
温度効率の計算式
並流型熱交換器
$$φ_h=\frac{1−\exp\left[−N_h(1+R_h)\right]}{1+R_h}・・・⑤$$
$$φ_c=R_hφ_h・・・⑥$$
向流型熱交換器
$$φ_h=\frac{1−\exp\left[−N_h(1−R_h)\right]}{1−R_h\exp\left[−N_h(1−R_h)\right]}・・・⑦$$
$$φ_c=R_hφ_h・・・⑧$$
φc = Rhφh という関係は熱収支から自動的に出てきます。高温側が失った熱と低温側が得た熱が等しいことを、温度効率で書き直しただけです。
なお Rh = 1 のとき、向流の式は 0/0 になります。極限を取ると φh = Nh /(1 + Nh) となります。
向流が有利な理由
並流の式(Rh > 0 なら分母は必ず 1 + Rh > 1)と向流の式を比べると、同じ Nh、Rh に対して向流のほうが必ず温度効率が高くなります。

理由は温度差の分布にあります。
並流では、入口で温度差が最大になり、出口に向かって急激に縮まります。出口では両流体の温度が近づきすぎて、ほとんど熱が動きません。しかも構造上、低温側出口温度が高温側出口温度を超えることは絶対にありません。
向流では、熱交換器の全長にわたって温度差が比較的均一に保たれます。そして低温側出口温度が高温側出口温度を上回ることさえ可能です。
計算例 ― 既設機の出口温度を求める
設計条件
向流型熱交換器。伝熱面積 A = 34 m2、総括伝熱係数 U = 500 W/(m2・K)。

高温側流体:温水 Thi = 90℃、mh = 7 kg/s、ch = 4,195 J/(kg・K)
低温側流体:空気 Tci = 10℃、mc = 10 kg/s、cc = 1,007 J/(kg・K)
この条件で両流体の出口温度と交換熱量を求めます。
① 熱容量流量比 Rh を求める
まず両側の熱容量流量を出します。
$$m_hc_h=(7)(4195)=29365\ W/K$$
$$m_cc_c=(10)(1007)=10070\ W/K$$
$$R_h=\frac{29365}{10070}=2.92・・・③$$
② 伝熱単位数 Nh を求める
$$N_h=\frac{UA}{m_hc_h}=\frac{(500)(34)}{29365}=0.579・・・④$$
③ 温度効率 φ を求める
向流の式に代入します。まず指数部分を計算します。
$$−N_h(1−R_h)=−0.579(1−2.92)=1.109$$
$$\exp(1.109)=3.032$$
高温側の温度効率は
$$φ_h=\frac{1−3.032}{1−(2.92)(3.032)}=\frac{−2.032}{−7.853}=0.259・・・⑦$$
低温側の温度効率は
$$φ_c=R_hφ_h=(2.92)(0.259)=0.756・・・⑧$$
④ 流体出口温度を求める
温度効率の定義式を出口温度について解きます。高温側は①式から
$$T_{ho}=T_{hi}−φ_h(T_{hi}−T_{ci})=90−(0.259)(90−10)=69.3\ ℃$$
低温側は②式から
$$T_{co}=T_{ci}+φ_c(T_{hi}−T_{ci})=10+(0.756)(90−10)=70.5\ ℃$$
温度差が両端とも正であることを確認しておきます。
高温側入口 vs 低温側出口:90 − 70.5 = 19.5 K > 0
高温側出口 vs 低温側入口:69.3 − 10 = 59.3 K > 0
両端で温度差が正なので、熱力学的に成立しています。
⑤ 対数平均温度差 ΔTlm を求める
向流なので
$$ΔT_1=T_{hi}−T_{co}=90−70.5=19.5\ K$$
$$ΔT_2=T_{ho}−T_{ci}=69.3−10=59.3\ K$$
$$ΔT_{lm}=\frac{19.5−59.3}{\ln(19.5/59.3)}=\frac{−39.8}{−1.112}=35.8\ K$$
⑥ 全交換熱量 Q を求める
$$Q=UAΔT_{lm}=(500)(34)(35.8)=6.09×10^5\ W=609\ kW$$
検算:熱収支は合っているか
高温側が失った熱量
$$Q_h=(29365)(90−69.3)=6.08×10^5\ W$$
低温側が得た熱量
$$Q_c=(10070)(70.5−10)=6.09×10^5\ W$$
並流だったらどうなるか
同じ機器、同じ流量で並流にした場合を計算してみます。
$$N_h(1+R_h)=(0.579)(3.92)=2.270 \exp(−2.270)=0.103$$
$$φ_h=\frac{1−0.103}{3.92}=0.229 φ_c=(2.92)(0.229)=0.668$$
$$T_{ho}=90−(0.229)(80)=71.7\ ℃ T_{co}=10+(0.668)(80)=63.4\ ℃$$
$$Q=(29365)(90−71.7)=5.37×10^5\ W=537\ kW$$
| 向流 | 並流 | |
|---|---|---|
| 高温側出口温度 | 69.3℃ | 71.7℃ |
| 低温側出口温度 | 70.5℃ | 63.4℃ |
| 交換熱量 Q | 609 kW | 537 kW |
ε-NTU法との関係 ― 文献を読むときの注意
ここまで説明してきた「温度効率 φ」は、日本の伝熱工学の教科書でよく使われる書き方です。一方、国際的な文献や熱交換器のハンドブックでは ε-NTU法(有効度-NTU法)という書き方が主流です。
両者は同じものですが、基準の取り方が違います。
ε-NTU法の定義
$$ε=\frac{Q}{Q_{max}} Q_{max}=C_{min}(T_{hi}−T_{ci})$$
$$NTU=\frac{UA}{C_{min}} C_r=\frac{C_{min}}{C_{max}}$$
ここで C = m・c(熱容量流量)で、Cmin は両流体のうち小さいほう、Cmax は大きいほうです。向流の場合
$$ε=\frac{1−\exp\left[−NTU(1−C_r)\right]}{1−C_r\exp\left[−NTU(1−C_r)\right]}$$
対応関係
| 条件 | 対応 |
|---|---|
| Rh ≦ 1(高温側が Cmin) | ε = φh、NTU = Nh、Cr = Rh |
| Rh > 1(低温側が Cmin) | ε = φc、NTU = Nh・Rh、Cr = 1/Rh |
先ほどの計算例で確認する
Rh = 2.92 > 1 なので、Cmin は低温側(空気)です。
$$C_{min}=10070\ W/K C_{max}=29365\ W/K$$
$$C_r=\frac{10070}{29365}=0.343 NTU=\frac{17000}{10070}=1.688$$
向流の ε-NTU 式に代入します。
$$NTU(1−C_r)=(1.688)(0.657)=1.109 \exp(−1.109)=0.330$$
$$ε=\frac{1−0.330}{1−(0.343)(0.330)}=\frac{0.670}{0.887}=0.756$$
どちらを使うべきか
実務では ε-NTU法をおすすめします。理由は3つあります。
・ε は必ず 0 〜 1 に収まる。φh は Rh > 1 のとき小さな値しか取らないため、性能の良し悪しが直感的に分かりにくい
・海外メーカーの資料やハンドブックの図表は ε-NTU で書かれていることが多い
・直交流や多パスなど、複雑な流れ形式の関係式は ε-NTU の形で整理されている
日本の教科書で温度効率を学んだ方は、対応表を頭に入れておけば、どちらの文献でも読めるようになります。
向流・並流以外の流れ形式
直交流型やシェルアンドチューブ型(1-2型など)は、純向流でも純並流でもありません。温度差の分布が複雑になるため、上の式はそのままでは使えません。対応方法は2つあります。
方法1:形式ごとの ε-NTU 関係式を使う
流れ形式ごとに ε と NTU、Cr の関係式(または線図)が整理されています。1シェルパス・2チューブパス、両流体非混合の直交流、といった形式ごとに別の式があります。
方法2:対数平均温度差に補正係数 F を掛ける
面積を求める向きの計算なら、向流として ΔTlm を計算し、温度差補正係数 F(1以下)を掛けます。
$$ΔT_m=F・ΔT_{lm}$$
F は流れ形式と、無次元パラメータ P、R から決まります。実務ではこちらのほうがよく使われます。
まとめ
熱交換器の温度効率とNTU法について解説しました。
・出口温度が未知でも、A と U が分かっていれば温度効率から出口温度が計算できます。既設機のレーティングで使います。
・熱容量流量比 Rh と伝熱単位数 Nh(NTU)が鍵になります。
・向流は並流より必ず効率が良い。温度クロスが可能なのは向流だけ。同じ機器でも交換熱量が1割以上変わります。
・日本流の「温度効率 φ」と国際標準の「ε-NTU法」は同じもの。Rh > 1 なら ε = φc です。
・計算したら必ず熱収支で検算してください。
・直交流や1-2型では、形式ごとの関係式か、温度差補正係数 F を使います。
参考文献
- 吉田邦夫・吉田英生 監修『熱交換器ハンドブック』省エネルギーセンター、2005年、I編2.1「熱交換器における伝熱の基礎」(5)温度効率と伝熱単位数 Amazonで見る
- 尾花英朗『熱交換器設計ハンドブック(増訂版)』工学図書、1974年(1994年 2版6刷)、第1部 第3章「表面式熱交換器の基本伝熱式」3・1 向流熱交換器、3・2 並流熱交換器、3・6 単一パスの直交流熱交換器 Amazonで見る
- 日本機械学会『伝熱工学(JSMEテキストシリーズ)』日本機械学会、2023年、第7章「伝熱の応用と伝熱機器」 Amazonで見る
- 相原利雄『伝熱工学(機械工学選書)』裳華房、1994年、第7章「熱交換器」 Amazonで見る
化学プラント大全 
