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総括伝熱係数Uの目安が知りたい
計算する前に規模の当たりをつけたい
そんな悩みを解決します。
・流体の組合せごとの U の概算値一覧
・表を暗記せずに桁を読む方法(律速側で読む)
・概算値を使うときの4つの確認事項

私の仕事は化学プラントの設計です。
実務で実際に使っている当たりの付け方を解説します。
熱交換器の検討で最初にやるべきことは、精密な計算ではありません。桁を掴むことです。
「この条件なら、だいたい30 m2 くらいの機器になる」──この当たりが最初についていれば、据付スペースの目処が立ち、概算コストが出せ、用役の余力を確認でき、メーカーに引き合いを出す準備ができます。逆に、この当たりがないまま詳細計算に入ると、後戻りが大きくなります。
・実務では U を h から積み上げず、まず概算値を引いて桁を掴みます。シェル側の h はメーカー側の設計変数がないと計算できないためです。
・U は熱抵抗が最も大きい側でほぼ決まります。両側の流体を見て、悪いほうを見れば桁が読めます。
・気体が絡むと U は一気に落ちます。液 ─ 液の1/10以下になります。
・概算値は必ず面積基準(外面基準か内面基準か)と汚れの有無を確認して使います。
なぜ概算値から入るのか
大学の演習では、両側の熱伝達率を実験式から計算し、管壁と汚れを足して U を求める、という手順を学びます。原理としては正しい進め方です。しかし実務ではこうしません。理由は3つあります。
① シェル側の h が計算できない
多管式のシェル側は、バッフルに沿って蛇行し、管束を横切り、隙間を漏れる複雑な流れです。h を計算するには、バッフル間隔・バッフル切欠き率・管配列・管ピッチといった情報が要ります。
これらは機器メーカーが決める変数です。ユーザー側は、機器が具体化する前の段階でこれらを持っていません。
② 精度が要らない段階だから
初期検討でほしいのは「30 m2 級か、300 m2 級か」という情報です。U を精密に求めても、汚れ係数の不確かさが数十%あるので、全体の精度はそれで決まってしまいます。
③ 最終的な保証はメーカーが持つ
伝熱性能の保証はメーカーの責任です。ユーザー側の計算は、提案の妥当性を判断するためのものであって、機器を確定させるためのものではありません。
U の概算値一覧(多管式)
以下は多管式熱交換器の目安です。汚れ係数を含んだ設計値、外面基準です。
液体 ─ 液体
| 高温側 ─ 低温側 | U[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 水 ─ 水 | 800 〜 1,500 |
| 水 ─ 有機溶剤(低粘度) | 300 〜 700 |
| 水 ─ 有機液(中粘度) | 150 〜 400 |
| 水 ─ 油(高粘度) | 50 〜 200 |
| 有機液 ─ 有機液(低粘度) | 200 〜 500 |
| 油 ─ 油 | 50 〜 200 |
| 水 ─ 塩水・ブライン | 500 〜 1,000 |
蒸気・凝縮
| 高温側 ─ 低温側 | U[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 水蒸気凝縮 ─ 水 | 1,000 〜 2,500 |
| 水蒸気凝縮 ─ 有機液(低粘度) | 300 〜 900 |
| 水蒸気凝縮 ─ 油(高粘度) | 50 〜 200 |
| 水蒸気凝縮 ─ 気体 | 25 〜 60 |
| 有機蒸気凝縮 ─ 水 | 400 〜 900 |
| 有機蒸気凝縮(不凝縮ガスあり)─ 水 | 100 〜 400 |
蒸発・沸騰
| 高温側 ─ 低温側 | U[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 水蒸気 ─ 水(蒸発) | 1,000 〜 2,500 |
| 水蒸気 ─ 有機液(蒸発) | 400 〜 1,000 |
| 水蒸気 ─ 高粘度液(蒸発) | 100 〜 400 |
気体が絡む場合
| 高温側 ─ 低温側 | U[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 気体(常圧)─ 水 | 20 〜 60 |
| 気体(常圧)─ 気体(常圧) | 10 〜 40 |
| 気体(高圧・10 bar以上)─ 水 | 100 〜 300 |
| 空冷(プロセス液 ─ 空気、フィン付) | 300 〜 700 ※ |
他の形式との比較
| 形式 | 同じ流体組合せでの U の傾向 |
|---|---|
| 多管式 | 基準 |
| プレート式(ガスケット) | 多管式の2 〜 3倍 |
| スパイラル式 | 多管式の1.2 〜 2倍 |
| 二重管式 | 多管式と同等かやや低い |
表を丸暗記しない ― 律速側で読む
これだけの表を覚える必要はありません。次の原理さえ押さえれば、表になくても桁が読めます。
各流体の h の桁を覚える
| 流体の状態 | h の桁[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 気体(常圧、強制対流) | 数十 |
| 高粘度液 | 数百 |
| 低粘度有機液 | 1,000 前後 |
| 水 | 数千 |
| 凝縮・沸騰 | 数千 〜 数万 |
読み方
両側の h のうち、小さいほうを見ます。U はその値よりやや小さい程度に落ち着きます。
例1:水 ─ 水 → h はどちらも数千。汚れと管壁を足して U は1,000前後。表の「800 〜 1,500」と合う
例2:水蒸気凝縮 ─ 気体 → 凝縮側は数千だが気体側は数十。小さいほうが圧倒的に支配。U は数十。表の「25 〜 60」と合う
例3:水蒸気凝縮 ─ 水 → 両方とも数千。U は1,000〜2,500。合う
気体が絡んだら桁が2つ落ちる
最も実務的に重要な感覚がこれです。片側が常圧の気体なら、もう片側がどれだけ良くても U は数十止まりです。液 ─ 液の1/10〜1/50になります。
同じ熱量を交換するのに、伝熱面積は10〜50倍要ることになります。ガスの熱回収装置が巨大になるのは、この理由です。
概算値を使うときの4つの確認事項
① 面積基準を確認する
多管式の U は通常、チューブ外面基準です。内面基準なら値が do/di 倍(2割程度)変わります。
過去実績やメーカー提案と比較するときは、必ず基準を揃えてください。
② 汚れの有無を確認する
概算表の値には汚れを含むものと含まないものがあります。この記事の表は汚れ込みの設計値です。
清浄時の値(Uc)と比べると、汚れ込みの値は2〜5割低くなります。ここを混同すると大きく外します。
③ 粘度を確認する
同じ「有機液」でも、粘度によって h が桁で変わります。表のレンジが広いのはこのためです。
粘度が高いと層流域に入り、流速を上げても h がほとんど改善しません。高粘度側にレンジを取るのが安全です。
④ 条件が表の前提から外れていないか
真空系、極低温、超高圧、スラリー、非ニュートン流体などは、一般的な概算表の前提から外れます。これらは早い段階でメーカーに相談してください。
実務での使い方
手順
1. 熱収支から Q を出す
2. 温度条件から ΔTlm と F を出し、ΔTm を求める
3. 流体の組合せから U の概算値を引く(レンジの中央、または悪いほう)
4. A = Q /(U・ΔTm) で概算面積を出す
5. レンジの上端と下端でも計算し、面積の幅を把握する
メーカー提案を評価するとき
見積書に書かれた U を、この表と突き合わせます。
・レンジ内なら妥当
・レンジより大幅に高いなら、汚れ係数を小さく見ていないか確認する
・レンジより大幅に低いなら、なぜかを聞く(粘度、汚れ、流速の制約など理由があるはず)
U が妥当かどうかを自分で判断できることが、この表を持つ意味です。
まとめ
・実務では U を積み上げずに概算値から入ります。シェル側の h はメーカー側の情報がないと計算できません。
・U は最も大きい熱抵抗(最も小さい h)でほぼ決まります。両側を見て悪いほうを見れば桁が読めます。
・気体が絡むと U は数十に落ちます。液 ─ 液の1/10〜1/50。だからガスの熱交換器は巨大になり、フィンが必要になります。
・概算値を使うときは、面積基準・汚れの有無・粘度・条件の前提を確認します。
・レンジの上下で計算して面積の幅を把握しておくと、メーカー提案を落ち着いて評価できます。
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