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送風機の風量・圧力・軸動力と密度補正|温度・分子量・湿度で何が変わるか

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

同じ「3,000 m³/h」でも、基準状態のNm³/hと吸込状態のm³/hでは、送風機が実際に吸い込む体積が違います。さらに温度、吸込絶対圧力、ガス組成、湿度が変わると密度が変わり、ターボ形送風機の発生圧力と軸動力も変わります。

この記事では、設計条件をどの順で整理し、風量・密度・圧力・軸動力へ換算するかを、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに説明します。対象は主に遠心・軸流などのターボ形送風機です。ルーツブロワーなどの容積形は、吐出量と差圧の決まり方が異なるため、密度比例の説明をそのまま当てはめません。

この記事の結論

  • メーカーへ渡す風量は、基準状態か吸込状態か、WETかDRYかを必ず明記します。
  • 密度計算には温度、絶対圧力、平均分子量、湿度または蒸気分圧、必要に応じて圧縮係数Zを使います。
  • 必要モル流量・質量流量が一定なら、低密度条件ほど吸込実風量が大きくなり、容量側の厳しい条件になりやすいです。
  • 同じ回転速度・実風量点で比べるターボ形送風機では、低圧力比の範囲で発生圧力と軸動力は吸込密度におおむね比例します。
  • 「夏が最大風量、冬が最大動力」と決め打ちせず、温度・圧力・組成・湿度・運転点をケース表で比較します。
  • 法令の制御風速は送風機仕様そのものではありません。適用法令、フード形式、測定位置、ダクト・機器損失を確認して風量と圧力へ落とします。

1. 計算の前に設計条件表を作る

換算式へ数字を入れる前に、最小・常用・最大の条件を一枚にまとめます。風量の基準が曖昧なまま計算すると、式が合っていても選定点がずれます。

項目最小条件常用条件最大条件記載時の注意
吸込温度℃だけでなく計算はKで行う
吸込圧力ゲージ圧ではなく絶対圧力へ直す
ガス組成mol%またはvol%の基準を明記する
平均分子量組成変動があるなら各ケースで計算する
水分・凝縮性蒸気相対湿度、露点、蒸気分圧、WET/DRYを区別する
圧縮係数Z常圧付近の空気では1近似が多いが、高圧・特殊ガスは確認する
要求流量kg/h、kmol/h、Nm³/h、吸込m³/hのどれかを明記する
固定差圧槽内圧、水深、設備間圧力差など
変動圧損ダクト、弁、フィルタ、熱交換器、スクラバーなど

設計条件は一点ではなく範囲で扱います。たとえば停止中に冷えた設備へ低温の空気を通す起動時と、高温のプロセスガスを扱う定常時では、最大軸動力と最大実風量の条件が一致しないことがあります。

2. Nm³/hを吸込状態のm³/hへ換算する

送風機の羽根車が直接扱うのは、吸込口における実体積流量です。同じ量の乾きガスを基準状態Nから吸込状態Aへ換算する基本式は次のとおりです。

基準状態3,000 Nm³/hの乾きガスを、30℃・吸込負圧・相対湿度80%の吸込状態へ換算すると3,463 m³/hの湿り実風量になる図
(一次資料を参考に当サイト作成)

Q_A = Q_N ×(T_A / T_N)×(P_N / P_A)×(Z_A / Z_N)

記号意味単位・注意
Q_N基準状態の体積流量Nm³/h。基準温度・圧力を必ず併記する
Q_A吸込状態の実体積流量m³/h
T絶対温度K=℃+273.15
P絶対圧力kPa(abs)などで統一する
Z圧縮係数理想気体近似では約1

この式は、NとAで追跡しているガス量と組成基準が同じ場合の式です。Nm³の定義は会社・規格・契約条件で20℃を使う場合もあるため、「Nだから0℃」と決めつけず、データシートの基準を確認します。

計算例:3,000 Nm³/h(DRY)を30℃の吸込実風量へ直す

条件を次のようにします。

  • 基準状態:0℃、101.325 kPa(abs)、DRY
  • 吸込状態:30℃、大気圧101.325 kPa、吸込圧力-0.5 kPa(g)
  • 相対湿度:80%
  • 30℃の水の飽和蒸気圧:4.241 kPa

まず吸込絶対圧力と水蒸気分圧を求めます。

P_A = 101.325-0.500 = 100.825 kPa(abs)

p_v = 0.80×4.241 = 3.393 kPa

DRY基準の乾きガス量を、吸込状態のWET体積へ直すので、乾きガス分圧は次の値です。

P_d,A = 100.825-3.393 = 97.432 kPa

したがって、Z=1とすれば、

Q_A,WET = 3,000×(303.15 / 273.15)×(101.325 / 97.432)≒3,463 m³/h

3,000という数字だけを性能曲線へ置くと、実際に必要な吸込容量を約460 m³/h小さく見積もります。吸込温度、吸込負圧、水分の3つを同じ換算へ入れることが重要です。

風量表示の用語、Nm³/h、WET/DRYの読み方はファン・ブロワー・圧縮機の違いで整理しています。

3. 温度・圧力・分子量からガス密度を求める

組成が分かる気体の密度は、次の式で求められます。

ρ = P_abs×M /(Z×R_u×T)

PをkPa、Mをkg/kmol、R_uを8.314 kPa・m³/(kmol・K)、TをKで入れると、ρはkg/m³になります。

密度を上げる方向密度を下げる方向
温度が低い温度が高い
絶対圧力が高い絶対圧力が低い
平均分子量が大きい平均分子量が小さい
空気では水分が少ない空気では水分が多い

混合ガスの平均分子量は、モル分率y_iと各成分の分子量M_iから求めます。

M = Σ(y_i×M_i)

理想気体混合物では、同じ温度・圧力におけるvol%はmol%として扱えます。質量%をそのまま掛けないようにしてください。組成が運転で変わる排ガスや循環ガスでは、最小・常用・最大組成ごとに平均分子量を計算します。

温度だけが変わる場合の見方

0℃、101.325 kPaの乾燥空気を1.293 kg/m³とすると、同じ圧力で35℃では約1.146 kg/m³です。

ρ_35 = 1.293×273.15 / 308.15 ≒1.146 kg/m³

したがって0℃の空気は35℃の空気より約12.8%高密度です。ただし、実機では吸込圧力、湿度、ダンパ、回転速度、運転点も動くため、温度比だけでモータ容量を確定しません。

4. 湿度・WET/DRY・凝縮性蒸気を分けて考える

湿り空気では、水蒸気分圧を全圧から分けて扱います。未飽和なら、

ガス密度が温度・絶対圧力・平均分子量・空気の湿度の4条件で増減する方向を示す図
(一次資料を参考に当サイト作成)

p_v = φ×p_sat(T)

P_d = P_abs-p_v

理想気体近似の湿り空気密度は、乾き空気と水蒸気の密度を足して求められます。

ρ = P_d×M_d /(R_u×T)+p_v×M_v /(R_u×T)

水蒸気の分子量は乾き空気より小さいため、同じ全圧・温度なら湿度が高い空気ほど密度は少し下がります。一方、DRY基準の乾きガス量を一定に保ったまま水蒸気が加われば、送風機が扱うWET実風量は増えます。「湿度で密度が下がる」と「WET総風量が増える」は同時に起こり得ます。

プロセスガスでは、相対湿度だけでなく溶剤蒸気や反応生成物も組成へ含めます。冷却で凝縮する場合は、気体のモル流量・組成・圧力損失が途中で変わるため、入口と出口を一つの密度で代表させず、凝縮計算とドレン処理を別に確認します。

5. 密度が変わると圧力と軸動力はどう変わるか

同じ送風機、同じ回転速度、同じ吸込実風量点で比較するターボ形送風機では、圧力比が小さく効率が大きく変わらない範囲なら、発生圧力と軸動力は吸込密度におおむね比例します。

ΔP_2 ≒ ΔP_1×(ρ_2 / ρ_1)

L_2 ≒ L_1×(ρ_2 / ρ_1)

低圧送風機の空気動力は、実体積流量Qと全圧上昇ΔP_tから、

空気動力 = Q×ΔP_t

軸動力 = Q×ΔP_t / η

と考えられます。Qをm³/s、ΔP_tをPaで入れるとWになります。実際のモータ出力は、最大軸動力、伝動損失、始動・制御条件、メーカーが定める余裕を含めて決めます。

密度比例を使えるのは、同じ形式・回転速度・風量点の補正をする場面です。圧力比が大きいブロワー、冷却を伴う多段機、ルーツブロワーなどへ単純比例を広げず、メーカーのガス補正と性能計算を優先します。

性能曲線上の運転点と効率の読み方は送風機の性能曲線と運転点で確認してください。

6. 最大風量条件と最大軸動力条件を分ける

選定では、最も厳しい条件を一つに決めず、少なくとも容量、圧力、軸動力、材料・温度の4列で比較します。

設計ケース実風量Q密度ρ圧力・軸動力主な確認
高温・低圧・低分子量必要質量・モル流量が一定なら大きくなりやすい小さくなりやすい同じ回転速度・風量点では小さくなりやすい送風機の容量、ダクト流速、所要圧力を出せるか
低温・高圧・高分子量必要質量・モル流量が一定なら小さくなりやすい大きくなりやすい同じ回転速度・風量点では大きくなりやすい最大軸動力、モータ過負荷、起動条件
高湿度・蒸気混入WET総風量は増える場合がある空気では小さくなる組成と運転点で変わるWET/DRY、露点、凝縮、材料
フィルタ目詰まり・設備差圧上昇運転点によって低下ガス条件による必要圧力が増える末期圧損、サージ・最低流量、制御範囲
同じガス量では低密度側で必要実風量が大きく、高密度側で送風機の圧力と軸動力が大きくなるため確認条件を分ける図
(一次資料を参考に当サイト作成)

「夏は容量、冬はモータ」と覚えるだけでは不十分です。要求がフードの実風量なら温度で要求m³/h自体は変わらないことがあります。必要量がkg/hやNm³/hなら温度と圧力で吸込m³/hが変わります。どの量を一定としているかを最初に決めます。

7. 必要圧力は固定差圧と流動抵抗を分けて積算する

送風機が必要とする圧力は、ダクト損失だけではありません。

必要圧力 = 固定差圧+ダクト・局所損失+機器損失+出口損失

種類風量・密度との関係
固定差圧加圧槽・負圧槽との圧力差、曝気水深風量ゼロでも残る。密度比例で補正しない
ダクト・局所損失直管、エルボ、分岐、ダンパ乱流域ではおおむねρQ²に比例する
機器損失フィルタ、熱交換器、スクラバー、サイレンサメーカー曲線、清浄時・末期値、液量などを使う
出口損失大気放出、スタック、ノズル流速と密度、回収できる静圧を確認する

同じダクトで実風量を2倍にすると、流速依存の損失は概ね4倍になります。さらに密度が変われば動圧も変わります。一方、槽内圧や水深は同じ比率では変わりません。全項へ一律の密度比や安全率を掛けないことが重要です。

積算した必要圧力だけで送風機を確定せず、送風機曲線と抵抗曲線の交点、効率、軸動力、許容運転範囲を合わせて確認します。

8. 法規の制御風速を送風機仕様へ落とす

局所排気装置では、まず対象物質、作業、適用法令、フード形式、制御風速の測定位置を確認します。有機溶剤中毒予防規則第16条の表では、囲い式フード0.4 m/s、外付け式フードは側方吸引0.5 m/s、下方吸引0.5 m/s、上方吸引1.0 m/sが示されています。ただし、適用除外や別の要件があり、他の物質・作業へそのまま流用できません。

特に重要なのは、同じ「制御風速」でも位置が違うことです。

フード制御風速の考え方風量計算の注意
囲い式フード開口面の最小風速開口面積×面風速は第一近似になるが、開口ごとの最小値、漏れ、給気、偏流を確認する
外付け式フードから最も遠い作業位置の風速フード開口面積×制御風速では決まらない。発生源までの距離、フランジ、横風、作業動作を含めて捕集風量を設計する
囲い式は開口面、外付け式は最遠作業点で制御風速を確認し、捕集風量と圧力損失から送風機の風量と圧力を決める図
(一次資料を参考に当サイト作成)

したがって、法規値から送風機仕様へは次の順で落とします。

  1. 適用法令と対象作業を確認する
  2. 発生源を囲えるか、外付け式になるかを決める
  3. 制御風速の測定位置で必要な捕集を満たすフード風量を求める
  4. 同時使用フード、ダンパ切替、給気、漏れ込みを系統ごとに整理する
  5. ダクト・処理装置・スタックを含む圧力損失を積算する
  6. 吸込実風量と必要圧力を同じガス条件で性能曲線へ置く
  7. 完成後は所定位置で制御風速、風量、圧力、電流を測定して確認する

「一律10%を漏れ込みとして加える」「可燃性ガスなら常にLELの25%へ希釈する」といった固定係数は使いません。漏れ込み量は設備の開口・シール・負圧・同時操作から見積もり、可燃性ガスの濃度管理は適用法令、危険評価、放出源、換気方式、着火防止・検知・インターロックを含めて個別に設計します。

法令値は改正されるため、設計時点の厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」と所轄・有資格者の確認を優先してください。

9. 現場性能は同じ状態へ補正して比較する

性能確認では、風量と圧力だけでなく、そのときの大気圧、吸込温度、湿度、ガス組成を同時に記録します。メーカー曲線が密度1.2 kg/m³基準なら、実測した圧力と軸動力を密度比で同じ基準へ補正してから比較します。

同時記録する値理由
吸込実風量性能曲線の横軸へ置く
吸込・吐出の静圧または全圧圧力基準と測定位置をそろえる
大気圧・吸込圧力絶対圧力と密度を求める
吸込温度・湿度・露点密度、WET/DRY、凝縮を確認する
ガス組成平均分子量と安全・材料条件を確認する
回転速度・周波数・ダンパ開度別の性能曲線・抵抗曲線へ移っていないか確認する
電流・電力過負荷と軸動力傾向を確認する

吸込直前の曲がり、ダンパ、金網、偏流、旋回流が強いと、測定値とメーカー曲線が対応しないことがあります。測定断面と直管長は計器・規格・メーカーの条件に従います。

10. メーカーへ渡すデータシート

メーカー照会では、次の項目を一組で渡します。

分類記載項目
風量最小・常用・最大、単位、Normal/Actual、基準温度・圧力、WET/DRY
ガス吸込温度・絶対圧力、組成、平均分子量、湿度・露点、ミスト・粉じん、腐食性・毒性・可燃性
圧力吸込・吐出条件、必要静圧または全圧、固定差圧、機器圧損の清浄時・末期値
運転連続・間欠、起動停止回数、並列運転、ターンダウン、ダンパ・ベーン・インバータ制御
機械設置場所、周囲温度、高度、騒音、振動、防爆・電源、材質、軸封、ドレン
保護最大軸動力、モータ余裕、サージ・最低流量、温度・振動・電流監視、インターロック

依頼風量が一つだけでは、メーカーはどの状態の体積か判断できません。「2,000 m³/h」ではなく、「吸込40℃、98 kPa(abs)、WETで2,000 m³/h」のように状態を添えます。

送風機形式の選び方は送風機の種類と特徴、記事群の全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで確認できます。

11. よくある誤り

誤り修正方法
Nm³/hをそのまま性能曲線の吸込m³/hへ置く基準温度・圧力、吸込絶対圧、WET/DRYで換算する
吸込ゲージ圧を気体式へ入れる大気圧を加減して絶対圧力へ直す
空気の分子量28.97を全ガスへ使う組成から平均分子量を計算する
湿度を無視する水蒸気分圧、DRY/WET、露点を確認する
圧力損失の全項へ密度比を掛ける固定差圧と流速依存損失を分ける
冬が最大動力と決め打ちする温度・圧力・組成・運転点のケース表で比較する
制御風速×フード開口面積だけで外付けフードを決める最遠作業点での捕集、距離、横風、フード形状から風量を設計する
一律の余裕率を何段も掛ける各余裕の目的と根拠を分け、過大風量・騒音・電力を防ぐ

12. まとめ

送風機の選定では、風量の数字より先に、その数字が基準状態か吸込状態か、WETかDRYかを決めます。次に温度、絶対圧力、平均分子量、湿度・蒸気分圧、圧縮係数から吸込実風量と密度を求めます。

最大実風量の条件と最大軸動力の条件は一致しないことがあります。容量、必要圧力、軸動力、材料・温度をケース別に比較し、吸込実風量と必要圧力を同じガス条件で性能曲線へ置いてください。

局所排気では、法令の制御風速を送風機仕様と読み替えず、フード形式と測定位置から捕集風量を決め、ダクト・処理装置の圧力損失を加えます。完成後は風量、圧力、温度、気圧、湿度、回転速度、電力を同時に測り、メーカー基準へ補正して確認します。

参考文献

  • 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』PDF p.23–28, 155–157, 171–179  Amazonで見る
  • 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』第3章、PDF p.129–130, 136  Amazonで見る
  • 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』PDF p.143–144(リンクは改訂七版)  最新版をAmazonで見る
  • 日本機械学会『演習伝熱工学』第6章、PDF p.95–96
  • 『化学工学の基礎と計算』PDF p.34–36, 46
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』保安管理技術編、PDF p.397–398
  • 厚生労働省『有機溶剤中毒予防規則』第16条(2026年8月26日確認)
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