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差圧式レベル計のゼロ点|ドライレグ・ウェットレグ・密閉タンク、ゼロ抑制とゼロ上昇の計算

差圧式レベル計のゼロ点のアイキャッチ

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タンクが空なのに、差圧式レベル計が 20% を指している。多くの場合、計器は壊れていません。伝送器がタンクの最低液位より下に付いていて、液がなくても導圧管の液柱の分だけ差圧がかかっているのです。

この「液位ゼロでもかかっている差圧」を測定範囲の下限に入れておくのがゼロ抑制、密閉タンクのウェットレグのように液位ゼロで差圧がマイナスになる場合に下限をマイナス側へずらすのがゼロ上昇です。どちらも、式1本と数値例で確かめられます。

この記事では、「空なのに 20%」が生まれる仕組み、測定範囲の下限と上限の出し方、ゼロ抑制とゼロ上昇の計算例、ドライレグやウェットレグの状態でゼロがずれる向き、現場でゼロ点を確かめるときの注意を説明します。

この記事の結論

  • 差圧式レベル計の差圧は 「高圧側にかかる液柱」−「低圧側にかかる液柱」。密閉タンクの内圧は両側にかかるので打ち消される
  • 伝送器が最低液位より下にあると、液位ゼロでも差圧はゼロにならない。この分を測定範囲の下限に入れるのがゼロ抑制
  • ウェットレグでは低圧側の液柱が大きいので、液位ゼロで差圧がマイナスになる。下限をマイナス側に置くのがゼロ上昇
  • 設定を忘れると、開放タンクやドライレグは空でもプラスの指示、ウェットレグはいつも 0% 以下に張り付く
  • ドライレグに凝縮液が溜まると指示は低く、ウェットレグの液が抜けると指示は高く出る
  • 均圧して差圧をゼロにしても、ゼロ抑制やゼロ上昇を入れた計器は 0% を指さないのが正常。期待値を計算してから確かめる

1. 「空なのに 20%」の正体

計装の教科書にある開放タンクの計算例を使います。測定範囲は液位 0〜1 m、差圧伝送器の受圧部は最低液位より 0.2 m 下、液は水(密度 1,000 kg/m³)です。

空なのに 20% の正体
空なのに 20% の正体

液位ゼロのとき、伝送器の高圧側には、最低液位から伝送器までの 0.2 m の水柱がかかっています。低圧側は大気開放なので、差圧は

  • 液位ゼロ(空):1,000 × 9.8 × 0.2 = 1,960 Pa = 200 mmH2O
  • 液位 1 m(満):1,000 × 9.8 × (1 + 0.2) = 11,760 Pa = 1,200 mmH2O

です(教科書の換算どおり 9.8 Pa = 1 mmH2O)。正しい測定範囲は 200〜1,200 mmH2O になります。

ここで、伝送器を交換したときなどに、液の高さの分だけを見て測定範囲を 0〜1,000 mmH2O と設定してしまったとします。空のときの 200 mmH2O は、この範囲の 20% に当たります。タンクが空なのに 20%(4〜20 mA 信号なら 7.2 mA)を指すのは、こうして起きます。満液のときは 120% に当たり、指示は上限に振り切れます。

逆に、伝送器の位置が最低液位と同じ高さなら、この 200 mmH2O は生まれません。ゼロ点のずれは、伝送器と最低液位の高さの差で決まる、というのが最初の要点です。

2. 式は1本|高圧側の液柱 − 低圧側の液柱

計装の教科書は、開放タンク、密閉タンクのドライレグ、ウェットレグを別々の式で説明していますが、まとめると次の1本です。

ΔP = ρ1 g (h + H1) − ρ2 g H2

記号意味
ΔP伝送器の差圧(高圧側 − 低圧側)[Pa]
ρ1タンクの液の密度[kg/m³]
h最低液位から測った液位[m]
H1伝送器の受圧部から最低液位までの高さ[m]
ρ2、H2ウェットレグに満たした液の密度と、その液柱の高さ[m]

使い分けは次のとおりです。

タンクと導圧管低圧側にかかるもの式の第2項
開放タンク大気圧だけ0
密閉タンク・ドライレグタンクの内圧(乾いた導圧管で導く)0(内圧は両側にかかるので打ち消される)
密閉タンク・ウェットレグタンクの内圧 + レグの液柱ρ2 g H2

液位ゼロ(h = 0)のときの ΔP が、測定範囲の下限です。これがプラスならゼロ抑制、マイナスならゼロ上昇を設定します。上限は、最高液位のときの ΔP です。測定範囲の幅(スパン)は、どの方式でも ρ1 g × 最高液位 で、H1 や H2 には左右されません。ゼロ抑制やゼロ上昇は、幅を変えずに範囲全体を平行に動かす設定です。

3. ゼロ抑制の計算|開放タンクとドライレグ

開放タンクとドライレグでは第2項が 0 なので、液位ゼロでも ρ1 g H1 の差圧が残ります。「空なのに 20%」の例では、

  • 下限(液位ゼロ):200 mmH2O
  • 上限(液位 1 m):1,200 mmH2O

と設定します。これで空のとき 0%、満のとき 100% になります。「下限を 0 から持ち上げる」ので、ゼロ抑制(サプレッション)と呼びます。化学装置の便覧も、差圧発信器を液面計に使うときのエレベーション/サプレッションを、仕様書に書く測定上の要求として挙げています。

密閉タンクのドライレグでも、タンクの内圧は高圧側にも低圧側にもかかるので打ち消され、計算は開放タンクと同じになります。内圧がいくら変わっても、ドライレグが乾いている限りゼロ点は動きません。

液が水でなければ、ρ1 をその液の密度にするだけです。密度が変わる液では、密度が設計値より小さくなると同じ液位でも差圧が下がり、指示は低く出ます。教科書は、高い精度が要るときの密度補正の式も示しています。

4. ゼロ上昇の計算|ウェットレグ

蒸気のように低圧側の導圧管で凝縮しやすい気相では、低圧側をあらかじめ液で満たしておくウェットレグにします。低圧側には、タンクの内圧に加えてレグの液柱 ρ2 g H2 がかかります。

ウェットレグは空で差圧がマイナス
ウェットレグは空で差圧がマイナス

さきほどと同じタンク(液位 0〜1 m、H1 = 0.2 m、水)に、水で満たしたウェットレグを付け、伝送器からレグ上端までの液柱の高さ H2 を 1.5 m とします。

  • 下限(液位ゼロ):1,000 × 9.8 × 0.2 − 1,000 × 9.8 × 1.5 = −12,740 Pa = −1,300 mmH2O
  • 上限(液位 1 m):1,000 × 9.8 × 1.2 − 1,000 × 9.8 × 1.5 = −2,940 Pa = −300 mmH2O

測定範囲は −1,300〜−300 mmH2O です。全域がマイナスですが、液位が上がれば差圧は −1,300 から −300 へ増えていくので、向きは正しく出ます。下限をゼロよりマイナス側へずらす設定なので、ゼロ上昇(エレベーション)と呼びます。

このゼロ上昇を入れ忘れて 0〜1,000 mmH2O のままにすると、差圧はいつもマイナスなので、液位が動いても指示は 0% 以下に張り付いたままです。ウェットレグのレベル計が「まったく動かない」ときは、まず測定範囲の設定を疑います。

5. レグの状態でゼロがずれる向き

式の第2項を見ると、導圧管の中身が変わったときに指示がどちらへずれるかが分かります。

レグの中身で指示がずれる向き
レグの中身で指示がずれる向き
起きたこと低圧側の圧力指示
ドライレグに凝縮液が溜まる液柱の分だけ上がる低く出る
ウェットレグの液が抜ける(漏れ・蒸発)液柱の分だけ下がる高く出る
高圧側の導圧管に気泡が溜まる高圧側の液柱が減る低く出る
タンクの液の密度が下がる―低く出る

ドライレグの低圧側にはドレンポットを付け、溜まった液を抜きます。ウェットレグは液が減ると指示が上がるので、実液位より高い指示で制御すると、実際のタンクは下がっていくことになります。高液位の警報が出ているのに液面計のガラスでは液が少ない、というときは、ウェットレグの液抜けを疑います。

ボイラ飽和水のように、液相側と気相側の取出し口の間に連通管を設けておくと、液相側に混入した気相や気相側に溜まったドレンを抜くのに便利だと、計装メーカーの実務書は書いています。

ダイアフラムシール形では、封入液がウェットレグの役をします。封入液の高低差 1 m で約 10 kPa の差圧がゼロ点に加わり(導圧管の記事で扱いました)、さらに周囲温度で封入液の密度が変わるとゼロが動きます。実務書の補正の式に当てはめると、一般的なシリコーン系の封入液で、シールの高低差 2 m、スパン 20 kPa の計器なら、周囲温度が 10℃ 変わるだけで約 0.7% ずれます。最近の伝送器にはこれを自動で補正する設定があります。

6. ゼロ点を確かめるときの注意

差圧伝送器のゼロ点は、3バルブマニホールド(スリーバルブ)で高圧側と低圧側を均圧し、運転中の圧力のまま差圧をゼロにして確かめることができます。計装メーカーの実務書は、スリーバルブを決められた手順で開閉しないと伝送器に過大圧がかかると注意しています。そしてレベル計では、差圧ゼロは「液位ゼロ」ではありません。

  • ゼロ抑制を入れた計器(「空なのに 20%」の例、200〜1,200 mmH2O):差圧ゼロは範囲の −20% に当たり、指示は 0% を下回って振り切れる
  • ゼロ上昇を入れた計器(ウェットレグの例、−1,300〜−300 mmH2O):差圧ゼロは範囲の 130% に当たり、指示は 100% を上回って振り切れる

どちらも故障ではありません。均圧したときに何 % を指すはずかを、式で先に計算しておくのが確かめ方の基本です。均圧や元弁の操作は測定値と制御を乱すので、制御ループは手動に切り替え、計装担当の手順どおりに行います。

もう一つの確かめ方は、実際の液位と突き合わせることです。タンクが空になる停止時や、レベルゲージ(ガラス管)が付いているタンクでは、その値と DCS の指示を比べます。計装メーカーの実務書は、日常点検の項目として、配管部と漏れの点検、配管内のドレンやガス抜き、ゼロ点の点検を挙げています。

7. 現場で見る場所

  1. 伝送器と最低液位の高さの差:P&ID や計器仕様書の測定範囲と、実物の取付け位置が合っているか。伝送器を付け替えていないか
  2. 低圧側の導圧管:ドライレグかウェットレグか。ドレンポットの位置と、最後に抜いた日
  3. ウェットレグの液量:レグ上端のポット(凝結槽)に液があるか。漏れの跡はないか
  4. 測定範囲の設定:下限がプラス(ゼロ抑制)か、マイナス(ゼロ上昇)か。導圧管の方式と合っているか
  5. レベルゲージとの突き合わせ:DCS の値と現場のガラス管の値。差が一定なら設定、変動するならレグの中身を疑う
  6. ダイアフラムシールのキャピラリ:日向と日陰に分かれていないか。朝夕で指示が動かないか

8. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. 開放タンクで、伝送器が最低液位より 0.2 m 下にある。水なら、液位ゼロのときの差圧は何 mmH2O ですか。
  2. ウェットレグのレベル計で、レグの液が漏れて減った。指示は高く出ますか、低く出ますか。
  3. ゼロ上昇を入れたレベル計を均圧したら、指示が 100% を超えて振り切れた。故障ですか。

答えは順に、200 mmH2O/高く出る(低圧側の液柱が減るので差圧が増える)/故障ではない(差圧ゼロは範囲の上限より上に当たる)、です。

まとめ

差圧式レベル計の差圧は「高圧側の液柱 − 低圧側の液柱」の1本の式で決まり、密閉タンクの内圧は両側にかかって打ち消されます。伝送器が最低液位より下にあれば、液位ゼロでも差圧が残るのでゼロ抑制を、ウェットレグで液位ゼロの差圧がマイナスならゼロ上昇を設定します。「空なのに 20%」は、このゼロ抑制を入れ忘れた典型です。

ドライレグに液が溜まれば指示は低く、ウェットレグの液が抜ければ指示は高く出ます。均圧して確かめるときは、差圧ゼロが範囲の何 % に当たるかを先に計算し、ループを手動にしてから行ってください。

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参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 2.4.2「液圧式レベル計」(開放タンク、密閉タンクのドライレグ・ウェットレグ、密度補正、差圧計算例)  Amazonで見る
  • 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅱ 4.3「液位測定」、8.2「ダイアフラムシール形レベル計伝送器用の連通管」、8.4「ダイアフラムシール形レベル計伝送器の周囲温度影響対策」、9.1「日常点検」、11.2(2)「スリーバルブレス計装」
  • 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版 7/8』丸善, 21「計測制御装置」(計器選定の要求機能)  Amazonで見る
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