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アラーム管理の基本|PH・PL・HH・LL、アラームが多すぎる問題、優先度、鳴ったら何をするか

アラーム管理の基本のアイキャッチ

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アラームは、プロセスの値が正常な範囲を外れたことを運転員に知らせ、対応を求めるものです。上限(PH)を超えた、下限(PL)を割った、さらに上上限(HH)や下下限(LL)に達した、というように段階があります。

問題は、アラームが多すぎることです。異常が1つ起きると関連する警報が一斉に鳴り、本当に対応すべき警報が埋もれます。プロセス安全の教科書は、異常発生時に複数のアラームが同時に発報して運転員の対応能力を超えることを指摘し、重要度の階層化と表示・音の区別を求めています。

この記事では、アラームの段階と種類、重要度の考え方、アラームの洪水がなぜ起きるか、鳴ったときに何をするか、そしてアラームを一時的に止めるときの決まりを説明します。

この記事の結論

  • アラームには PH(上限)・PL(下限)・HH(上上限)・LL(下下限)・偏差・機器異常 などの種類があり、段階で危険度が違う
  • 重要度は 「管理限度を超えただけで急がないもの」と「直ちに対処が必要なもの」 に分け、音と表示を変える
  • 異常時はアラームが連鎖して同時に多発する。時刻順に最初の警報を探すのが対応の第一歩
  • アラームは「設計時に発生を最小限に抑える」のが理想だが、既設プラントでは 発報した中から必要なものを取捨選択して監視する仕組みが要る
  • アラームを一時的に無効にするときは、誰が承認したか・代替の監視方法・いつ戻すかを決め、運転員全員に分かるようにする
  • 現場計器を運転員がたまたま見て気づくのは安全対策に数えない。計器室で発報するアラームだけが異常検知の安全対策

1. アラームの段階と種類

DCS のアラームは、1つのタグに複数の設定値を持たせます。代表的なものを表にします。

警報の段階と役割
警報の段階と役割
記号名前意味
PH上限警報(High)測定値が上限を超えた。運転上の管理限度
PL下限警報(Low)測定値が下限を割った
HH上上限警報(High-High)さらに高い。多くは安全計装や自動停止の直前
LL下下限警報(Low-Low)さらに低い
DV偏差警報設定値と測定値の差が大きい。制御が追いついていない
機器異常バッド、断線、通信異常測定値そのものが信用できない

PH と HH の2段階にする理由は、PH で運転員に手当ての時間を与え、HH で自動的に安全側へ動かすためです。PH が出た段階で対応すれば HH に至らない、というのが設計の意図です。PH の設定値は運転上の管理限度、HH の設定値は機器や安全の限界から決めます。

高圧ガス保安技術の教科書は、警報を「運転上の管理限度を超えただけで急いで対処する必要のないもの」と「プラント運転に重大な影響があり直ちに対処する必要があるもの」に分け、ブザーやベルの音色、ランプの配列・色を変える、と説明しています。DCS では、これが重要度(優先度)の設定になります。

2. アラームは連鎖する

1つの異常は、多くのアラームを生みます。たとえば蒸気の供給圧力が下がると、リボイラの熱量が下がり、塔底温度が下がり、塔頂の組成がずれ、還流ドラムの液面が動き、製品の分析計が異常を出します。ものの数分で、10 個以上のアラームが鳴ります。

1つの異常が、アラームを連鎖させる
1つの異常が、アラームを連鎖させる

このとき運転員が見るべきは、最初に出たアラームです。アラームサマリを時刻順に並べ、いちばん古いものが原因に最も近い。あとのアラームは結果です。

DCS の歴史を書いた技術解説は、欧州のユーザー団体がまとめたアラーム設計のガイダンスを引いて、「アラームは設計時点で発生を最小限に抑えることでアラームの洪水を防ぐ」のが本来だが、既設プラントでは設計からやり直すのは困難なので、「発報した全アラームから必要なものだけを取捨選択して監視する」発想が要ると書いています。DCS のアラーム管理機能は、この取捨選択(フィルタリング、カテゴリ分け、原因と対処のガイダンス表示)を助けるためのものです。

3. スタートアップ時のアラーム多発

起動時や停止時は、プロセスが通常の運転範囲にないので、アラームが大量に出ます。液面が空のタンクは LL、温度が上がる前の塔は PL、といった具合です。これらは「異常」ではなく「まだ通常運転に達していない」だけです。

高圧ガス保安技術の教科書は、近年の DCS が「緊急およびスタートアップ時などの非定常時に警報が一時的に多発することを抑止」する機能を持つと説明しています。起動時に特定のアラームを一時的に抑制する設定です。

ただし、抑制したアラームは必ず起動完了時に戻す必要があります。戻し忘れると、通常運転中に本物の異常が起きても警報が出ません。

4. アラームが鳴ったら何をするか

  1. 確認(アクノリッジ)する:鳴っていることを認識した、と DCS に伝える。音が止まる。これは「対応した」ではなく「見た」の意味
  2. どのタグか、どの段階か(PH か HH か)を見る
  3. フェースプレートとトレンドで、値がどう動いているか、いつからかを見る
  4. 関連するアラームを時刻順に見て、最初のものを探す
  5. 手順書に従って対応する。重要度の高いアラームには、対応手順が決まっているのが普通
  6. 対応と結果を記録する

「確認して音を止めただけで、対応した気になる」のが最も危険な習慣です。確認は見たことの宣言で、対応はそのあとです。

5. アラームを一時的に止めるとき

計器の校正や設備の点検で、アラームを一時的に無効にすることがあります。プロセス安全の入門書は、新任のエンジニアでもアラームの無効化を承認する権限を持つことがあるとしたうえで、手順書に次を含めるよう求めています。

アラームを止めている間にすること
アラームを止めている間にすること
  • 域内でどのアラームが無効化されているかが、運転員に分かる方法(一覧表、画面の表示、引継ぎ簿)
  • 代替のプロセス監視方法を決めて、運転員に通知する
  • できるだけ早く正常に戻す要件。安全に関わる警報なら、停止している間の補償措置(リスクを上げないための代替手段)を明示する

無効化は「便利だから」ではなく「必要な期間だけ、代わりの監視を用意して」行うもので、戻し忘れは事故の典型的な原因です。交代のたびに無効化一覧を確認します。

6. アラームは安全対策として数えられるか

HAZOP(危険源の系統的な検討)では、異常を検知する手段があるかを確認します。プロセス安全の教科書は、計器室のボードやパネルで警報を発報する計器は異常検知の安全対策と考えるが、運転員がたまたま異常を発見する場合や、現場型計器(現場圧力計・現場温度計)は安全対策と考えないとしています。定期パトロールで現場計器のチェックが日常作業に組み込まれていれば、現状の対策とみなします。

つまり、アラームは「鳴れば運転員が対応できる」ことが前提の安全対策です。鳴っても誰も対応しない、多すぎて埋もれる、無効化されたままになっている、という状態では、安全対策として機能していません。アラームの発報からハザードに至るまでの時間が短い場合は、運転員の対応では間に合わないので、安全インターロックで自動的に止める設計にします(DCS と SIS の役割分担の記事)。

7. 現場で見る場所

  1. アラームサマリの件数:通常運転中に常時何件も残っていれば、設定値か抑制の見直しが要る(慢性アラーム)
  2. 無効化されているアラームの一覧:交代ごとに確認。いつ、誰が、なぜ、いつまで
  3. PH と HH の設定値:PH で対応する時間があるか。PH と HH が近すぎれば手当ての時間がない
  4. 対応手順:重要度の高いアラームに手順書があるか、自分がそれを言えるか

8. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. PH と HH は、どう役割が違いますか。
  2. アラームが一斉に鳴ったとき、最初に探すのはどれですか。
  3. アラームを一時的に無効にするとき、決めておくべき3つのことは何ですか。

答えは順に、PH は運転員が手当てする段階、HH は自動的に安全側へ動く直前の段階/時刻順で最初に出たアラーム/誰が承認したか、代替の監視方法、いつ戻すか(安全警報なら補償措置も)、です。

まとめ

アラームには PH・PL・HH・LL・偏差・機器異常などの段階と種類があり、重要度で音と表示を分けます。異常時はアラームが連鎖して多発するので、時刻順に最初の警報を探し、確認と対応を区別します。既設プラントでは発報した中から必要なものを取捨選択する仕組みが要ります。

アラームを一時的に無効にするときは、承認者・代替の監視・戻す期限を決め、運転員全員に分かるようにします。計器室で発報するアラームだけが異常検知の安全対策として数えられ、鳴っても対応できない状態では機能していません。

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参考文献

  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』, 11.8.6「安全計装」d) 警報システム  最新版をAmazonで見る
  • 安全工学会監修『実践・安全工学シリーズ2「プロセス安全の基礎」』化学工業日報社, 第3章 4-1「運転対応安全」、6「ヒューマンファクター」、第6章 3-5「安全対策の評価と改善策の検討」  Amazonで見る
  • CCPS 編、化学工学会安全部会訳『若い技術者のためのプロセス安全入門』丸善出版, 7.4「操業の遂行」アラームの無効化と管理  Amazonで見る
  • 中原正俊「進化するDCS、その歴史と将来」紙パ技協誌, 第61巻第3号 (2007)
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