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配管応力の基礎|一次応力と二次応力は何が違うか

配管応力の基礎|一次応力と二次応力は何が違うか

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配管応力解析の結果を見ると、「一次応力」「二次応力」「持続荷重」「変位応力」「応力範囲」という言葉が並びます。どれも単位はMPaですが、同じ意味の数字ではありません。

内圧や重量による応力は、荷重がかかり続ける限り残ります。一方、熱膨張を拘束して生じる応力は、配管が局部的にたわんだり塑性変形したりすると再配分されます。ただし、自己制限するから安全という意味ではなく、起動・停止を繰り返せば疲労損傷が蓄積します。

一次応力は主に崩壊を防ぐため、二次応力は主に繰返しによる疲労を防ぐために評価します。発生原因と破損のしかたが違うため、同じ許容値でまとめて判定してはいけません。

この記事では、両者の違いを配管設計の実務に結び付け、どの荷重ケースを確認し、解析結果の何を見るべきかを説明します。

1. まず「荷重が残るか、変位が決まるか」で分ける

配管へ生じる応力は、発生原因と評価目的で整理すると理解しやすくなります。

圧力重量による持続荷重、風地震による一時的荷重、熱膨張や支持沈下による変位荷重、継手や分岐の局部ピークを比較した図
圧力重量による持続荷重、風地震による一時的荷重、熱膨張や支持沈下による変位荷重、継手や分岐の局部ピークを比較した図(一次資料を参考に当サイト作成)
区分主な原因荷重・変位の性質主に防ぐもの
一次応力内圧、配管・流体・保温材の重量、外力荷重制御。荷重が残る限り応力も必要全断面降伏、大変形、崩壊
一時的な荷重の応力風、地震、安全弁反力など荷重制御だが作用時間・頻度が限定的過大変形、支持部損傷、崩壊
二次応力熱膨張の拘束、機器ノズル移動、支持部沈下変位制御。所定変位へ達すると再配分する繰返し塑性、低サイクル疲労
局部ピーク応力溶接止端、分岐、形状不連続などごく狭い範囲に集中疲労き裂の発生

この表は考え方をつかむための整理です。適用規格では、持続荷重、偶発荷重、変位応力範囲などの計算ケースと許容値が個別に定められます。地震の扱いや疲労評価の要否も、設計コード、法令、顧客仕様、重要度で変わります。

「熱ではないから一次応力」「一時的だから無視してよい」という分け方は誤りです。荷重の発生原因、継続時間、繰返し回数、規格上の計算ケースを一組で確認します。

2. 一次応力は荷重を支えるために必要な応力

一次応力は、外から加えられた力やモーメントと釣り合うために、配管断面へ必要となる応力です。代表例は次のとおりです。

  • 内圧による円周方向応力と長手方向応力
  • 配管、流体、保温材、弁などの重量による曲げ応力
  • ベローズや閉止端に作用する圧力推力
  • 外部から配管へ加わる持続的な力・モーメント

荷重が一定であれば、断面はその荷重と釣り合う内力を持ち続けなければなりません。断面の広い範囲が降伏しても荷重は消えず、剛性が低下した部分へさらに変形が集中すると、大きな塑性変形や崩壊へ進むおそれがあります。この意味で一次応力は「自己制限しない」と説明されます。

一定荷重を支え続ける一次応力と、所定変位でひずみ増加が止まる二次応力を同じ尺度で比較した模式図
一定荷重を支え続ける一次応力と、所定変位でひずみ増加が止まる二次応力を同じ尺度で比較した模式図(一次資料を参考に当サイト作成)

たとえば、長い支持間隔でたわむ配管にサポートを追加すれば、重量による曲げ応力を小さくできます。内圧による応力が大きければ、適用規格に基づき、必要肉厚、材料、設計圧力・温度、腐れ代、製造公差を見直します。

ただし、対策を一つの荷重だけで決めてはいけません。肉厚を増やすと内圧応力は下げやすい一方で、配管重量と曲げ剛性が増えます。サポートを増やすと重量たわみは減りますが、熱移動を拘束する配置なら二次応力と機器ノズル反力を増やします。

一次応力の対策は「強くする」だけでなく、荷重経路を短くする、重量を確実に支持する、不要な外力を入れない、という順で考えます。

3. 二次応力は拘束された変位から生じる

温度が上がった配管は、拘束がなければ自由に伸びます。伸び量は前の記事「配管は温度でどれだけ伸びるか」で説明したとおり、材料の線膨張係数、温度差、長さで決まります。

両端を固定すると、自由に伸びるはずだった変位を出せません。その連続性を保つために生じるのが、熱膨張による二次応力です。熱以外にも、次のような強制変位が原因になります。

  • 機器本体の熱膨張によるノズル移動
  • 接続する建屋・機器間の相対変位
  • 支持構造の沈下や据付誤差
  • アンカー、ガイド、ストッパの拘束
  • 条件により、地震時の支持点間相対変位

二次応力では、先に「どれだけ動かされるか」が決まっています。局部的に降伏して剛性が下がると、応力は周囲へ再配分されます。配管全体の変位が所定値へ達すれば、一次応力のように荷重が変形を際限なく進めるわけではありません。これが自己制限性です。

しかし、自己制限性には重要な条件があります。

二次応力が自己制限するのは、一回の変位に対する応力の再配分です。起動・停止のたびに同じ変位が往復すれば、塑性ひずみの繰返しや疲労き裂を起こし得ます。

したがって、熱膨張の対策では単に肉厚を増やすのではなく、配管ルートをたわみやすくする、アンカーとガイドの役割を整理する、ノズル移動をモデルへ入れるなど、強制変位を無理なく吸収する方向で検討します。

4. 熱膨張は最大応力ではなく「応力範囲」で見る

常温から運転温度まで上がると、配管の熱変位と応力が増えます。停止して常温へ戻ると、応力の向きが反転することがあります。疲労に効くのは、一つの状態における応力の絶対値だけではなく、繰返し中に経験する最大値と最小値の差です。この差を応力範囲として評価します。

停止、運転モードA、運転モードB、洗浄の各状態を行き来するときの応力範囲を示し、最大範囲が常温と最高温度の組合せとは限らないことを示す図
停止、運転モードA、運転モードB、洗浄の各状態を行き来するときの応力範囲を示し、最大範囲が常温と最高温度の組合せとは限らないことを示す図(一次資料を参考に当サイト作成)

起動・停止回数が多いほど、同じ応力範囲を経験する回数も増えます。運転中に温度がほぼ一定でも、バッチ運転、再生、スチームアウト、デコーキング、待機系への切替えがあれば、それぞれが別の温度状態になります。

複数の運転モードがある系では、各モードを停止状態とだけ比較すると不十分な場合があります。たとえばモードAで分岐Aが高温、モードBで分岐Bが高温になり、変形方向が反対になる系では、AとBの間の応力範囲が最大になることがあります。

確認する状態の例は次のとおりです。

  • 据付・停止状態
  • 通常運転の最低負荷と最高負荷
  • 起動、停止、待機、切替え状態
  • 再生、蒸気洗浄、加熱・冷却操作
  • 設計上成立する異常時または一時運転
  • 機器ごとに温度上昇の時刻がずれる過渡状態

「最高温度のケースを一つ計算したから熱応力は確認済み」とは限りません。成立し得る状態を洗い出し、状態と状態の組合せで最大の応力範囲を探します。

摩擦、すき間、片効きストッパ、ばね、非線形挙動を含むモデルでは、単純に二つの計算結果の最大値を引くだけで正しい範囲にならないことがあります。適用する解析方法と設計コードに従い、荷重履歴も含めて評価します。

5. 持続・運転・偶発・変位の計算ケースを混同しない

配管応力解析では、同じモデルから複数の荷重ケースを作ります。名称や組合せ式は設計コードとプロジェクト仕様で異なりますが、役割はおおむね次のように整理できます。

計算ケース主な荷重主な確認対象
持続荷重重量、内圧、その他の持続力一次応力、常時支持荷重
運転状態持続荷重、温度、支持条件、機器変位実際の変位、支持荷重、ノズル荷重
偶発荷重持続荷重に風、地震、安全弁反力などを組み合わせる一時的な応力、支持・拘束荷重
変位応力範囲二つの温度・変位状態の差二次応力の範囲、疲労に対する規格判定

運転状態の応力表示だけを見て合否を決めると、持続荷重の不足、最大変位範囲、ノズル荷重のどれかを見落とします。逆に、コード応力比が小さくても、配管の移動量がサポートから外れる、ばねの作動範囲を超える、フランジや機器ノズルへ過大な反力を与える場合があります。

配管応力解析の合格は「応力比が1.0以下」だけではありません。応力、変位、支持荷重、機器ノズル荷重、局部部位、すべての運転状態を確認して初めて成立します。

ASME B31.3はプロセス配管について、材料・部品、設計、製作、組立て、検査、試験までを扱います。本記事作成時点でASMEが案内する現行版は2024版です。ただし、実案件では契約書や法令が指定する版を優先し、最新版を自動的に適用すればよいとは限りません。

6. 解析モデルへ入れる情報と、結果から戻る場所

配管応力解析は、配管中心線を入力して色付きの応力図を出すだけの作業ではありません。拘束条件を一つ誤ると、荷重の流れそのものが変わります。

配管形状、材料温度圧力、重量、機器変位、支持条件、運転モードを入力し、応力変位支持荷重ノズル荷重を確認して設計へ戻す流れ
配管形状、材料温度圧力、重量、機器変位、支持条件、運転モードを入力し、応力変位支持荷重ノズル荷重を確認して設計へ戻す流れ(一次資料を参考に当サイト作成)

解析へ入れる主な情報

  • 配管中心線、管径、肉厚、材質、継手・分岐形状
  • 据付温度、運転温度、最低・最高温度、温度分布
  • 設計・運転圧力、流体・保温材・弁などの重量
  • 機器ノズルの位置、剛性、許容荷重、機器本体の熱移動
  • アンカー、ガイド、ストッパ、レスト、ハンガの拘束方向
  • 摩擦係数、すき間、片効き、ばね定数、冷間・熱間荷重
  • 風、地震、安全弁反力、ウォーターハンマーなど必要な外力
  • 応力集中係数、フレキシビリティ係数、疲労評価条件
  • 起動・停止回数と複数運転モード

結果で確認する主な項目

  • 持続、偶発、変位応力範囲の規格判定
  • 熱時・冷時の配管変位とサポートからの外れ
  • アンカー、ガイド、ストッパ、ハンガの荷重
  • ポンプ、圧縮機、タービン、熱交換器などのノズル荷重
  • フランジ、分岐、溶接部、小径管などの局部的な弱点
  • 解析結果と現場で想定する移動方向の整合

結果が不合格なら、原因となる荷重へ戻って対策します。重量が支配するなら支持点、熱変位が支配するならルートと拘束、ノズル荷重が支配するなら接続部近傍の柔軟性と機器移動を見直します。

7. 一次応力と二次応力で対策を取り違えない

よくある対策の取り違えを整理します。

変更案改善しやすいもの悪化し得るもの
肉厚を増やす内圧による応力、局部強度重量、曲げ剛性、熱反力、ノズル荷重
サポートを追加する重量たわみ、振動熱移動の拘束、サポート反力
アンカーを追加する移動範囲の分割、荷重経路の明確化アンカー反力、熱応力、機器荷重
ループ・オフセットを設ける熱変位吸収、ノズル反力スペース、重量、ドレン、振動・地震時挙動
コールドスプリングを行う特定運転状態の反力・変位施工管理の難しさ。応力範囲そのものは基本的に減らない

コールドスプリングは、据付時に配管へあらかじめ変位を与えて、運転時と停止時の反力を配分する方法です。特定状態の反力を下げる効果はありますが、温度状態間の全変位が変わらなければ、疲労を支配する応力範囲は基本的に変わりません。施工誤差を含めた管理が必要です。

解析の数値を下げることではなく、どの荷重をどこへ流し、どこを動かし、どこを守るかを決めることが配管応力設計です。

8. 詳細解析へ進む判断

簡易計算や経験則だけで終えず、適用規格と社内基準に基づいて詳細解析の要否を判断します。とくに次の系統は注意が必要です。

  • 高温・低温で総熱変位が大きい
  • 大口径、厚肉、短い曲がり脚などで配管が硬い
  • ポンプ、圧縮機、タービン、薄肉機器などへ接続する
  • 複数の運転モード、蒸気洗浄、再生操作がある
  • ラック主管と機器分岐の温度が大きく異なる
  • ばね支持、コンスタントハンガ、伸縮継手を用いる
  • 地震、風、安全弁反力、脈動、ウォーターハンマーを考慮する
  • FRP、樹脂ライニング、ガラスライニングなど脆弱・非金属部を含む
  • 分岐、小径管、疲労上重要な溶接部が多い

解析を外注する場合も、入力条件と荷重ケースを設計側が決めます。「通常運転温度だけ渡して解析会社に任せる」と、切替え、待機、洗浄、機器移動がモデルから抜けます。

9. 設計レビューで使う確認表

  • [ ] 内圧・重量・温度・外力を同じ応力として扱っていないか
  • [ ] 持続荷重、偶発荷重、変位応力範囲のケースを分けたか
  • [ ] 据付、停止、通常運転、切替え、洗浄などの状態を洗い出したか
  • [ ] 複数モード間の最大応力範囲を確認したか
  • [ ] 機器ノズルと支持構造の熱移動をモデルへ入れたか
  • [ ] アンカー、ガイド、ストッパの拘束方向、すき間、片効きを確認したか
  • [ ] 応力だけでなく、変位、支持荷重、ノズル荷重も確認したか
  • [ ] 肉厚増加やサポート追加が熱反力を悪化させないか
  • [ ] 解析モデルの変形方向が現場の動きと整合するか
  • [ ] 適用規格、版、顧客仕様、社内基準を記録したか

まとめ

  • 一次応力は内圧や重量などの荷重と釣り合うために必要で、荷重が残る限り自己制限しない
  • 二次応力は熱膨張や支持点移動などの強制変位から生じ、局部降伏によって再配分する
  • 二次応力は自己制限しても、起動・停止の繰返しによる疲労を無視できない
  • 熱膨張は一つの運転状態の最大応力ではなく、状態間の応力範囲で評価する
  • 複数運転モードでは、停止状態との比較だけでなくモード間の最大範囲を確認する
  • 応力解析では応力比に加え、変位、支持荷重、機器ノズル荷重、局部部位を確認する
  • 肉厚増加やサポート追加は、一次応力を改善しても二次応力・反力を悪化させることがある

一次応力と二次応力の違いは、名前ではなく「何が支配しているか」です。荷重が支配するなら荷重経路と強度を、変位が支配するなら動きと繰返しを確認します。

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参考文献

  • 西野悠司『絵とき 配管技術 基礎のきそ』第3章「配管の熱膨張応力」 Amazonで見る
  • 西野悠司『そうか!わかった!プラント配管の原理としくみ』第2章・第4章 Amazonで見る
  • 西野悠司『配管設計実用ノート』第6章「適切に配管フレキシビリティをとる」 Amazonで見る
  • 化学工学会編『プロセス機器構造設計シリーズ3 配管』第4章「配管の熱応力」
  • ASME「B31.3-2024 Process Piping」

※ 実案件の判定は、適用法令、契約で指定された設計コードと版、顧客仕様、会社標準に従ってください。規格の許容値や荷重組合せは版によって変わり得るため、本記事の概念説明だけで合否判定を行わないでください。