※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

「定期点検と保安検査は、誰が行うのか分からない」
「事故が起きたとき、応急措置と通報をする人を混同する」
そんな疑問を解決します。
定期点検の対象施設と実施者
点検周期と記録の保存期間
保安検査の対象と実施者
定期保安検査と臨時保安検査
危険物が流出したときの応急措置・通報・命令
先に結論を言うと、この論点は「誰が」「どの施設に」「いつ」「何をするか」の4点に分けると解きやすくなります。
定期点検は、製造所等の所有者、管理者または占有者が、施設を技術上の基準に適合した状態へ維持するために行う制度です。点検結果を記録し、原則として3年間保存します。
一方、保安検査は、一定の屋外タンク貯蔵所と移送取扱所について、市町村長等が位置・構造・設備を検査する制度です。「事業者側の定期点検」と「行政側の保安検査」を最初に分けてください。
事故時は、所有者等による応急措置と、発見者による通報が並行します。ここでも主語の入替えが狙われます。
法令15問全体の優先順位は、先に危険物取扱者甲種の法令の出題傾向と勉強法で確認できます。
定期点検と保安検査を最初に区別する
定期点検と保安検査は、どちらも製造所等の安全を確認する制度ですが、実施する主体と対象が異なります。
| 項目 | 定期点検 | 保安検査 |
|---|---|---|
| 主体 | 所有者等が実施させる | 市町村長等が行う |
| 対象 | 法令で指定された製造所等 | 一定の屋外タンク貯蔵所・移送取扱所 |
| 目的 | 技術上の基準への適合を日常側で確認 | 行政側が位置・構造・設備を検査 |
| 周期 | 原則1年に1回以上 | 施設により原則8年または1年など |
| 記録 | 作成して原則3年間保存 | 検査結果は行政の検査として扱われる |
試験で「危険物取扱者が保安検査を行う」「市町村長等がすべての定期点検を行う」とあれば、主体が逆です。
定期点検の対象施設を「倍数」と「地下タンク」で判定する
定期点検の対象施設は、施設名だけで決まるものと、指定数量の倍数や地下タンクの有無で決まるものがあります。

| 施設 | 定期点検が必要となる主な条件 |
|---|---|
| 製造所 | 指定数量の倍数が10以上、または地下タンクを有するもの |
| 屋内貯蔵所 | 指定数量の倍数が150以上 |
| 屋外タンク貯蔵所 | 指定数量の倍数が200以上 |
| 屋外貯蔵所 | 指定数量の倍数が100以上 |
| 地下タンク貯蔵所 | すべて |
| 移動タンク貯蔵所 | すべて |
| 給油取扱所 | 地下タンクを有するもの |
| 移送取扱所 | 原則として対象。ただし保安検査の対象となる一定の施設などは除かれる |
| 一般取扱所 | 指定数量の倍数が10以上、または地下タンクを有するもの |
反対に、屋内タンク貯蔵所、簡易タンク貯蔵所、販売取扱所は、定期点検の対象施設には含まれません。
覚える順序は次のとおりです。
- 地下タンク貯蔵所と移動タンク貯蔵所は「すべて」
- 製造所と一般取扱所は「10倍以上または地下タンクあり」
- 屋内貯蔵所150倍、屋外タンク200倍、屋外貯蔵所100倍
- 給油取扱所は地下タンクの有無を確認
- 屋内タンク・簡易タンク・販売取扱所は対象外
倍数計算が不安な場合は、危険物取扱者甲種の指定数量と倍数計算を先に確認してください。
実施者・周期・記録保存をセットで覚える
定期点検を実施できる人は、次のいずれかです。
- 危険物取扱者
- 危険物施設保安員
- 危険物取扱者の立会いを受けた者
ここでいう危険物取扱者には、甲種・乙種・丙種が含まれます。丙種は無資格者の危険物取扱作業へ立ち会えませんが、定期点検の実施者にはなれます。「取扱作業の立会い」と「定期点検の実施」を混同しないでください。
点検は原則として1年に1回以上行い、点検記録を原則3年間保存します。記録には、点検した製造所等の名称、点検年月日、点検方法と結果、点検した人の氏名などを記載します。
通常、点検記録を毎回行政へ提出する必要はありません。ただし、行政から求められたときに提示できるよう保存しておきます。
数字は「点検1年、記録3年」とセットにすると安定します。
地下タンク等の漏れ点検には別の周期がある
地下貯蔵タンク、二重殻タンクの強化プラスチック製外殻、地下埋設配管などには、通常の定期点検に加えて漏れの点検があります。
| 対象 | 原則周期 | 主な記録保存 |
|---|---|---|
| 地下貯蔵タンク・地下埋設配管等 | 1年を経過する日の属する月の末日までに1回 | 3年間 |
| 一定の漏れ防止措置を講じた地下タンク・配管等 | 要件により3年に延長される場合がある | 3年間 |
| 移動貯蔵タンク | 5年を経過する日の属する月の末日までに1回 | 10年間 |
地下タンク等の点検周期は、構造や漏れ検知設備などの条件で例外があります。試験では「すべて一律に3年」「移動貯蔵タンクも毎年」などの断定に注意してください。
保安検査は市町村長等が行う
保安検査は、一定の大規模・高リスク施設について、市町村長等が位置・構造・設備を検査する制度です。

主な対象は次のとおりです。
- 容量1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所
- 配管延長が15キロメートルを超える移送取扱所
- 最大常用圧力が0.95メガパスカル以上で、配管延長が7キロメートル以上15キロメートル以下の移送取扱所
特定屋外タンク貯蔵所の定期保安検査は原則8年に1回、特定移送取扱所は原則1年に1回です。ただし、保安管理の状況やタンクの防食措置などにより周期の特例があります。
「屋外タンク貯蔵所はすべて保安検査の対象」「所有者等が保安検査を行う」といった選択肢は誤りです。
定期保安検査と臨時保安検査を区別する
保安検査には、一定周期で行う定期保安検査と、異常が生じたときに行う臨時保安検査があります。
| 区分 | 行う場面 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| 定期保安検査 | 法令で定める周期が到来したとき | タンク底部の板厚・溶接部、移送設備の構造・設備など |
| 臨時保安検査 | 不等沈下など一定の異常が認められたとき | 異常の影響を受ける位置・構造・設備 |
容量1,000キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所では、タンク直径に対する不等沈下の数値が1%以上となった場合などに臨時保安検査が問題になります。
定期点検は「定期だから行政が行う」とは限りません。名称ではなく、主体と対象を確認してください。
事故時は所有者等の応急措置と発見者の通報を分ける
製造所等で危険物の流出その他の事故が発生したときは、2つの義務を主語別に読みます。

所有者、管理者または占有者は、直ちに次の応急措置を行います。
- 危険物の流出や拡散を防ぐ
- 流出した危険物を除去する
- その他、災害の発生を防止するために必要な措置を取る
一方、事故を発見した者は、直ちに消防署、市町村長の指定した場所、警察署または海上警備救難機関へ通報します。
試験では「発見者が必ず危険物を除去する」「所有者等だけが通報できる」と主語を入れ替えた選択肢が出ます。所有者等の応急措置と、発見者の通報を別々に覚えてください。
実際の事故では、自分の安全を確保し、施設の防災計画やSDS、消防機関の指示に従ってください。本記事は、甲種試験で問われる法令上の主語と義務を整理するものです。
市町村長等は応急措置を命じられる
所有者、管理者または占有者が必要な応急措置を講じていないと認められるとき、市町村長等は、その者に対して応急措置を講じるよう命じることができます。
整理すると、順序は次のとおりです。
- 事故発生
- 所有者等が直ちに応急措置
- 発見者が直ちに関係機関へ通報
- 所有者等が措置を取らない場合、市町村長等が命令
「事故が起きれば必ず使用停止命令」「発見者へ市町村長等が除去を命じる」といった表現には注意してください。
試験で狙われるひっかけ
| 誤りやすい表現 | 正しい整理 |
|---|---|
| 定期点検は市町村長等が行う | 所有者等が実施させる |
| 保安検査は危険物取扱者が行う | 市町村長等が行う |
| 丙種は定期点検を実施できない | 危険物取扱者として実施できる |
| 点検記録は毎年提出する | 原則3年間保存し、求められたときに提示する |
| すべての屋外タンク貯蔵所が保安検査対象 | 一定規模以上の特定屋外タンク貯蔵所が対象 |
| 定期保安検査はすべて毎年 | 特定屋外タンクは原則8年、特定移送は原則1年 |
| 事故の発見者が流出物を必ず除去する | 所有者等に応急措置義務、発見者に通報義務 |
| 事故後の応急措置は市町村長等が行う | まず所有者等が行い、不履行時に市町村長等が命令できる |
選択肢では、主体、施設、倍数・容量、周期、保存期間、命令の条件へ線を引くと誤りを見つけやすくなります。
3問のミニ演習
問1 定期点検の実施者
丙種危険物取扱者は、定期点検を実施できますか。
答え:実施できます。定期点検は危険物取扱者、危険物施設保安員、または危険物取扱者の立会いを受けた者が行えます。丙種に無資格者の取扱作業への立会い権限はありませんが、定期点検の実施は可能です。
問2 保安検査の主体
容量1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所について、所有者等が自ら保安検査を行えば足りますか。
答え:足りません。保安検査は市町村長等が行います。所有者等が行う定期点検とは別の制度です。
問3 事故時の主語
危険物の流出事故を通行人が発見しました。法令上、その発見者に求められる行動は何ですか。
答え:直ちに消防署、市町村長の指定した場所、警察署または海上警備救難機関へ通報します。流出防止・除去などの応急措置義務は、所有者、管理者または占有者に課されます。
次に読む記事
点検・検査・事故時の措置を理解したら、次は危険物取扱者甲種の貯蔵・取扱い・運搬・移送へ進みます。通常時に守る基準と、事故時に取る措置を対にすると、主語と行為の違いを整理できます。
法令全体の学習順へ戻る場合は、危険物取扱者甲種の法令の出題傾向と勉強法を使ってください。
記事群の全体像は、危険物取扱者甲種の完全攻略ロードマップで確認できます。
まとめ
定期点検・保安検査・事故時の措置の要点をまとめます。
- 定期点検は所有者等が実施させ、原則1年に1回以上、記録を原則3年間保存する
- 定期点検は危険物取扱者、危険物施設保安員、危険物取扱者の立会いを受けた者が実施できる
- 対象施設は、すべて対象の施設、倍数で決まる施設、地下タンクの有無で決まる施設に分ける
- 保安検査は、一定の屋外タンク貯蔵所と移送取扱所を市町村長等が検査する
- 特定屋外タンク貯蔵所は原則8年に1回、特定移送取扱所は原則1年に1回の定期保安検査
- 不等沈下など一定の異常時には臨時保安検査がある
- 事故時は、所有者等の応急措置と発見者の通報を分けて覚える
- 所有者等が必要な措置を取らない場合、市町村長等は応急措置を命じられる
問題演習では、「誰が」「どの施設に」「いつ」「何をするか」の4欄を作り、選択肢の語句を振り分けてください。制度名だけで暗記するより、主体と対象の組合せが安定します。
参考文献
- 工藤政孝『わかりやすい!甲種危険物取扱者試験』弘文社、定期点検・保安検査・事故時の措置(PDF p.47-50、p.111-115) Amazonで見る
- 公論出版『甲種危険物取扱者試験 令和8年版』定期点検・保安検査・事故時の措置(PDF p.68-78、p.173、p.175、p.181-182) Amazonで見る
- e-Gov法令検索「消防法」(第14条の3、第14条の3の2、第16条の3、2026年8月29日閲覧)
- e-Gov法令検索「危険物の規制に関する政令」(第8条の4、第8条の5、2026年8月29日閲覧)
- 総務省消防庁「危険物施設における保安検査及び定期点検制度の概要」(2026年8月29日閲覧)
化学プラント大全 