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炭素鋼配管の使い分け|SGP・STPG・STPT・STSの違いと選定手順

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「炭素鋼配管」と聞くと、一種類の管を思い浮かべるかもしれません。しかし、化学プラントで使う炭素鋼系鋼管には、SGP、STPY、STPG、STS、STPT、STPLなど、用途の異なる規格があります。

違いは単なる呼び名ではありません。どの圧力・温度・用途を想定しているか、どの製法と試験が規定されているかが異なります。SGPの肉厚を増やせば、常にSTPGやSTSの代わりになるわけでもありません。

この記事では、初学者が規格記号を整理できるように全体像から説明し、設計者向けに選定条件、製法、材料ファミリー、発注・受入れ確認まで掘り下げます。

まず結論:炭素鋼鋼管は「用途の規格」から選ぶ

最初に押さえるべき点は、SGP、STPG、STSなどが単なる強度順位ではなく、用途ごとに分かれたJISの種類記号だということです。

  • 比較的低い使用圧力の一般配管:SGP
  • 比較的低い使用圧力で大径のアーク溶接管:STPY
  • 350℃程度以下の圧力配管:STPG
  • 350℃以下で使用圧力が高い配管:STS
  • 主に350℃を超える高温配管:STPT
  • 氷点以下の特に低い温度で使う配管:STPL
一般配管のSGP、大径アーク溶接管のSTPY、圧力配管のSTPG、高圧配管のSTS、高温配管のSTPT、低温配管のSTPLを用途別に整理した図
一般配管のSGP、大径アーク溶接管のSTPY、圧力配管のSTPG、高圧配管のSTS、高温配管のSTPT、低温配管のSTPLを用途別に整理した図(一次資料を参考に当サイト作成)

ここでいう「350℃程度以下」「350℃以下」「主に350℃を超える」は、各JISの適用範囲を理解するための言葉です。実際に採用できる圧力と温度は、材質、肉厚、継手効率、腐れ代、許容応力、法規、設計規格、配管クラスを含めて判断します。

したがって、「運転温度が300℃だからSTPG」「圧力が高そうだからSTS」と名称だけで決めることはできません。設計圧力・設計温度を確定し、適用法規と設計規格に照らして採用可否を確認します。

6種類の規格記号と用途を一覧で比較する

2026年8月時点で日本規格協会が有効としている規格は次のとおりです。版年は改正されるため、実案件では必ず最新版を確認してください。

種類記号JIS規格名称適用範囲の要点
SGPJIS G 3452:2026配管用炭素鋼鋼管比較的低い使用圧力の蒸気、水、油、ガス、空気など
STPYJIS G 3457:2020配管用アーク溶接炭素鋼鋼管比較的低い使用圧力の蒸気、水、ガス、空気など
STPGJIS G 3454:2026圧力配管用炭素鋼鋼管350℃程度以下で使用する圧力配管
STSJIS G 3455:2024高圧配管用炭素鋼鋼管350℃以下で使用圧力が高い配管
STPTJIS G 3456:2024高温配管用炭素鋼鋼管主に350℃を超える温度で使用する配管
STPLJIS G 3460:2022低温配管用鋼管氷点以下の特に低い温度で使用する配管

STPG370、STS410、STPT480のように数字が付く種類では、数字は最低規定引張強さを表します。圧力クラスや許容圧力を直接表す数字ではありません。

JIS規格番号、用途を表す種類記号、最低規定引張強さを表す数字を分けて読み、圧力クラスと混同しないことを示す図
JIS規格番号、用途を表す種類記号、最低規定引張強さを表す数字を分けて読み、圧力クラスと混同しないことを示す図(一次資料を参考に当サイト作成)

例えば、STPG370の「370」だけを見て、STPG410より常に不利と判断することはできません。使用温度での許容応力、製造可能寸法、肉厚、溶接性、入手性、法規上の扱いを含めた比較が必要です。

SGPとSTPY|一般配管と大径溶接管を使い分ける

SGP:比較的低い使用圧力の一般配管

SGPは、蒸気、水、油、ガス、空気などの一般配管に広く使われます。黒管と、亜鉛めっきを施した白管があり、外面環境や流体、接続方法に応じて選びます。

ただし、「水だから白管」と一律に決めることはできません。亜鉛めっきの適否は水質、温度、施工方法、異種金属との組合せ、内外面の防食方針で判断します。埋設や腐食性環境では、SGPという材質記号とは別に、塗覆装や電気防食などを検討します。

SGPの呼び厚さは、Sch20と近い寸法があっても同一ではありません。「SGP=Sch20」と置き換えず、JISの寸法表または承認図で外径と肉厚を確認します。

STPY:板を成形してアーク溶接する大径管

STPYは、鋼板や鋼帯を円筒状に成形し、長手方向またはスパイラル状の継手をアーク溶接して製造する管です。比較的低い使用圧力の大径配管で選択肢になります。

比較的低い使用圧力の一般配管に使うSGPと、鋼板を成形して溶接する大径向けSTPYを比較した図
比較的低い使用圧力の一般配管に使うSGPと、鋼板を成形して溶接する大径向けSTPYを比較した図(一次資料を参考に当サイト作成)

STPYは「SGPより強い管」という並びではなく、製法と寸法領域を含めて役割が異なる管です。大径だから自動的にSTPYとするのではなく、必要外径、肉厚、溶接継手、非破壊試験、内外面処理、製造可能範囲を確認します。

STPGとSTS|圧力配管と高圧配管を使い分ける

STPGは350℃程度以下の圧力配管、STSは350℃以下で使用圧力が高い配管を対象とします。名称からはSTSがSTPGの上位互換に見えますが、実務では「圧力が高いほど順番に上げる」という選び方はしません。

まず、適用法規と設計規格に従って必要肉厚を計算し、腐れ代、ねじ加工代、曲げや成形による減肉、製造上の負の許容差を考慮します。そのうえで、規格に存在する寸法系列から採用肉厚を選び、材質の許容応力と製造方法が条件を満たすか確認します。

設計圧力と設計温度、必要肉厚、製造方法と寸法、試験要求を順に確認してSTPGまたはSTSの採用可否を判断する図
設計圧力と設計温度、必要肉厚、製造方法と寸法、試験要求を順に確認してSTPGまたはSTSの採用可否を判断する図(一次資料を参考に当サイト作成)

『配管設計実用ノート』は、STPGには継目無管と電気抵抗溶接管があり、STSは継目無管として説明しています。ただし、製造可能な鋼種・寸法はメーカーによって異なります。規格上可能であることと、実際に調達できることは別なので、設計初期にミルの製造範囲と納期を確認します。

また、STPG370やSTS370の「370」は最低規定引張強さであり、設計時にそのまま許容応力として使う値ではありません。設計温度での許容応力は、適用する設計規格や法規の表から取得します。

STPTとSTPL|高温側と低温側では損傷モードが変わる

STPT:主に350℃を超える高温配管

STPTは、主に350℃を超える温度で使う炭素鋼鋼管です。高温になるほど、常温の引張強さだけでは材料を評価できません。温度上昇に伴う許容応力の低下、長時間使用による組織変化、クリープ、酸化、脱炭などを確認します。

『配管設計実用ノート』は、STPTや炭素鋼板について、427℃以上で長時間使用すると黒鉛化によって脆くなる性質に注意を促しています。JIS上の適用範囲と、長期使用時の健全性評価は同じではありません。

高温条件が厳しくなると、炭素鋼のSTPTからCr-Mo系低合金鋼のSTPAなどへ候補を広げます。切替えは温度だけで決めず、圧力、使用時間、流体による腐食・水素損傷、溶接後熱処理、クリープ強度、既設設備の実績を含めて判断します。

STPL:氷点以下の特に低い温度に対応する

低温では、材料の強度が高くても靭性が不足し、き裂が急速に進む脆性破壊が問題になります。STPLは、氷点以下の特に低い温度で使う配管用鋼管で、低温靭性を評価する衝撃試験が重要になります。

高温側では許容応力低下、長時間劣化、クリープを、低温側では靭性低下と脆性破壊を確認するSTPTとSTPLの比較図
高温側では許容応力低下、長時間劣化、クリープを、低温側では靭性低下と脆性破壊を確認するSTPTとSTPLの比較図(一次資料を参考に当サイト作成)

STPLの数字は、すべてが炭素鋼だけで構成されることを意味しません。『配管設計実用ノート』では、STPL380を炭素鋼、STPL450を3.5%Ni鋼、STPL690を9%Ni鋼として整理しています。温度が低くなるほど数字の大きい材料を機械的に選ぶのではなく、最低設計金属温度、板厚、衝撃試験温度、溶接部を含む靭性要求から選びます。

低温材料の詳細は、PIP-12「設計圧力・設計温度の決め方」と低温用材料の記事で扱います。

継目無管・電縫管・アーク溶接管は何が違うか

鋼管の使い分けには、材質記号だけでなく製法も関係します。代表的な考え方は次のとおりです。

継目無管

丸い鋼片から穴を開け、圧延・押出しなどで管に成形します。長手方向の溶接継手がありません。高圧用や高温用などで採用されますが、製造可能な外径・肉厚、価格、納期には制約があります。

電気抵抗溶接管

鋼帯を連続的に円筒へ成形し、端部を電気抵抗加熱して圧接します。高い生産性を持ち、SGPやSTPGなどで広く使われます。溶接部があるため、母材だけでなく溶接部の品質と非破壊試験要求を確認します。

アーク溶接管

鋼板や鋼帯を円筒へ成形し、アーク溶接で長手継手またはスパイラル継手を作ります。大径管を製造しやすい一方、溶接継手の位置、効率、検査、現場加工との関係を管理する必要があります。

鋼片から成形して長手継手のない継目無管、鋼帯を連続成形して電気抵抗溶接する電縫管、鋼板を成形してアーク溶接する管の違い
鋼片から成形して長手継手のない継目無管、鋼帯を連続成形して電気抵抗溶接する電縫管、鋼板を成形してアーク溶接する管の違い(一次資料を参考に当サイト作成)

「継目無管だから必ず安全」「溶接管だから弱い」と単純化するのは誤りです。規格に適合した溶接管は、定められた製造・試験・寸法要求を満たします。設計条件に対して必要な品質、検査、調達性を満たす製法を選ぶことが重要です。

実務の選定手順|材質記号より先に決めること

炭素鋼系鋼管は、次の順序で候補を絞ると整理しやすくなります。

  1. 設計流体と腐食性を確認する
  2. 設計圧力と設計温度を確定する
  3. 高温劣化または低温脆性の懸念を確認する
  4. 適用法規・設計規格から必要肉厚と許容応力を確認する
  5. 必要な外径・肉厚を製造できる規格と製法を確認する
  6. 溶接、熱処理、非破壊試験、耐圧試験の要求を確認する
  7. 入手性、納期、保全実績を比較する
  8. 管継手、フランジ、弁、ガスケット、ボルトを配管クラスへ展開する
流体、圧力温度、高温低温損傷、必要肉厚、製造寸法、施工検査、調達性、配管クラスの順に炭素鋼鋼管を選定する手順
流体、圧力温度、高温低温損傷、必要肉厚、製造寸法、施工検査、調達性、配管クラスの順に炭素鋼鋼管を選定する手順(一次資料を参考に当サイト作成)

この手順なら、SGP、STPG、STSという名称から考え始めるのではなく、設計要求に合う規格を選べます。候補が複数残る場合は、価格だけでなく、溶接施工性、検査性、納期、既設設備との互換性まで比較します。

管だけを決めず、材料ファミリーと配管クラスへ展開する

配管ラインは、管だけでは完成しません。管継手、フランジ、弁箱、小物鍛造品、溶接材料、ボルト、ガスケットを組み合わせて一つの耐圧系を作ります。

同じ炭素鋼でも、管、管継手、鍛造フランジ、鋳鋼弁ではJISの種類記号が異なります。『配管設計実用ノート』は、管材をキーにして同じ化学成分系の材料を材料ファミリーとして整理し、配管クラスへ組み込む方法を示しています。

したがって、材料表に「炭素鋼」とだけ記載するのは不十分です。少なくとも、適用規格、種類記号、製法、呼び径、肉厚、端部形状、熱処理、試験、表面処理、適用する配管クラスを識別できるようにします。

配管クラスと材料ファミリーの作り方は、PIP-05「ラインリストと配管クラス」とPIP-07「配管材料の選び方」で詳しく解説しています。

よくある誤解と設計上の注意

SGPの肉厚を増やせばSTPGになる

規格は肉厚だけでなく、用途、材質、製造方法、機械的性質、試験、寸法許容差などをまとめて規定します。肉厚が近くても別規格です。

STSはSTPGの上位互換である

STSは高圧用途を対象としますが、製造可能範囲、溶接、調達性、法規上の扱いが異なります。必要条件を満たす最適な規格を選びます。

370や410は許容圧力を表す

数字は最低規定引張強さを示し、許容圧力ではありません。許容応力は設計温度と適用規格に応じて確認し、必要肉厚を計算します。

規格にある管はいつでも購入できる

規格上の製造可能範囲と、メーカーが通常生産している範囲は異なります。特殊寸法や厚肉、大径、特定製法では、最小ロットと長納期が設計を左右します。

炭素鋼なら腐れ代を付ければ使える

腐れ代は、予測可能な全面腐食への備えです。局部腐食、流れ加速腐食、エロージョン、応力腐食割れ、水素損傷、保温材下腐食などを一律に解決するものではありません。

まとめ

SGP、STPY、STPG、STS、STPT、STPLは、同じ炭素鋼系でも対象用途が異なる規格です。

一般配管、圧力配管、高圧配管、高温配管、低温配管という規格の役割を理解し、設計圧力・設計温度、必要肉厚、損傷モード、製法、試験、調達性から候補を絞ります。

最後に、管継手、フランジ、弁などを材料ファミリーとして整合させ、配管クラスへ展開します。材質記号を選んだ時点では、材料設計はまだ終わっていません。

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参考文献

  • 西野悠司『配管設計実用ノート』第1章「配管材料を選択する」、PDF p.12-21、p.122 Amazonで見る
  • 日本規格協会「JIS G 3452:2026 配管用炭素鋼鋼管」規格概要(2026年8月確認) 公式資料を見る
  • 日本規格協会「JIS G 3454:2026 圧力配管用炭素鋼鋼管」規格概要(2026年8月確認) 公式資料を見る
  • 日本規格協会「JIS G 3455:2024 高圧配管用炭素鋼鋼管」規格概要(2026年8月確認) 公式資料を見る
  • 日本規格協会「JIS G 3456:2024 高温配管用炭素鋼鋼管」規格概要(2026年8月確認) 公式資料を見る
  • 日本規格協会「JIS G 3457:2020 配管用アーク溶接炭素鋼鋼管」規格概要(2026年8月確認) 公式資料を見る
  • 日本規格協会「JIS G 3460:2022 低温配管用鋼管」規格概要(2026年8月確認) 公式資料を見る
  • 日本製鉄株式会社『日本製鉄の鋼管』配管用鋼管の用途・製法一覧 公式資料を見る

※ 規格の版年、寸法、製造方法、試験、許容応力、適用範囲は改正されます。実設計・発注では、適用法規、最新版JIS、設計規格、自社配管クラス、メーカーの最新製造範囲を確認してください。