日本触媒は、就活生から見えにくい会社です。BtoBで、社名から製品が想像できない。
でも実は、**毎日どこかで使われている**会社です。紙おむつの吸水材=**高吸水性樹脂(SAP)**を作っており、世界でも有数の生産規模を持ちます。売上3,999億円の7割が、このSAPを含むマテリアルズ事業です。
そしてもう1つの顔が**触媒**。社名のとおり、自動車の排ガス触媒や脱硝触媒も作っています。
私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事では決算短信と募集要項という一次資料だけを使って、「何で稼ぎ、どこで働くのか」を整理します。難易度や口コミは扱いません。
化学業界そのものが曖昧な人は先に「化学業界とは」(→化学業界とは)へ。26社の比較は→化学メーカー大手26社の違いへ。
一言でいうと|アクリル酸と触媒の会社
日本触媒の創業は1941年(昭和16年)8月21日。触媒の研究から始まった会社です。
いまの中核は、**アクリル酸**と**酸化エチレン**という2つの基幹原料。そこから高吸水性樹脂、エチレングリコール、洗剤原料などへ広げています。
| 項目 | 数字(出典・基準日) |
|---|---|
| 売上収益 | 3,999億円(2026年3月期。前期比▲2.3%) |
| 営業利益 | 175億円(同。前期比▲8.0%) |
| 税引前利益 | 215億円(同) |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 168億円(同。前期比▲3.6%) |
| 売上収益営業利益率 | 4.4% |
| 資本金 | 250億円 |
| 従業員数 | 連結4,880名/単体2,573名(2026年3月末) |
| 本社 | 大阪(中央区高麗橋)と東京(千代田区内幸町)の2本社 |
| 創業 | 1941年8月21日 |
就活生が押さえるべき性格は3つです。
- **IFRSを採用**:売上は「売上収益」、利益は「営業利益」「税引前利益」という並びになります
- **セグメント利益の定義が独特**:この会社は「セグメント利益=営業利益+持分法投資損益」と定義しています。成長事業への投資が持分法適用会社を通じて行われており、その重要性が増しているためです
- **規模は中堅、利益率は4.4%**:シリーズの中では低めですが、SAPは市況の影響を受ける製品です(→化学メーカー大手26社の違い)
事業の中身|2セグメントを売上と利益で見る

| セグメント | 主な製品 | 売上収益 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| マテリアルズ | アクリル酸、アクリル酸エステル、酸化エチレン、エチレングリコール、エタノールアミン、特殊エステル、**高吸水性樹脂**、無水マレイン酸、プロセス触媒 | 2,788億円 | 102億円 |
| ソリューションズ | コンクリート混和剤用ポリマー、グリコールエーテル、洗剤原料、医薬中間原料、電子情報材料、ヨウ素化合物、粘接着剤・塗料用樹脂、粘着加工品、**自動車触媒**、脱硝触媒、排ガス処理装置、電池材料 | 1,211億円 | 65億円 |
| 合計(全社損益など+8億円の調整を含む) | 3,999億円 | 営業利益175億円 |
※ 出典:2026年3月期 決算短信。売上は外部顧客への売上収益。
読み方のポイント:
- **売上の7割がマテリアルズ**(2,788億円)。アクリル酸と高吸水性樹脂が中心で、**市況と原料価格の影響を受ける事業**です。営業利益102億円で利益率3.5%
- **ソリューションズは売上1,211億円で利益65億円**(5.3%)。触媒、電子材料、コンクリート混和剤など、用途ごとに設計する製品群です。**利益率はこちらのほうが高い**
- 会社は新中期経営計画(2025-2027年度)で**ソリューションズ事業の利益拡大戦略**を掲げています。**規模のマテリアルズから、収益のソリューションズへ**という方向です
- 当期は減損損失21億円を計上しています(前期4億円)
「規模の事業と収益の事業が分かれている」構造は、日本ゼオン(→日本ゼオンの企業研究)にも似ています。
アクリル酸と酸化エチレン、2本の川

この会社の製品は、**2つの基幹原料から枝分かれ**しています。
**アクリル酸の川**
- **高吸水性樹脂(SAP)**:紙おむつの吸水材。自重の何十倍もの水を吸って固める樹脂です
- アクリル酸エステル:粘接着剤や塗料用の樹脂へ
**酸化エチレンの川**
- エチレングリコール:ペットボトルや不凍液の原料
- エタノールアミン、グリコールエーテル、洗剤原料
そして**もう1つの顔が触媒**です。自動車触媒(排ガス浄化)、脱硝触媒、ダイオキシン類分解触媒、プロセス触媒。社名のとおり、**触媒そのものを製品として売る**会社でもあります。
化学業界の川(→化学業界とは)で言えば、日本触媒はエチレンやプロピレンを買ってきて誘導品を作る**中流**にいます。ナフサクラッカーは持ちません。ただし**高吸水性樹脂という最終製品に近い材料**まで持っている点が、単なる中流の会社とは違います。
就活生への含意を1つ。**「触媒」は化学工学の中でも独自の分野**です。反応工学をやってきた人には、この会社の技術は直球で刺さります(→院卒で研究開発職に就く)。
工場と研究所|どこで働くか

| 拠点 | 所在地 |
|---|---|
| 大阪本社 | 大阪府大阪市中央区高麗橋4-1-1(興銀ビル) |
| 東京本社 | 東京都千代田区内幸町1-2-2(日比谷ダイビル) |
| 川崎製造所 千鳥工場 | 神奈川県川崎市川崎区千鳥町14-1 |
| 川崎製造所 浮島工場 | 神奈川県川崎市川崎区浮島町10-12 |
| 姫路製造所 | 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992-1 |
| 姫路地区研究所 | 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992-1 |
| 吹田地区研究所 | 大阪府吹田市西御旅町5-8 |
現役として補足すると、この会社の拠点は**非常にシンプル**です。製造所は川崎(神奈川)と姫路(兵庫)の2か所、研究所は姫路と吹田(大阪)の2か所。
**姫路製造所と姫路地区研究所は同じ住所**(網干区興浜字西沖992-1)にあります。研究と生産が並んでいる形です。
**姫路市網干区は、ダイセル(→ダイセルの企業研究)の網干工場と同じ地区**です。この一帯は化学工場が集まっています(→コンビナート地域で働くという選択)。
拠点が4か所(本社を除く)というのは、シリーズの中でも少ないほうです。**配属の見通しが立てやすい**という意味では、生活設計をしやすい会社です(→化学メーカーの選び方)。ただし募集要項には「キャリア形成上、複数の事業所での勤務を前提とするため、勤務地に条件のない方」と書かれています。**川崎と姫路の両方に行く可能性がある**と理解しておいてください。
職種・初任給|募集要項を読む
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 募集職種 | 事務系/化学・化工系(研究開発・生産技術)/化学系(製造オペレーター)/プラントエンジニア系 |
| 対象学科 | 事務系は法・経済・経営・商/化学系は化学・化学工学・物質工学・薬学/プラントエンジニア系は機械・電気電子・土木建築 |
| 初任給(2025年度実績) | 博士了 354,000円/修士了 286,400円/学士・高専専攻科卒 270,800円/高専本科卒 247,600円/高校卒 230,000円 |
| 賞与 | 年2回(7月・12月) |
| 勤務時間 | 大阪・東京本社 9:00〜17:30/吹田地区研究所 8:30〜17:00/製造所 8:00〜16:30(**3交替勤務あり**) |
| 休日 | 土日祝、創立記念日(5月1日)、年末年始、**誕生日月休日** |
| 勤務地 | 大阪、東京、吹田、姫路、川崎 |
| 採用実績(2025年度) | 大学院・大学卒 事務系8名・技術系42名/高専卒8名/高校卒21名 |
読み方:
- **「製造オペレーター」が職種として立っている**のはこのシリーズでは珍しい設計です。3交替勤務の現場で働く職種を、新卒採用の入口として明示しています(→プラントオペレーターの仕事内容)
- **プラントエンジニア系に土木建築が入っている**のも特徴。設備を建てる仕事に、建築系からも入れます(→生産技術エンジニアの仕事内容)
- **誕生日月休日**という制度があります。細かいことですが、こういう制度を持つかどうかは会社の性格を表します
- 初任給は修士了286,400円。全産業平均(大学卒26.2万円、→化学メーカーの初任給と年収カーブ)は上回りますが、**シリーズの中では下位**です(→化学メーカー大手26社の違い)
- **高卒採用21名は大学院・大学卒(50名)の4割**。現場の採用をきちんとやっている会社です(→高卒・高専卒で化学プラントに就職する)
公開資料の読み方|この会社を自分で追いかけるには
| 資料 | 見るところ |
|---|---|
| 決算短信・決算説明資料(IR) | ソリューションズ事業の利益が伸びているか。マテリアルズの利益率が戻るか |
| 新中期経営計画(2025-2027年度) | 「ソリューションズ事業の利益拡大戦略」の中身。持分法適用会社を通じた投資の方針 |
| 採用サイト | 職種の分け方(事務/化学・化工/製造オペレーター/プラントエンジニア)が明快です |
面接では「売上の7割はマテリアルズですが、利益率はソリューションズのほうが高いですね」と言えると、決算を読んだ学生だと伝わります(→化学メーカーの面接で聞かれること)。
どんな人に向くか
- **触媒・反応工学をやってきた人**:社名のとおり触媒が技術の芯です。反応をどう設計するかが仕事になります
- **身近な製品の中身を作りたい人**:紙おむつ、洗剤、ペットボトル、自動車の排ガス浄化。どれも生活のすぐそばです
- **関西か川崎で働きたい人**:拠点が4か所と少なく、大阪・姫路・吹田・川崎に絞られています(→化学メーカーの選び方)
志望動機の③会社の層(→化学メーカーの志望動機の書き方)では、「アクリル酸と酸化エチレンという2本の川を持ち、触媒も作る会社」という理解を軸に語ると通りやすくなります。
この記事の使い方と注意
- 数字は2026年3月期決算と、執筆時点の募集要項に基づきます(最終更新:2026年8月)。初任給・採用数は2025年度実績です
- **この会社はIFRSを採用**しており、「セグメント利益=営業利益+持分法投資損益」と定義しています。本記事の表では営業利益を載せています
- 就職難易度・採用大学・口コミは扱いません。一次資料と現場の感覚だけを書いています
日本触媒は1941年創業、アクリル酸と酸化エチレンを軸に、紙おむつの吸水材となる高吸水性樹脂や、自動車触媒を作る会社です。売上3,999億円の7割がマテリアルズ事業。利益率はソリューションズ事業のほうが高く、そちらを伸ばす方針です。製造所は川崎と姫路の2つ。26社の比較は化学メーカー大手26社の違いへ。
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