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不凝縮ガスが凝縮器を殺す理由【1%の混入で性能が半減する】

不凝縮ガスが凝縮器を殺す理由【1%の混入で性能が半減する】

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困っている人
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コンデンサの能力が急に落ちた

真空度が上がらない

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

・なぜ微量の不凝縮ガスで凝縮性能が激減するのか

・ベント(抜き出し)の設計と位置の考え方

・不凝縮ガスが原因かを見分ける方法

私の仕事は化学プラントの設計です。
現場で頻発するトラブルの機構と対策を整理します。

凝縮器のトラブルで最も多く、そして最も見落とされやすいのが不凝縮ガスの蓄積です。

設計は正しい。伝熱面積も足りている。汚れてもいない。それなのに能力が出ない──こういうとき、まず疑うべきがこれです。

厄介なのは、ごく微量で効いてしまう点です。体積で数%の空気が混じるだけで、凝縮側の熱伝達率が半分以下になることがあります。

この記事の結論

・不凝縮ガスは、凝縮する蒸気に運ばれて伝熱面の近くに濃縮します。

・その結果、蒸気の分圧が下がって飽和温度(=有効温度差)が下がり、さらに拡散抵抗も加わります。

・体積で1〜数%の混入でも、凝縮側の熱伝達率が半減することがあります。

・対策はベント。位置は「最も温度が低く、蒸気の流れの終端」に置きます。

・真空系では外部からの空気の漏れ込みが主因になります。

なぜ微量で効くのか

不凝縮ガスとは、その条件では凝縮しないガスのことです。水蒸気に対する空気、有機蒸気に対する窒素や水素などが該当します。

① 伝熱面近傍に濃縮する

蒸気は凝縮して液になり、体積が激減します(水なら約1/1,700)。ところが不凝縮ガスは凝縮しません。

蒸気が伝熱面に向かって流れ込み、そこで消えていく。一方でガスは消えずに残る。結果として、伝熱面のすぐ近くに不凝縮ガスが溜まっていきます

バルクでは1%しかなくても、伝熱面近傍では数十%に濃縮されている、ということが起こります。

これが「微量で効く」理由です。バルク濃度と界面濃度がまったく違います。

② 蒸気の分圧が下がり、飽和温度が下がる

界面に不凝縮ガスが濃縮すると、その分だけ蒸気の分圧が下がります。分圧が下がれば、その蒸気の飽和温度も下がります。

凝縮の駆動力は「飽和温度 − 壁面温度」です。飽和温度が下がるということは、有効温度差が直接減るということです。

③ 拡散抵抗が加わる

蒸気が伝熱面に到達するには、濃縮した不凝縮ガスの層を拡散して通り抜けなければなりません。これは純粋な凝縮にはなかった、新しい抵抗です。

②と③が重なるため、性能低下は不凝縮ガスの濃度に対して非線形に急激に進みます。

どれくらい落ちるのか

水蒸気の凝縮に空気が混入した場合の、性能低下の目安です。

空気の体積分率凝縮熱伝達率の低下の目安
0.1%10 〜 20%低下
0.5%30 〜 40%低下
1%約50%低下
5%70 〜 80%低下
10%以上1/5以下。ほぼ凝縮しなくなる

この数値は流速や機器形状に強く依存するため、あくまで感覚をつかむための目安です。ただし「1%で半減」という桁感は、実務で何度も確認されています。

重要なのは、この低下が設計計算では表れないという点です。純蒸気として計算した h をそのまま使えば、実機とは大きく違う値になります。

不凝縮ガスの存在が分かっている場合、メーカーは専用の計算手法(拡散を考慮したコルバーン・ホーゲンの方法など)を使います。ユーザー側は「不凝縮ガスがどれだけ入るか」を正確に伝える責任があります。

どこから入ってくるのか

経路典型例対策
プロセス由来原料に溶存していたガス、反応で生成した軽質分ベントで系外へ抜く
外部からの漏れ込み真空系のフランジ・シール部からの空気吸込み気密試験、シール改善
不活性ガスのパージ窒素シール、計器パージ必要最小限に。ベント確保
起動時の残留空気運転開始時に系内に残った空気起動時のベント操作

真空系では、外部からの漏れ込みが主因になります。系内が負圧なので、わずかな隙間からでも空気が吸い込まれます。真空度が経時的に悪化する場合、ほぼ確実にどこかで漏れています。

ベントの設計

不凝縮ガスへの対策は、溜まる前に抜くこと。つまりベントです。

位置 ― どこに設けるか

ベントは「蒸気の流れの終端」かつ「最も温度が低い場所」に設けます。

理由は単純で、そこが不凝縮ガスが最も濃縮する場所だからです。蒸気は凝縮しながら流れていき、最後まで残るのが不凝縮ガスです。

・横型シェル側凝縮 → シェルの蒸気入口と反対側、かつ冷却水入口に近い側

・縦型管内凝縮 → 管の下流端

・複数のパスがある場合 → 各パスごとにベントが要る

最後の点が見落とされがちです。パスが分かれていると、ベントのないパスにガスが溜まり続けます。そのパスだけ能力が出なくなります。

量 ― どれだけ抜くか

ベント量が少なすぎればガスが溜まります。多すぎれば、有効な蒸気まで系外に捨てることになり、損失になります。

一般には、想定される不凝縮ガスの流入量に対して余裕を見た量を、連続的に抜きます。抜いたガスに含まれる蒸気を回収するため、ベントコンデンサ(小型の後段凝縮器)を設けることもあります。

真空系の場合

真空系では自然に抜けないので、エジェクタや真空ポンプで強制的に吸い出します。この能力が不足すると、系内の不凝縮ガス濃度が上がり続けます。

真空系のトラブルで確認すべき順序

1. 真空発生装置(エジェクタ・真空ポンプ)の能力は出ているか

2. 系内に空気の漏れ込みはないか(気密試験)

3. ベント経路が閉塞・凍結していないか

4. コンデンサ自体の汚れ・ドレン滞留はないか

不凝縮ガスが原因かを見分ける

能力低下の原因が汚れなのか、不凝縮ガスなのかを切り分けるポイントがあります。

観察される現象不凝縮ガス汚れ
低下の進行急に、あるいは変動する徐々に、単調に進む
ベント操作への反応抜くと回復する変化しない
運転条件との相関真空度・パージ量と連動運転時間と相関
洗浄後回復しない回復する
凝縮器出口の温度飽和温度より低い(過冷却)飽和温度付近

最も分かりやすい判定は「ベント弁を開けたら回復するか」です。開けて数分で能力が戻るなら、不凝縮ガスが溜まっていた証拠です。

もうひとつの手がかりが凝縮液の過冷却です。不凝縮ガスがあると界面の蒸気分圧が下がり、その分だけ飽和温度が下がります。凝縮液の温度が、系圧力に対応する飽和温度より明らかに低ければ、不凝縮ガスの存在が疑われます。

汚れ係数(ファウリング)の考え方【過大に取ると、かえって汚れる】 汚れ係数(ファウリング)の考え方【過大に取ると、かえって汚れる】

設計段階でやっておくこと

・不凝縮ガスの種類と量を、プロセス条件として明示する(「微量」では不十分)

・ベントノズルを各パスに設ける

・ベント量を調整できるようにする(弁とオリフィス)

・真空系では気密試験の基準を仕様に入れる

・凝縮液温度を測れるようにしておく(診断の手がかりになる)

「不凝縮ガスは微量なので無視」という前提で設計してはいけません。微量だからこそ効く、というのがこの現象の本質です。

まとめ

・不凝縮ガスは凝縮する蒸気に運ばれて伝熱面近傍に濃縮します。バルク濃度と界面濃度はまったく違います。

・蒸気の分圧低下による有効温度差の減少と、拡散抵抗の増加が重なり、性能は非線形に急落します。

・体積で1%程度の混入でも、凝縮熱伝達率が半減することがあります。

・対策はベント。位置は「蒸気の流れの終端」かつ「最も温度が低い場所」。パスごとに必要です。

・真空系では外部からの空気漏れ込みが主因です。

・「ベントを開けたら回復するか」が、汚れとの切り分けに最も有効です。

次は、相変化のもう一方の主役であるリボイラを扱います。

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参考文献

  • 尾花英朗『熱交換器設計ハンドブック(増訂版)』工学図書、1974年(1994年 2版6刷)、第2部 伝熱概論 第8章「対流伝熱」8・2 相変化を伴う対流伝熱、第4部 第26章「直接接触式冷却凝縮器の設計法」 Amazonで見る
  • 吉田邦夫・吉田英生 監修『熱交換器ハンドブック』省エネルギーセンター、2005年、II編1「多管式熱交換器」1.2 水冷・プロセス流体 (2)混合ガス(不凝縮ガス)+水蒸気(凝縮あり)の伝熱計算フロー Amazonで見る
  • 日本機械学会『伝熱工学(JSMEテキストシリーズ)』日本機械学会、2023年、第5章「相変化を伴う伝熱」、第6章「物質伝達」 Amazonで見る