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シェル側とチューブ側、どっちに何を流せばいいの?
割り付けで性能は変わる?
そんな悩みを解決します。
・チューブ側に流すべき流体とその理由
・シェル側に流すべき流体とその理由
・原則がぶつかったときの優先順位

私の仕事は化学プラントの設計です。
実務で使っている判断の順序を整理しました。
多管式熱交換器では、2つの流体のどちらをチューブ側(管内)に、どちらをシェル側(胴側)に流すかを決めなければなりません。
これはコストと保全性を大きく左右する判断です。同じ熱量を交換する機器でも、割り付けを変えるだけで材料費が数倍変わったり、清掃できない機器になったりします。
多くの場合はメーカーが提案してきますが、その根拠を理解していないと妥当性を判断できません。そして汚れ方や保全計画はユーザー側しか知らない情報なので、ここはユーザーが主導すべき領域でもあります。
・高圧・腐食性・汚れやすい・毒性の流体はチューブ側へ。理由はいずれもコストと安全です。
・高粘度・低圧損が要求される・凝縮する流体はシェル側へ。理由は伝熱性能です。
・原則がぶつかったときは、腐食性 → 高圧 → 汚れ → その他の順で優先します。
・迷ったら「もし漏れたらどちらが困るか」「清掃するとき誰が困るか」で考えます。
チューブ側に流すべき流体
① 高圧の流体
チューブは直径が小さいため、同じ圧力に耐えるのに必要な肉厚が薄くて済みます。一方シェルは直径が大きいので、高圧に耐えさせようとすると板厚が急激に増え、コストが跳ね上がります。
円筒の必要肉厚は直径に比例します。外径19 mmのチューブと直径800 mmのシェルでは、40倍の差があるということです。
② 腐食性の流体
腐食性流体に耐える材料(ステンレス、チタン、ハステロイなど)は高価です。チューブ側に流せば、チューブと管板とチャンネルだけを耐食材にすればよく、シェルは安価な炭素鋼で済みます。
逆にシェル側に流すと、シェル全体を耐食材にする必要があり、材料費が大きく膨らみます。
③ 汚れやすい流体
チューブ内は直管であれば、ブラシや高圧水による機械清掃ができます。シェル側は管束の外側なので、機械清掃が困難です(管束を引き抜いても、管と管の隙間には手が入りません)。
汚れやすい流体はチューブ側に割り付け、リアヘッドは固定管板か遊動頭(U字管以外)を選びます。
④ 毒性・危険性の高い流体
シェル側は溶接部やフランジ部が多く、漏洩箇所が増えます。チューブ側は管板でシールされ、外部への漏洩経路が少なくなります。毒性物質や可燃性の高い流体はチューブ側に流すほうが安全です。
⑤ 流量が少ない流体
流量が少ないと流速を稼ぎにくく、熱伝達率が落ちるうえ汚れやすくなります。チューブ側ならパス数を増やす(2パス、4パス、6パス…)ことで流速を任意に上げられます。
シェル側で流速を上げるにはバッフル間隔を詰めるしかなく、調整幅が限られます。
⑥ 冷却水
冷却水は上記の②③⑤に該当することが多く(腐食性がある、スケールが付く、流速確保が必要)、実務ではほぼ例外なくチューブ側に流します。
シェル側に流すべき流体
① 高粘度の流体
これは直感に反するかもしれませんが、高粘度流体はシェル側のほうが性能が出ます。
理由は、シェル側ではバッフルによって流れの向きが繰り返し変わり、管束を横切ることで乱れが生じるためです。低いレイノルズ数でも乱流に近い状態を作れます。
一方チューブ側では、粘度が高いと簡単に層流域(Re < 2,300)に入ります。層流では Nu ≒ 3.66 に張り付き、流速を上げても熱伝達率がほとんど改善しません。
② 許容圧力損失が小さい流体
シェル側は流路断面積が大きく取れるため、同じ流量でも圧力損失を小さくできます。X形やJ形のシェルを選べばさらに下げられます。
気体、真空系の蒸気、自然循環系の流体など、圧力損失に厳しい制約がある流体はシェル側へ。
③ 凝縮する蒸気
凝縮では蒸気の体積が大きく、大きな流路断面が必要です。またドレン(凝縮液)を重力で速やかに排出する必要があります。シェル側なら横型に置いて下部から抜くことができます。
多管式コンデンサはシェル側で凝縮させるのが標準です。
④ 流量が非常に大きい流体
チューブ側に大流量を流すと、パス数を減らしても流速が上がりすぎ、エロージョンや振動の懸念が出ます。シェル側のほうが大流量を受け止めやすくなります。
原則がぶつかったとき
実務では複数の原則が競合します。たとえば「高粘度で、かつ腐食性がある流体」はどちらに流すべきか。
優先順位
| 優先度 | 観点 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 腐食性・材料費 | 金額インパクトが最も大きい。シェル全体を耐食材にすると桁が変わる |
| 2 | 高圧 | 同上。シェルの板厚増は高くつく |
| 3 | 毒性・危険性 | 安全に関わる。金額では測れない |
| 4 | 汚れ・清掃性 | 運転可能性に直結する。清掃できない機器は使えない |
| 5 | 粘度・伝熱性能 | 面積で吸収できる。1〜4より優先度は低い |
| 6 | 圧力損失 | 形式やパス数の調整である程度吸収できる |
具体例で考える
例1:反応液(腐食性・汚れる)を冷却水で冷やす
反応液:腐食性あり、汚れる → チューブ側(材料費と清掃性)
冷却水:スケールが付く → 本来チューブ側に流したいが、反応液に譲る → シェル側
この場合、シェル側の冷却水も汚れます。シェル側は機械清掃できないので、化学洗浄で対応できる汚れかどうかを確認しておく必要があります。
冷却水の水質管理(スケール防止剤の注入、濃縮倍率の管理)が重要になるケースです。
例2:高粘度の重合液を蒸気で加熱する
蒸気:清浄、凝縮する、高圧の場合あり → チューブ側
重合液:高粘度、汚れる(重合物が固着) → シェル側
原則どおりなら高粘度はシェル側、汚れやすい流体はチューブ側で、競合します。ここでは粘度を優先してシェル側に流すのが一般的です。層流に入ってしまうと伝熱がまったく成立しないためです。
ただしシェル側は機械清掃できないので、リアヘッドは管束を引き抜ける型式(U字管または遊動頭)を選び、引抜きスペースを確保しておきます。
例3:高圧ガスを冷却水で冷やす
高圧ガス:高圧、低圧損が望ましい → 競合
冷却水:汚れる、流速確保が必要 → チューブ側に流したい
高圧が優先されるので、ガスをチューブ側に流します。ガス側の圧力損失はパス数を1にして抑えます。
冷却水はシェル側になりますが、この場合は水質管理と、シェル側流速が落ちすぎないようバッフル間隔を詰めてもらう配慮が必要です。
まとめ
・高圧・腐食性・汚れやすい・毒性・少流量・冷却水 → チューブ側
・高粘度・低圧損が必要・凝縮する蒸気・大流量 → シェル側
・高粘度流体はシェル側のほうが性能が出ます。チューブ側では層流に入り、流速を上げても改善しません。
・原則が競合したら、腐食性 → 高圧 → 毒性 → 汚れ → 粘度 → 圧損 の順で優先します。
・1〜4はコストや運転可能性を左右し、5〜6は面積や形式で吸収できるからです。
・割り付けはTEMA型式の選択と連動します。片方だけでは決まりません。
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