燃焼計算は、反応式を暗記して数値を代入するだけでは安定しません。燃料の基準を決める→酸素量を求める→空気量へ直す→排ガスを乾き・湿りで分けるという順番を固定してください。
熱分野全体の学習順はエネルギー管理士・熱の勉強法、課目Ⅲの知識と計算の配分は燃料と燃焼の攻略で確認できます。本記事は、基準量から検算までを一つの計算例で完結させます。
10年分で燃焼計算はどう出たか
2017〜2026年度の課目Ⅲ問題10では、ガス燃料、液体燃料、固体燃料・バイオマス、空気比、熱風生成、空気予熱など、題材を変えた収支計算が確認できました。
燃料が変わっても、炭素・水素・硫黄等に必要な酸素を求め、燃料中の酸素を考慮し、供給空気と排ガスへ展開する基本は共通します。燃料性状の意味は発熱量・引火点・燃焼範囲で先に整理できます。
解く前に基準を書く
燃料組成が質量基準かモル基準か、燃料1 kgか1 kmolか、乾き排ガスか湿り排ガスかを最初に書きます。ここを決めないと、途中で分子量や空気中の窒素の扱いが混ざります。
表は横にスクロールできます →
| 確認項目 | 例 |
|---|---|
| 燃料の基準 | 1 kg、1 kmol、ある体積 |
| 組成の基準 | 質量分率、モル分率、体積分率 |
| 空気の基準 | 理論空気量、実際空気量、空気比 |
| 排ガスの基準 | 乾き、湿り、基準酸素濃度 |
問題文の基準を式の横へ書くだけで、単位の取り違えがかなり減ります。
質量組成が与えられたときは、燃料1 kgまたは100 kgを基準にすると各元素の質量が読みやすくなります。モル・体積組成のガス燃料では、燃料1 kmolまたは100 kmolを基準にします。
体積割合をモル割合として扱えるのは、同じ温度・圧力で理想気体として扱うなどの前提がある場合です。問題文の条件を省かずに確認してください。
基本の流れ
炭素・水素・硫黄などの燃焼に必要な酸素量を、燃料組成から求めます。次に空気中の酸素割合を使って理論空気量に直し、空気比が与えられれば実際空気量を求めます。
排ガスを求めるときは、二酸化炭素、二酸化硫黄、水蒸気、過剰酸素、空気由来の窒素を分けて加えます。乾き排ガスでは水蒸気を除き、湿り排ガスでは含めます。乾き・湿りの指定を最後ではなく、最初に丸で囲むのが安全です。
完結した計算例:メタン1 kmolを空気比1.20で燃やす
空気を酸素21 mol%、窒素79 mol%と近似し、メタン1 kmolを完全燃焼させます。燃料・空気は乾き基準とし、空気比は1.20です。
1. 反応式から理論酸素量を求める
メタンの完全燃焼は次の関係です。
CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
メタン1 kmolに必要な理論酸素量は2 kmolです。
2. 理論空気量と実際空気量を求める
理論空気量は、2 ÷ 0.21 = 9.524 kmolです。空気比1.20なので、実際空気量は9.524 × 1.20 = 11.429 kmolです。
供給酸素は2.4 kmol、空気に伴う窒素は11.429 × 0.79 = 9.029 kmolです。
3. 乾き・湿り排ガス量を分ける
完全燃焼後は、CO2が1 kmol、H2Oが2 kmol、余ったO2が0.4 kmol、N2が9.029 kmolです。
表は横にスクロールできます →
| 排ガス基準 | 含める成分 | 合計 |
|---|---|---|
| 湿り排ガス | CO2 + H2O + O2 + N2 | 12.429 kmol |
| 乾き排ガス | CO2 + O2 + N2 | 10.429 kmol |
乾き排ガス中のCO2濃度は約9.59 mol%、O2濃度は約3.84 mol%です。端数は途中で丸めすぎず、最後に整理します。
4. 検算する
炭素原子は燃料側1 kmolに対しCO2側1 kmol、水素原子は燃料側4 kmolに対しH2O側4 kmolで一致します。供給酸素原子も、CO2・H2O・残存O2へ配分すると一致します。
物質収支の検算と、乾き・湿りの基準確認を両方行うと、答えだけを合わせる計算から抜け出せます。
この例は解法を示す独自問題です。実際の燃料組成や空気組成、未燃分、解離を含む問題では、与えられた条件を優先してください。
独自の確認問題
燃料を完全燃焼させ、空気比が1より大きいとします。乾き排ガスの成分として、燃料由来の二酸化炭素と、空気由来の窒素に加えて何を考える必要があるでしょうか。
答えと理由を開く
過剰に供給された空気に由来する酸素です。空気比が1より大きいと、理論量を超える空気が供給されるため、完全燃焼という条件だけでは酸素がすべて消費されるとは限りません。水蒸気を含めるかは、乾き・湿りの指定で判断します。
計算ミスの確認順
答えが合わないときは、公式を探し直す前に次を確認します。
- 組成の合計が問題文の基準で100%になるか。
- 酸素量から空気量へ直すときの基準をそろえたか。
- 空気比を掛ける場所を間違えていないか。
- 水蒸気を乾き排ガスに入れていないか。
発熱量や燃料の性状は燃料性状対策、ボイラの排ガス損失はボイラ対策と結び付けて復習できます。
単位換算や原油換算を含む共通課目の基礎は原油換算と単位整理、過去問を解き直す方法は公式過去問の復習方法へ進んでください。理想気体の体積換算は理想気体の状態方程式で確認できます。
参考資料
- 『化学工学の基礎と計算』燃焼熱・燃焼計算の章
- 『エネルギー管理士(熱分野)過去問題集』課目Ⅲの燃焼計算問題
- 省エネルギーセンター:過去の試験問題・標準解答
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