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q線と原料状態|フィード条件が段数に効く理由

D-10 q-line

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蒸留塔に入れる原料が、冷えた液なのか、沸点の液なのか、一部が気化しているのか。この違いだけで必要な段数が変わります

原料の熱的状態を表す数字がq値、それをx-y線図上の直線にしたものがq線です。地味な存在ですが、フィードプレヒータを付けるかどうかという実務の判断に直結します。

この記事は蒸留シリーズ「蒸留計算」の1本です。全体像は蒸留の完全ガイドにまとめています。

この記事の結論

  • q=原料のうち液として塔に入る割合。沸点の液ならq=1、飽和蒸気ならq=0
  • q線:y = q/(q−1)·x − xF/(q−1)。必ず点(xF, xF)を通る
  • q線は2本の操作線の交点の位置を決める。だから段数が変わる
  • 原料を冷やして入れる(q>1)と段数は減るがリボイラ負荷が増える。ここもトレードオフ

1. q値とは何か

原料の状態で交点が動く

q値の定義はいくつかの言い方がありますが、実用的には「原料1 molのうち、液として回収部へ下りていく分の割合」と覚えるのが早いです。

原料の状態qq線の傾きx-y線図での向き
過冷却液(沸点より冷たい)q > 1正で急右上がりに立つ
沸点の液q = 1垂直
気液混合0 < q < 1右下がり
飽和蒸気q = 00水平
過熱蒸気q < 0正で緩い右上がりに寝る

q > 1が「1を超える」のは奇妙に見えますが、過冷却液は塔に入ると上がってきた蒸気を凝縮させて自分より多い液をつくるため、こうなります。逆に過熱蒸気は塔内の液を蒸発させるのでq < 0です。

2. q線の式と、なぜ(xF, xF)を通るのか

y = q/(q−1)·x − xF/(q−1)

この式に x = xF を代入すると、y = (q·xF − xF)/(q−1) = xFqが何であっても点(xF, xF)を通ります

作図上はこれで十分です。対角線上の原料組成の点に鉛筆を置き、表の傾きで線を引く。それがq線です。

3. q線が段数を動かす仕組み

q線の役割は2本の操作線の交点を決めること、その一点に尽きます。

McCabe-Thiele法では、精留部操作線・回収部操作線・q線の3本が1点で交わります。q線が動けばこの交点が動き、回収部操作線の傾きが変わる。操作線が平衡曲線に近づくほど階段は細かくなり、段数が増えます

同じ分離(α=2.4、xF=0.40、xD=0.95、xB=0.05、R=2.33)で、原料の状態だけを変えたときの交点は次のようになります。

原料の状態q操作線の交点
過冷却液1.3(0.445, 0.597)
沸点の液1.0(0.400, 0.565)
半分気化0.5(0.303, 0.497)
飽和蒸気0.0(0.164, 0.400)
過熱蒸気−0.3(0.048, 0.319)

原料を冷やすほど交点は右上へ、つまり平衡曲線から遠ざかる方向へ動きます。階段は粗くなり、段数は減ります。

4. では原料は冷やして入れるべきか

段数だけ見れば「冷やしたほうが得」に見えます。しかしここにも交換があります。

  • 原料を冷やす(q大):段数は減る。しかし塔内で原料を沸点まで温める分、リボイラの熱量が増える
  • 原料を予熱・部分気化させる(q小):リボイラ負荷は減る。しかし段数が増え、塔が高くなる

実務では沸点近くの液(q≒1)で入れるのが標準です。作図が素直になるうえ、塔内の気液の流量バランスが上下で大きく変わらないため、設計にも運転にも扱いやすいからです。

ここから外す判断をするのは、たとえば次のような場合です。

  • 上流に余っている熱があり、フィードプレヒータで回収できる(q小へ)。リボイラの高価な熱源を節約できる
  • 塔高さに制約があり、どうしても段数を詰めたい(q大へ)

なお運転側から見ると、フィード温度は段数の効き方まで変える変数だということでもあります。プレヒータの調子が変わって原料温度がずれると、製品組成が動く。組成が振れたときの切り分けで、フィード温度は必ず見るべき項目です。

まとめ

q値は原料のうち液として下りていく割合で、沸点の液ならq=1(q線は垂直)、飽和蒸気ならq=0(水平)です。q線は必ず(xF, xF)を通り、2本の操作線の交点を決めることで段数に効きます。原料を冷やせば段数は減りますがリボイラ負荷が増える。標準は沸点近くの液での供給です。

次の記事:最小還流比の求め方

参考文献

  • 大江修造『絵とき「蒸留技術」基礎のきそ』日刊工業新聞社, 2008, 第4章 Amazonで見る
  • 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善, 第9章「蒸留」(q値の定義は同章の記号表による) 最新版をAmazonで見る

※ 表の交点は α を一定とみなした理想系での計算値です。