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調節弁を 50% 開けても、流量が最大の半分になるとは限りません。弁の開度と流量の関係は、プラグの形で決まる「固有流量特性」と、配管に組み込まれたときに変わる「有効流量特性」の2段階で決まるからです。
代表的な固有流量特性は、リニア(開度に比例)とイコールパーセント(開度が増えるほど流量の増え方が大きい)の2つです。イコールパーセントが用意されているのは、配管の圧力損失が流量の2乗で増えるため、リニアのままでは実際の流量が開度に比例しなくなるからです。
この記事では、固有流量特性と有効流量特性の違い、なぜイコールパーセントが要るか、配管系全体に占める弁の圧損比で特性を選ぶ目安、バイパス弁を併用したときに何が起きるかを説明します。
この記事の結論
- 固有流量特性は弁前後の差圧を一定にしたときの開度と流量の関係で、プラグの形(絞り部の形状)で決まる
- 有効流量特性は配管に組み込んだときの関係。流量が増えると配管の圧損が増えて弁差圧が減るので、固有特性からずれる
- 代表は リニア、イコールパーセント、クイックオープン。クイックオープンはオン・オフ用
- リニア弁を配管に入れると、低流量で少し開けただけで沢山流れ、高流量で開けても増えない。これを補うのがイコールパーセント
- 目安:流量制御・圧力制御で弁の圧損比が小さければイコールパーセント、液位制御・温度制御で圧損比が大きければリニア
- 全開時の弁差圧は配管系の摩擦損失の 1/3 以上が望ましい。バイパス弁で流量を稼ぐと制御性は極めて悪くなる
1. 固有流量特性|プラグの形が決める
調節弁ハンドブックは、どの形式の調節弁も本質的には可変絞り機構として動き、プロセスの圧力・温度・流量・液位を調節する、と説明しています。基本特性として使われるのが、弁前後の差圧を一定に保った場合の弁開度(トラベル)と通過流量の関係で、これを固有流量特性と呼びます。弁内部の絞り部の形状で決まります。

| 特性 | 開度と流量の関係 | プラグの形 | 用途 |
| クイックオープン | 少し開けただけで大部分が流れる | 皿形 | オン・オフ動作 |
| リニア | 開度に比例 | 円錐形 | 圧損比が大きい系、液位・温度制御 |
| イコールパーセント | 開度の等しい増分が流量の等しい比率の増分を生む(開くほど増え方が大きい) | 放物線形 | 圧損比が小さい系、流量・圧力制御 |
イコールパーセントの名前は、「相対トラベルの等量増分が相対容量係数の等比率の増分を生じる」特性から来ています。数式では指数関数で表されます。この記事では式は使いませんが、「開度 10% から 20% に開けたときの流量の増え方より、80% から 90% に開けたときの増え方のほうがずっと大きい」という形だと覚えてください。
2. 有効流量特性|配管に入れると変わる
実際の配管系には、配管の摩擦、他の弁、ポンプの特性など、いろいろな抵抗要素があります。弁はその一部です。

計装の教科書は、現象をこう説明しています。流量が小さいときは配管の圧力損失が小さいので、ポンプの圧力の大部分が弁にかかり、弁差圧は大きい。流量が大きいときは配管の圧力損失が大きくなり、弁差圧は小さくなる。 弁差圧が変われば同じ開度でも流量が変わるので、固有特性とは違った関係になります。これが有効流量特性です。
配管の圧力損失は流量の2乗に比例して増えます。だから、弁本体をリニアにすると、流量が少ないときは弁差圧が増えて少し開いただけで沢山流れ、流量が多くなると弁差圧が減って開度に比例した流量が流れません。配管やポンプの特性を加味し、流量の多少にかかわらず開度に比例した流量制御ができるように、イコールパーセント特性が用意されています。
ハンドブックはこれを電気回路のアナロジーで扱い、配管の抵抗と弁の抵抗の比を K として、K が小さいほど(配管抵抗が大きいほど)固有特性が大きく変化する図を示しています。イコールパーセント弁でも、配管の抵抗が弁の2倍(K=0.5)になると、ほぼリニアな有効特性に変わります。
3. 特性の選び方|圧損比で決める
計装の教科書は、制御対象と、配管系全体に占める弁の圧損の比率で選ぶ表を示しています。
| 制御対象 | 配管系全体に占める弁の圧損 | 弁の流量特性 |
| 流量制御 | 40% 以下 | イコールパーセント |
| 液位制御 | 40% 以上 | リニア |
| 圧力制御 | 50% 以下 | イコールパーセント |
| 温度制御 | 50% 以上 | リニア |
考え方は単純です。弁の圧損比が小さい(配管の抵抗が大きい)系では有効特性が固有特性から大きくずれるので、あらかじめ曲がったイコールパーセントを入れて、結果として直線に近づける。弁の圧損比が大きい系ではずれが小さいので、リニアのままでよい。
ハンドブックも同じ趣旨で、イコールパーセントが有利なのは「管路系の摩擦損失が大きい場合」と「常用流量に比べて小流量での頻繁な運転が予想されない場合」、リニアが有利なのは「調節弁差圧がほぼ一定の場合」と「固形粒子を含みアブレーションが予想される場合や、キャビテーションの初生を中間開度で遅らせたい場合」としています。
ハンドブックは、弁の固有特性を選ぶ目的を「実際のプロセスに弁が組み込まれた際に、できるだけコントローラの PID 設定を調整することのないように」と書いています。有効特性が直線に近ければ、低流量でも高流量でも同じ PID パラメータで安定します。曲がっていると、負荷によって制御が速すぎたり遅すぎたりします。
4. 弁差圧は配管損失の 1/3 以上
有効特性を固有特性に近く保つには、弁のインピーダンス(抵抗)を配管のそれより十分大きく取る必要があります。言い換えると、弁での圧力損失を、配管系の圧力損失に見合った大きさにすることです。ハンドブックは、一般に全開時の弁差圧が配管系の流動摩擦損失の 1/3 以上であることが望ましく、特に差圧が大きいときでも 1/6 程度は要る、としています。

「弁の圧損はもったいない」と小さくしすぎると、弁はほとんど流量を制御できなくなります。ポンプの揚程を決めるときに、調節弁の分の差圧を確保するのはこのためです。
5. バイパス弁を併用すると何が起きるか
調節弁のサイズが足りないとき、流量を確保するためにバイパス弁を少し開けて併用することがあります。ハンドブックはこの場合の有効特性を計算し、バイパス弁による一定流量の嵩上げと引き換えに、流量特性が固有特性から著しく変化することを示しています。特に弁差圧が小さい(K が小さい)場合には、制御性能は極めて悪化します。
バイパス弁を開けたまま運転しているループで制御が落ち着かないなら、原因はここかもしれません。根本対策は弁のサイズ見直しです。
6. 現場で見る場所
- 弁の特性:銘板やデータシートに EQ%(イコールパーセント)か LIN(リニア)かが書いてある
- 開度と流量の関係:トレンドで、開度 50% のときの流量が最大の何 % か。イコールパーセントなら半分よりずっと少なくて正常
- 弁差圧:弁前後に圧力計があれば、全開近くで差圧がほとんど無くなっていないか。無ければ弁が絞れていない
- バイパス弁:全閉か。少し開けて運転していないか
- 開度の常用域:常に 90% 以上や 10% 以下で運転していれば、サイズが合っていない
7. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 固有流量特性と有効流量特性の違いは何ですか。
- リニア弁を配管に入れると、低流量側でどんな不都合が起きますか。
- 全開時の弁差圧は、配管系の摩擦損失に対してどのくらい要りますか。
答えは順に、固有は弁差圧一定での関係でプラグの形で決まる、有効は配管に入れたときの関係で流量による弁差圧の変化でずれる/少し開けただけで沢山流れる(弁差圧が大きいため)/1/3 以上(差圧が大きいときでも 1/6 程度)、です。
まとめ
調節弁の開度と流量の関係は、プラグの形で決まる固有流量特性と、配管に組み込んだときに変わる有効流量特性の2段階で決まります。配管の圧損が流量の2乗で増えるため、リニア弁は低流量で流れすぎ、高流量で増えなくなり、それを補うのがイコールパーセントです。
選定の目安は弁の圧損比で、流量・圧力制御で圧損比が小さければイコールパーセント、液位・温度制御で圧損比が大きければリニアです。全開時の弁差圧は配管損失の 1/3 以上を確保し、バイパス弁での嵩上げは制御性を著しく損なうと覚えてください。
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参考文献
- 山武 調節弁ハンドブック編纂委員会編『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック 改訂第2版』日本工業出版, 第2章 2.1「流量特性」(固有流量特性と有効流量特性、弁特性の選定) Amazonで見る
- 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 3.1.5「調節弁の流量特性」 Amazonで見る
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