動画解説はこちら|YouTube

真空配管のコンダクタンスの求め方|分子流・粘性流・中間流と直列・並列計算

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

真空ポンプの排気速度が十分でも、吸込配管が細い、長い、曲がりが多い、弁やトラップが狭いと、容器から見た排気速度は低下します。この「気体の通りやすさ」を表す量がコンダクタンスです。

真空配管のコンダクタンス計算で難しいのは、式を代入することより、どの式を使うかを決めることです。同じ配管でも、排気が進むと粘性流から中間流、分子流へ移り、コンダクタンスが変わります。短管、エルボ、弁、トラップなどは、長い直管の式だけでは扱えません。

この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、SI単位での基本式、流れ領域の選び方、配管要素の合成、実効排気速度までの計算手順を整理します。

この記事の結論

  • コンダクタンスは C=Q/(p₁-p₂) で定義し、Qはガススループット、p₁とp₂は要素両端の絶対圧力です。
  • 長い円形配管では、粘性流は概ね D⁴/L、分子流は D³/L に比例します。細い吸込配管は大きなボトルネックになります。
  • 式は圧力名称だけで選ばず、原則として Kn=λ/D、空気・室温近傍の実用計算では p̄D を確認します。
  • 中間流を C_v+C_m だけで計算すると大きめになるため、補正式を使います。
  • 直列要素は逆数和、並列枝は同じ上流・下流圧力へつながる枝だけを加算します。
  • 最終的に必要なのは配管のCだけでなく、ポンプ速度と組み合わせた容器位置の実効排気速度S_eです。

1. コンダクタンスとは

コンダクタンス C は、配管や部品の両端に圧力差があるとき、どれだけのガススループットを通せるかを表します。この記事では、上流・高圧側を p₁、下流・低圧側を p₂ とし、p₁>p₂ と定義します。

Q=C(p₁-p₂)

したがって、

C=Q/(p₁-p₂)

です。

記号意味SI単位
p₁上流・高圧側の絶対圧力Pa(abs)
p₂下流・低圧側の絶対圧力Pa(abs)
QガススループットPa·m³/s
Cコンダクタンスm³/s、L/s

Qは、その位置での体積流量そのものではありません。局所の体積流量を q とすると、同じスループットを圧力 p と体積流量の積 Q=pq で表します。圧力が異なる二点では q が異なっても、定常・漏れなしなら Q は共通です。

m³/sの体積流量と、Pa·m³/sのスループットを混同しないことが、最初の単位チェックです。 Nm³/hやkg/hで与えられたガス量は、基準状態、温度、組成を確認してから換算します。

上流高圧側p1から下流低圧側p2へ流れるガススループットQと、配管コンダクタンスCを圧力差から求める定義

コンダクタンスは部品固有の一定値とは限りません。粘性流では平均圧力や粘度に依存し、中間流では流れ領域に応じて変化します。弁開度、堆積物、凝縮液、ガスケットのはみ出しでも実際の値は変わります。

2. 計算前にそろえる入力値

式へ代入する前に、対象区間と単位を固定します。

入力確認内容よくある誤り
D実際の最小内径、m呼び径や外径を使う
L配管中心線に沿った長さ、m平面上の直線距離を使う
p₁,p₂要素入口・出口の絶対圧力、Pa(abs)ゲージ圧や容器圧だけを使う
p̄(p₁+p₂)/2、Pa(abs)下流圧だけを代表値にする
T絶対温度、K℃をそのまま代入する
η対象温度での気体粘度、Pa·s液体粘度や別温度の値を使う
M_rガスの相対分子質量質量流量と混同する
形状・状態長管、短管、エルボ、弁、開度、汚れすべて直管へ置換する

配管径は呼び径ではなく、継手、弁座、フレキシブルホース、トラップ、ノズルを含む実流路の最小内径を確認します。段付きや急縮小がある場合は、一本の平均径へ丸めず要素を分けます。

真空系では、容器圧とポンプ吸気口圧が同じとは限りません。コンダクタンスを求めたい要素の両端圧力を使います。 圧力計が一か所しかない場合は、計算と実測を反復して圧力分布を合わせます。

3. 流れ領域を先に決める

真空配管内の流れは、気体分子の平均自由行程 λ と配管内径 D の比で整理できます。

Kn=λ/D

流れ領域Knの目安取り扱い
粘性流Kn<0.01連続流体として扱う
すべり流0.01<Kn<0.1壁面ですべりが現れるため補正を検討する
遷移流0.1<Kn<10分子同士と壁面衝突の両方を扱う
クヌーセン流(自由分子流)Kn>10分子と壁面の衝突を主体に扱う

平均自由行程は圧力が低いほど長くなります。そのため、同じ配管でも排気初期は粘性流、圧力が下がる途中は中間流、低圧側では分子流になります。

空気・室温近傍の長い円形配管をSI単位で概算するときは、算術平均圧力 p̄ と内径 D の積を用いた次の区分が実用的です。ここでは、記事で示す粘性流式・中間流補正式・分子流式の三つを選び分けます。

p̄Dの範囲選ぶ領域
p̄D>0.67 Pa·m粘性流
0.02<p̄D<0.67 Pa·m中間流
p̄D<0.02 Pa·m分子流

境界付近は中間流として扱い、必要精度に応じて一般式やメーカーの計算資料を使います。

Knの4区分は希薄気体流れの一般的な機構区分、p̄Dの3区分は空気・室温近傍の長い円管で式を選ぶための成立目安です。両表の境界を一対一の換算値として扱わないでください。 とくに、すべり流域では壁面の非すべり条件から外れ始めるため、精度が必要ならすべり補正や一般式を検討します。

p̄Dの境界値は、空気・室温近傍で式を選ぶための実用目安です。ガス種や温度が異なるときは、Kn=λ/Dへ戻って確認します。 「低真空だから粘性流」「高真空だから分子流」と、圧力名称だけで決めないでください。

クヌーセン数の4流れ機構区分と、20度空気の長い円管で平均圧力と内径の積から粘性流式・中間流補正式・分子流式を選ぶ関係

4. 長い円形配管のコンダクタンス

ここでは、内径 D、長さ L の一様な円形配管で、L≫D、等温、単相の気体を仮定します。すべてSI単位で代入すると、コンダクタンスは m³/s で得られます。

粘性流

C_v=2.45×10⁻²×p̄D⁴/(ηL)

粘性流では、平均圧力 p̄ が高いほどコンダクタンスが大きくなります。同じ流れ領域、同じガス、同じ温度で比較すると、C_vは D⁴ に比例し、Lに反比例します。

分子流

C_m=38.1×√(T/M_r)×D³/L

分子流では、この円管式に圧力項がありません。同じガスと温度なら、C_mは D³ に比例し、Lに反比例します。相対分子質量が大きいガスほど小さくなります。

中間流

中間流では、粘性流成分と、補正した分子流成分を組み合わせます。

C_t=C_v+C_m×(λ_m+0.938×10⁻²p̄D)/(λ_m+1.16×10⁻²p̄D)

ここで λ_m は、対象温度における133 Paでの気体の平均自由行程です。273 K、133 Paでの値を λ_m0 とすると、

λ_m=λ_m0(T/273)

で換算します。

中間流の粘性項は p̄D⁴ です。また、分子流項の補正係数は分子側が 0.938×10⁻²、分母側が 1.16×10⁻² です。 直径の指数と係数を取り違えると、配管抵抗を大きく誤るため注意してください。

中間流を単純な C_v+C_m で求めると、コンダクタンスを大きめに見積もります。 排気時間やポンプ余裕を楽観的に見積もらないよう、補正式を使います。

長い円形真空配管の粘性流・中間流・分子流コンダクタンス式と、配管内径の4乗・3乗依存

配管径を2倍にしたとき、同じ流れ領域のままなら、分子流では 2³=8倍、粘性流では 2⁴=16倍 です。ただし、径を変えると Knやp̄Dも変わるため、設計変更後は流れ領域から判定し直します。

5. 短管・エルボ・孔は補正する

短い円形配管

長さが内径以下の短管 L≤D では、長管式を実長のまま使うと入口・出口の影響を無視します。

分子流では、実長 L の代わりに L′=L+4D/3 を用いて長管の分子流式へ代入します。

粘性流の短管にも補正式がありますが、求めたいスループットが式に入るため反復計算になります。

短管では「長さが短いからコンダクタンスは無限大」とはなりません。入口・出口の制限が残ります。 実務ではメーカー計算ツールや部品データも併用します。

曲がり管・エルボ

曲がり管やエルボは、配管の中心線に沿った実長 L_c に補正を加え、相当長さを L_e=L_c+1.33D として扱います。

L_cは入口から出口を直線で結んだ距離でも、水平長と垂直長を外側で足した値でもありません。流路中心線に沿った長さです。 複数の曲がり、ティー、急拡大・急縮小は一つの平均長さへ丸めず、構成要素を分けて評価します。

孔・オリフィス

平均自由行程が孔径より十分大きい分子流では、薄い孔のコンダクタンスは C=36.38A√(T/M_r) です(A:孔面積 m²、T:K、C:m³/s)。

高圧側で圧力比が大きく、圧縮性やチョーク流れが問題になる条件へ、分子流の孔式を流用してはいけません。 その場合は圧縮性流体の式、バルブメーカーのデータ、またはプロセスシミュレーションを使います。

6. 弁・トラップ・バッフルはメーカー値を確認する

形状が複雑な弁、トラップ、バッフル、セパレーター、フレキシブルホースなどは、メーカーのコンダクタンス値や実測値を使うのが基本です。そのとき、表示値が何を含むかを確認します。

記号表す範囲
C_x部品本体だけのコンダクタンス
C_0容器や配管から部品入口へ入る絞りのコンダクタンス
C_c入口絞りと部品本体を直列合成した値

入口絞りと部品本体を含む合成値は、

C_c=(C_0C_x)/(C_0+C_x)

です。

メーカーによって、部品コンダクタンスを C_x で示すか、入口を含む C_c で示すかが一定しない例があります。

仕様表の値が部品単体か入口込みかを確認し、入口コンダクタンスを二重に加えないでください。 また、全開値を調節中の弁へ使わず、対象ガス、温度、圧力域、流れ方向、弁開度、取付姿勢を合わせます。

短管の分子流有効長さ、エルボの中心線相当長さ、入口絞りと部品本体のコンダクタンス表示範囲

凝縮液、ミスト、粉体、ポリマーなどが流路へ滞留すると、幾何形状から求めた乾燥ガスのコンダクタンスより小さくなります。液封、二相流、堆積・閉塞がある状態へ、単相気体の式を適用してはいけません。

7. 直列・並列と実効排気速度

直列接続

一つの流路に配管、弁、トラップなどが順番に並ぶとき、合成コンダクタンス C_total は逆数和です。

1/C_total=1/C₁+1/C₂+1/C₃+…

合成値は各要素の値より小さくなります。小さなコンダクタンスの要素一つが、系全体のボトルネックになります。

並列接続

同じ上流圧力と同じ下流圧力の二つのノード間に枝が並ぶとき、

C_total=C₁+C₂+C₃+…

です。

並列式を使えるのは、各枝の両端圧力が共通の場合だけです。 各枝の前後に共通ヘッダーがあるなら、枝群の合成値に、上流ヘッダーと下流ヘッダーを直列で組み合わせます。

直列接続の逆数和と、同じ二つの圧力点間にある三つの並列枝のコンダクタンス加算

ポンプ吸気口の排気速度を S_p、容器からポンプまでの合成コンダクタンスを C_total とすると、容器位置の実効排気速度 S_e は、

1/S_e=1/S_p+1/C_total

すなわち、

S_e=(S_pC_total)/(S_p+C_total)

です。

ポンプを大型化しても、配管のコンダクタンスが小さいままでは、容器位置の排気速度は頭打ちになります。 ポンプ交換前に、吸込配管と部品のボトルネックを確認します。

8. 計算例|50 mm配管を圧力域ごとに求める

空気20℃の一様な円形配管について、同じ配管を三つの平均圧力で計算します。

条件値
内径 D0.050 m(50 mm)
長さ L2.0 m
温度 T293 K
空気の相対分子質量 M_r28.97
空気の粘度 η1.81×10⁻⁵ Pa·s
273 K、133 Paでの平均自由行程 λ_m04.54×10⁻⁵ m

平均圧力100 Pa

p̄D=100×0.050=5.0 Pa·m

5.0>0.67なので粘性流式を使い、

C=0.423 m³/s=423 L/s

です。

平均圧力5.0 Pa

p̄D=5.0×0.050=0.25 Pa·m

0.02<0.25<0.67なので中間流補正式を使い、

C=0.0273 m³/s=27.3 L/s

です。

平均圧力0.10 Pa

p̄D=0.10×0.050=0.005 Pa·m

0.005<0.02なので分子流式を使い、

C=0.00757 m³/s=7.57 L/s

です。

同じ配管でも、局所の平均圧力によってコンダクタンスは 423→27.3→7.57 L/s と変わります。これは三つの平均圧力における局所計算例であり、排気時間に沿った連続曲線そのものではありません。

次に、平均圧力5.0 Paの条件で、配管 27.3 L/s と全開弁 80 L/s を直列にすると、

C_total=1/(1/27.3+1/80)=20.4 L/s

です。さらにポンプ吸気口の排気速度 S_p=120 L/s を組み合わせると、

S_e=1/(1/120+1/20.4)=17.4 L/s

となります。

内径50ミリメートル長さ2メートルの真空配管で平均圧力ごとにコンダクタンスを計算し、弁とポンプを直列合成する例

120 L/sのポンプを付けても、この条件で容器位置から得られる速度は17.4 L/sです。 ただし、ポンプ速度、弁の値、配管コンダクタンスはいずれも対象圧力で確認し、圧力が変わる区間では計算し直します。

9. 実機の計算手順

実機では、次の順に計算すると式の選択と二重計上を防げます。

  1. 容器からポンプ吸気口までの流路を、直管、短管、曲がり、弁、トラップ、バッフル、共通ヘッダーへ分割する
  2. 各要素の実内径、中心線長さ、開度、状態を確認する
  3. 対象区間の入口・出口絶対圧力から p̄ を求める
  4. ガス種と温度から λ、η、M_r をそろえる
  5. Knまたは実用目安のp̄Dで、要素ごとに流れ領域を判定する
  6. 直管式、短管補正、エルボ補正、メーカー部品値を使い分ける
  7. 同じ単位へ換算し、直列・並列の接続どおりに合成する
  8. ポンプの圧力別排気速度 S_p(p) と組み合わせて S_e(p) を求める
  9. 計算したスループットから各部圧力を更新し、必要なら反復する
  10. 実測排気曲線と圧力差で計算結果を検証する

圧力分布が不明な最初の計算では、容器圧とポンプ吸気口圧を仮定して C と Q を求め、その Q に整合する圧力へ更新します。粘性流と中間流では C が p̄ に依存するため、一回の代入だけで終わらない場合があります。

計算書には、各要素の圧力域、使用式、内径、長さ、ガス条件、弁開度、メーカー値の定義を残します。最終合成値だけでは、運転後にボトルネックを追跡できません。

10. 排気が遅いときの現場確認

正常時の排気曲線と比べ、どの圧力区間から遅くなったかを確認します。

観察優先して確認する項目主な原因候補
排気初期から遅い主弁開度、バイパス、吸込配管差圧、ドレン、ポンプ回転・電流弁の開度不足、閉塞、液滞留、粘性流域の能力低下
圧力が下がる途中から遅い切換え弁、ブースター投入条件、弁・トラップの最小流路シーケンスずれ、中間流域のC見積り違い、部品抵抗
低圧側だけ遅い配管径、曲がり、ホース、ガスケット、表面状態分子流域の配管制限、放出ガス、実漏れ、汚染
整備後に悪化ガスケット内径、弁向き、部品型式、仮設ホース流路へのはみ出し、口径違い、組付け違い

圧力計を容器側とポンプ側へ置ける場合、両者の差が以前より大きくなったかを確認します。同じスループットで圧力差が増えていれば、流路のコンダクタンス低下が疑われます。

ただし、圧力差の増加だけでは原因部品を特定できません。弁開度、差圧、温度、ドレン、凝縮器、トラップ、フィルターの状態を系統順に確認します。

排気を速める目的だけで、ミストセパレーター、コンデンサー、トラップ、逆止機能、保護インターロックを無断でバイパスしないでください。 ポンプ損傷、可燃性混合気、腐食性ガスの放出、液・粉体の吸込みにつながるおそれがあります。

11. 運転・保全のチェックリスト

  • [ ] 正常時と同じ製品量、温度、ガス負荷で比較したか
  • [ ] 遅れ始めた圧力区間を排気曲線で確認したか
  • [ ] 弁の指示だけでなく実開度と作動を確認したか
  • [ ] ドレン、凝縮液、粉体、堆積物による流路縮小を確認したか
  • [ ] 整備後のガスケット、ホース、部品口径を確認したか
  • [ ] 真空計の位置、レンジ、汚れ、ガス種依存を確認したか
  • [ ] 保護機器をバイパスせず、設備SOPに従って復旧したか

コンダクタンス不足は、ポンプの能力不足と見分けにくい異常です。容器側とポンプ側の圧力、弁状態、排気曲線を一緒に残すと切り分けやすくなります。

12. 関連記事

13. まとめ

式は圧力名称だけで選ばず、Kn=λ/Dまたは空気・室温近傍のp̄Dで流れ領域を判定し、要素ごとのコンダクタンスを直列・並列の接続どおりに合成します。

最後にポンプ吸気口の排気速度と合成して容器位置の実効排気速度を確認し、排気が遅いときは遅れ始めた圧力域と流路の圧力差からボトルネックを探してください。

参考文献

  • 真空技術基礎講習会運営委員会編『わかりやすい真空技術 第3版』第1章1.7「真空中の気体の流れ」、第5章5.2「実効排気速度」 Amazonで見る
  • 化学工学協会編『化学工学便覧 改訂五版』第2章2・5「不連続流体の移動現象」、第5章5・6・3「真空装置」
  • 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』第17章「真空装置」17・4「真空装置の設計」
化学プラントニュース―週報と事故速報をわかりやすく紹介するnoteマガジン PLANT NEWS ON NOTE 化学プラントニュース 化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。 noteで最新ニュースを読む