熱Ⅲの燃焼ガス分析と、燃焼による設備・環境への障害の論点を表で並べました。測る成分と分析法、O₂・CO・CO₂・NOx などの分析計、ばいじん、NOx・SOx、高温腐食と低温腐食です。
燃焼管理で測る成分とガス分析法の分類 ── 空気比はO₂で知る。化学的分析は回分
| 燃料と空気比(完全燃焼) | 乾き排ガス中の CO₂ | 乾き排ガス中の O₂ |
|---|
| メタン、空気比 1.2 | 9.6% | 3.8% |
| メタン、空気比 1.5 | 7.5% | 7.5% |
| 重油(炭素 87%・水素 13%)、空気比 1.2 | 12.8% | 3.7% |
| 重油(同)、空気比 1.5 | 10.1% | 7.3% |
なぜ:CO₂ は空気比 1 付近で最大になり、空気が多くても(薄まる)少なくても(CO が出る)下がります。山の形なので、一つの CO₂ の値に空気比が二つ対応します。O₂ は空気比とともに増え続けるので一つに決まり、上の表のとおり燃料が違ってもほとんど同じ値になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 排ガスの CO₂ の割合が分かれば、空気比は一つに決まる | × | 山の形なので二つ。O₂ なら一つに決まる |
| 燃料が変わるときや混焼のときは、空気比を知るのに O₂ を測るのがよい | ○ | O₂ は燃料の種類でほとんど変わらない |
| オルザット法などの化学的分析法は、物理的分析法より迅速 | × | 回分なので迅速性で劣る。物理的の多くは連続 |
| オルザット装置で酸素を吸収させる液は、塩化第一銅のアンモニア溶液 | × | アルカリ性ピロガロール。塩化第一銅は CO、CO₂ は水酸化カリウム |
| オルザットのビュレットを水ジャケットで包むのは、温度による体積の変化を防ぐため | ○ | 体積の減りで成分を量るから |
- 化学的分析法といえるのは、オルザット法・ヘンペル法・各種の滴定法などの容量分析だけ。光の吸収、熱伝導率、磁性などを測るのが物理的分析法。
- 物理的分析法でも、ガスクロマトグラフ法や発色操作のある吸光光度法は連続測定に向かない。
- 試料ガスは、ダクトの曲がりや断面が急に変わる所を避けて採る。流れが整い、空気の漏れ込みやダストの堆積のない所を選ぶ(JIS K 0095)。
- 表の値は完全燃焼として計算した値。重油の硫黄・窒素・酸素・水分は無視した。
関連:排ガス分析から空気比を求める
酸素の分析(磁気式・ジルコニア式) ── 常磁性と酸素イオンの通りやすさを使う
| 方式 | 使う性質 | 注意 |
|---|
| 磁気式 | 酸素の強い常磁性。体積磁化率は酸素 100 に対し、空気 21.6、一酸化窒素 48.3、窒素 −0.42 | ほとんどのガスは反磁性(負の値)。一酸化窒素も常磁性が大きい |
| ジルコニア式 | 500℃以上で酸素イオンを通す安定化ジルコニアを使った濃淡電池の起電力 | CO・メタンなどの可燃性ガスは高温で O₂ と反応して誤差。SO₂ は素子を腐食する |
なぜ:酸素分子は対になっていない電子を2個もつので、磁界に強く引かれます(常磁性)。ほとんどのガスは逆に弱く反発する反磁性なので、磁気の力を測れば酸素だけを選んで測れます。ジルコニアは高温で酸素イオンを通すので、両側の酸素分圧の差が起電力になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 磁気式酸素計は、酸素が強い反磁性を示すことを使う | × | 強い常磁性。多くのガスが反磁性 |
| 酸素が強い常磁性を示すのは、対になっていない電子を2個もつから | ○ | 不対電子が2個 |
| ジルコニア素子は常温でも酸素イオンを通すので、加熱せずに使える | × | 500℃以上に加熱して使う |
| ジルコニア式の起電力は、両側の酸素分圧の比の対数に比例する | ○ | E=(RT/4F) ln(P₁/P₂) |
| ジルコニア式は、CO やメタンを多く含む試料に向く | × | 高温の素子の近くで O₂ と反応してしまう |
- 起電力の式 E=(RT/4F) ln(P₁/P₂) で、R は気体定数、T は絶対温度、F はファラデー定数。片側(比較ガス)の分圧が分かれば、もう片側の分圧が出る。
- 4F の 4 は、酸素分子1個が電子4個を受け取って酸素イオン2個になることによる。
- 安定化ジルコニアは、酸化ジルコニウムと酸化カルシウムの固溶体。
関連:燃焼ガスの組成
COとCO₂の分析(赤外線吸収) ── COとCO₂は赤外線の吸収で測る
| 方式 | 使う性質 | 注意 |
|---|
| 非分散赤外線式(CO・CO₂ など) | 異なる原子でできた分子が、固有の波長の赤外線を吸う | N₂・O₂・H₂ のように同じ原子2個の分子は吸わない。波長の重なる成分(CO の分析では H₂O・CO₂)は干渉フィルタセルで除く |
| 熱伝導率法(CO₂) | CO₂ の熱伝導率 0.0140 W/(m·K) が空気の 0.0237 より小さい | 水素(0.166)が混じると負の誤差。不完全燃焼の排ガスに注意 |
なぜ:赤外線を吸うのは、振動すると電気的な偏りが変わる分子です。CO・CO₂・H₂O・CH₄ のように異なる原子でできた分子は、固有の波長を吸います。その波長の光がどれだけ弱まったかで濃度が分かります。同じ原子2個の分子は吸わないので測れず、吸収の波長が重なる成分は邪魔をします。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 酸素や窒素は赤外線をよく吸うので、赤外線吸収法で酸素を測れる | × | 同じ原子2個の分子は赤外線を吸わない |
| CO を赤外線で測るとき、水蒸気と CO₂ は干渉ガスになる | ○ | 干渉フィルタセルで先に除く |
| 非分散赤外線式の CO 計では、比較セルに CO を封入する | × | 比較セルは窒素など。CO は検出器に封入 |
| CO₂ の熱伝導率は空気より大きいので、熱伝導率法で測る | × | 小さい(0.0140 と 0.0237) |
| 熱伝導率法の CO₂ 計に水素が混じると、CO₂ を実際より低く示す | ○ | 水素の熱伝導率が非常に大きい |
- 非分散赤外線式の検出器には CO が適当な分圧で封入され、金属薄膜で試料側と比較側に仕切られている。
- 赤外線吸収方式は、NO や SO₂ の自動計測器にも使われる。
関連:NOx・SOx・炭化水素の分析
NOx・SOx・炭化水素の分析とガスクロマトグラフ ── NO₂はNOにして測る
| 対象 | 方式 | 使う性質・押さえる所 |
|---|
| NO・NOx | 化学発光方式(もっともよく使われる) | NO が O₃ と反応してできる励起状態の NO₂ が光る。NOx は NO₂ をコンバータで NO に変えてから測る |
| SO₂ | 溶液導電率方式など | 過酸化水素水に吸収させ、導電率の変化で測る。HCl・NH₃・NO₂ も導電率を上げる |
| 炭化水素 | 水素炎イオン化検出器(FID) | 有機物が水素炎に入るとイオン電流が増える。無機ガスにはほとんど感じない |
| 多成分 | ガスクロマトグラフ | カラムで分け、ピークまでの時間で同定、ピーク面積などで定量。連続測定はできない |
なぜ:NO とオゾンの反応で光るのは NO だけなので、そのままでは NO₂ は数えられません。NO₂ を先に NO に戻せば、NO と NO₂ の合計(NOx)を一つの光で測れます。どの分析計も「その成分だけが持つ性質」を使い、同じ性質を持つ共存ガスが誤差のもとになります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 化学発光式で発光の強さから直接分かるのは NO の濃度 | ○ | もとからある NO₂ は光らない |
| 化学発光式で NOx を測るときは、NO をすべて NO₂ に変えてから導く | × | 逆。NO₂ をすべて NO に変える |
| FID は無機ガスに感度が高いので、CO₂ や N₂ の定量に向く | × | 有機物(炭化水素)向き。無機ガスにはほとんど感じない |
| ガスクロマトグラフでは、ピークが出るまでの時間から濃度を求める | × | 時間は同定、濃度はピーク面積など |
- コンバータにはモリブデン−カーボン系の還元触媒を充てんし、NO₂ をすべて NO にする。化学発光方式は共存する CO₂ の影響に注意する。
- NOx の自動計測器には、化学発光方式のほか赤外線吸収方式・紫外線吸収方式がある。
- FID は水素炎の上の2枚の電極に直流電圧をかけ、流れる微小なイオン電流を増幅して測る。感度は分子中の炭素数にほぼ比例する。
- SO₂ の自動計測器には、溶液導電率方式のほか赤外線吸収・紫外線吸収・紫外線蛍光方式がある(JIS B 7981)。
関連:NOx・SOxの生成と排煙処理
ばいじんと集じん ── 未燃分は燃焼で減らし、残りは集じん装置で捕る
| 燃料 | ばいじんの主体 | 中身 |
|---|
| 石炭 | 灰分 | 灰分が主で、若干の未燃分を含むダスト。微粉炭燃焼では灰の約80%が炉外へ出る |
| 気体・軽質油 | 気相析出形(すす) | 酸素不足で炭化水素が脱水素・重縮合してできた微小粒子。直径は数 nm〜100 nm 程度 |
| 重質油 | 残炭形(セノスフェア) | 油滴が蒸発・分解した後の残留炭素が燃え残ったもの。数百 μm のものもある |
なぜ:ばいじんは、燃料の灰分と、燃え残った炭素でできています。燃え残りの分は燃焼で減らせます(適正な空気比と、燃料と空気のよい混合)。灰分は燃焼では消えないので、燃料を選ぶか、集じん装置で捕まえるしかありません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 気体燃料や軽質油の燃焼で出る未燃分は、残炭形が主 | × | 気相析出形(すす)。残炭形は重質油 |
| 炭素と水素の比(C/H 比)が大きい燃料ほど、一般にすすが出やすい | ○ | 拡散炎か予混合炎かで傾向は変わる |
| 電気集じん装置の圧力損失は、ベンチュリスクラバより大きい | × | 電気集じん 10〜20、ベンチュリスクラバ 300〜900 mmH₂O |
| 重質油から軽質油に替えると、ばいじんだけでなく SOx・NOx の対策にもなる | ○ | 燃料中の S 分・N 分も少ない |
- 圧力損失は電気集じん装置が 10〜20 mmH₂O と、重力集じん装置(沈降室)と並んで小さい。ベンチュリスクラバは 300〜900 mmH₂O ともっとも大きい。
- 集じん率が高いのは電気集じん装置とバグフィルタ。わが国では洗浄式・遠心力式・電気集じん式が多い。
- 同じ条件で燃やしたときのすすの出やすさは、天然ガス・LPG がもっとも少なく、タールがもっとも多い。
- 未燃分を減らす手は、適正な空気比と燃料と空気のよい混合が基本。霧化・細化の改善、水・水蒸気噴射、排ガス循環燃焼、エマルジョン燃料も効く。
関連:すすの生成と火炎の放射(輝炎)
NOx・SOxの生成と排煙処理 ── SOxは燃料か排ガス、NOxは燃焼と還元で
| 段 | SOx | NOx |
|---|
| できる入口 | 燃料中の燃焼性硫黄がほぼ全量 SO₂ に。その 1〜5% が火炎中で SO₃ に | 空気中の N₂ が高温で酸化(Thermal NO)、燃料中の N から(Fuel NO) |
| 燃料で減らす | 低硫黄燃料を使う | N 分の少ない燃料(軽質油など)へ転換 |
| 燃焼で減らす | 一般には難しい(流動層は石灰石で炉内脱硫) | 低NOx燃焼(2段燃焼・排ガス再循環など) |
| 排ガスで除く | 排煙脱硫:湿式が主流で、石灰−石こう法がもっとも多い | 排煙脱硝:アンモニアを還元剤に、触媒で N₂ に還元(乾式、250〜450℃) |
なぜ:燃焼性硫黄はほとんど全部が SO₂ になるので、出る量は燃料の硫黄で決まり、燃やし方ではほとんど変わりません。だから SOx は燃料か排ガスで除きます。NOx は燃やし方(温度・酸素・時間)で生成量が変わるので燃焼で抑え、残りを排ガスの還元で除きます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 燃焼で出る SO₂ の量は、燃料中の燃焼性硫黄からほぼ見積もれる | ○ | ほとんど全量が SO₂ になる |
| SO₂ が SO₃ になる割合は、空気比が低いほど大きい | × | 空気比・火炎温度が高いほど、滞留時間が長いほど大きい |
| 燃料中の窒素は、空気中の N₂ より NOx になりにくい | × | 燃料中の N の結合のほうがはるかに弱く、なりやすい |
| 排煙脱硝でもっとも多いのは、石灰石を還元剤にする乾式法 | × | アンモニアを還元剤に触媒で N₂ に。石灰石は脱硫に使う |
| 湿式の石灰−石こう法は脱硫率が高く負荷変動にも強いが、水を多く使う | ○ | 高度な排水処理も要る |
- SO₃ は燃焼ガス中の水蒸気と硫酸になり、燃焼ガスの露点を急に上げる。凝縮した硫酸にばいじんが付いた塊は、アシッドスマットとして煙突から出る。
- 燃料中の窒素が NOx になる割合は、燃料の N 分が低いほど、空気比が高いほど上がる。
- 脱硫には、石灰のスラリーを噴霧する半乾式(ドライスクラバ)や、流動層の燃焼室に石灰・ドロマイトを入れる乾式もある。一般のボイラの燃焼室内での脱硫は効果があまり認められない。
- 大気汚染の対象になる窒素酸化物は NO と NO₂ で、その和を NOx で表す。光化学スモッグと酸性雨の原因物質。
関連:低NOx燃焼法
高温腐食と低温腐食 ── 低温腐食は硫酸の露点、高温腐食は灰の成分
| 項目 | 高温腐食 | 低温腐食 |
|---|
| 起こる所 | 過熱器・再熱器などの高温の伝熱面 | 空気予熱器・エコノマイザなどの低温の伝熱面 |
| 原因 | V・Na・Ni の酸化物を含む灰が付いて溶け、母材の酸化被膜を溶かす。V₂O₅ は 675℃ 以上で溶け、Na₂SO₄ があると 550〜580℃ に下がる | SO₃ と水蒸気で硫酸ができ、燃焼ガスの露点が最高 160℃ くらいまで上がる。面の温度が酸露点より下がると硫酸が凝縮 |
| 防ぎ方 | 面の温度を下げる配置、スートブロワ、ドロマイトで灰の融点を上げる、低V・低Naの燃料、スケール除去 | 低硫黄燃料、面の温度を酸露点以上に、ドロマイト・アンモニアで SO₃ を中和、低空気比燃焼で SO₃ を減らす |
なぜ:どちらも、燃料の不純物が伝熱面の上で液体になると腐食が進みます。高温側では灰が溶けて金属を守る酸化被膜を溶かし、低温側では硫酸の蒸気が結露します。高温腐食は面の温度を灰の融点より下げ、低温腐食は面の温度を酸露点より上に保つのが基本です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|
| 高温腐食は、V や Na を含む灰が空気予熱器やエコノマイザに付いて起こる | × | 過熱器・再熱器など高温の面。低温の面は硫酸による低温腐食 |
| 灰に Na₂SO₄ が共存すると灰の融点が下がり、高温腐食が増える | ○ | 550〜580℃ に下がる |
| 高温腐食を防ぐため、ドロマイトを入れて灰の融点を下げる | × | 上げて、高温部に灰を付きにくくする |
| 低温腐食を防ぐには、空気予熱器の表面温度を酸露点以下にして硫酸を回収する | × | 酸露点以下にならないようにする |
| 低空気比燃焼は SO₂ から SO₃ への転換を減らすので、低温腐食の対策になる | ○ | 空気比が高いほど SO₃ が多い |
- 灰の融点より低ければ、灰がたまってもスートブローなどで落としやすく、腐食は少ない。
- 雰囲気に SO₃ があると、高温腐食はさらに進む。
- HCl も塩酸になって、SO₃ と同じように低温腐食を起こす。
関連:過熱器・再熱器と蒸気温度の特性
出典:エネルギー管理士試験講座(省エネルギーセンター)熱分野Ⅲ「燃料と燃焼」1編 5・6章、2編 5章。同 熱分野Ⅳ「熱利用設備及びその管理」2編 1章
PLANT NEWS ON NOTE
化学プラントニュース
化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。
noteで最新ニュースを読む ↗