熱Ⅳの計測のうち、測定の誤差と伝送信号、温度・熱流・湿度の測り方の論点を並べました。温度は熱電対・測温抵抗体・放射温度計を、表と例題で比べます。
目次
- 測定の誤差と精度・不確かさ ── 系統誤差は校正で、偶然誤差は平均で小さくする
- 単位系と工業測定システム・伝送信号 ── 統一した信号で検出器と計器をつなぐ
- 熱電対の原理と法則 ── 起電力は両接点の温度だけで決まる
- 熱電対の種類と使い分け ── 貴金属は高温向き、卑金属は起電力が大きい
- 補償導線と基準接点補償 ── 補償導線で延ばし、基準接点の温度の分を補う
- 熱電対の施工と測温上の誤差 ── 挿入を深くして熱の逃げによる誤差を防ぐ
- 測温抵抗体とその他の温度計・熱流計 ── 導線抵抗の影響を結線の方式で減らす
- 放射温度計 ── 放射率の設定がずれると指示がずれる
- 湿度の測定 ── 乾湿球と露点計はどちらも温度で湿度を測る
測定の誤差と精度・不確かさ ── 系統誤差は校正で、偶然誤差は平均で小さくする

| 用語 | 中身 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 誤差 | 測定値−真の値 | 測定値が大きければ正、小さければ負 |
| 系統誤差 | 測定結果にかたよりを与える原因による誤差 | 原因が分かれば補正で除ける。計器の狂いは校正で見つけて除く |
| かたより | 母平均(無限回測った平均)−真の値 | 何回平均しても残るずれ |
| 偶然誤差 | 突き止められない原因によるばらつき | 分布は一般に正規分布になり、大きさは標準偏差で表す |
| 正確さ・精密さ・精度 | かたよりの小ささ・ばらつきの小ささ・両方を含めた総合的な良さ | 最近の JIS は精度の語を使わない方向で、不確かさを使う |
| 不確かさ | 真の値がある範囲の推定値 | JIS の例では、測定値を中心に 95% の確率で真の値が入る範囲 |
| 精度定格 | 形式仕様で許される最大誤差の限界(メーカーが明示) | ふつうスパン(上限値−下限値)に対する %(±( )%FS)。指示値に対する % もある |
なぜ:系統誤差はいつも同じ向きに同じだけ出るので、何回測って平均しても、平均は真の値でなく母平均に近づくだけです。原因を突き止めて補正・校正するしか消せません。偶然誤差は正にも負にも散るので、回数を重ねると打ち消し合い、平均は母平均に近づきます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 測定値が真の値より大きいとき、誤差は正の値になる | ○ | 誤差=測定値−真の値 |
| 同じ測定を何回も繰り返して平均すれば、系統誤差も小さくなる | × | 平均で減るのはばらつき。かたよりは補正・校正 |
| y=x₁·x₂ で、互いに無関係な偶然誤差による相対不確かさが 6% と 8% なら、y の相対不確かさは 10% | ○ | √(6²+8²) |
| スパン 300℃ で精度定格 ±1%FS の計器なら、許される最大誤差は指示値によらず ±3℃ | ○ | %FS はスパンが基準 |
| 測定範囲 −30〜120℃ の温度計のスパンは、120 と 30 の差の 90℃ | × | 120−(−30)=150℃ |
例題
熱量を「流量×温度差」で求めます。流量の相対不確かさは 2%、温度差の相対不確かさは 1.5% で、どちらも互いに無関係な偶然誤差です。熱量の相対不確かさを求めます。
①積の不確かさは二乗和の平方根:ΔQ/Q=√{(Δx₁/x₁)²+(Δx₂/x₂)²}(誤差伝播の法則)。
②数字を入れる:√(2²+1.5²)=√(4+2.25)=√6.25=2.5%。
③確かめる:単純に足した 3.5% より小さい。独立な誤差は、そのまま足すより小さく合成される。向きの分かった系統誤差なら、各量の誤差に寄与度を掛けて合計する(積で両方が同じ向きなら、相対誤差の和の 3.5%)。
- 誤差の原因は、測定の原理・方法、測定装置の狂い、測定条件や環境、測定者のくせや過失の4つ。過失による誤差(まちがい)は予測しにくく、除去もできない。
- 工業計器は性能を表示する前提の環境条件(基準動作条件)を決めている。大気の温度なら 23℃±2℃ など。外れた条件で使うと誤差が増える。
- スパンはレンジの上限値と下限値の差(−30〜120℃ なら 150℃)。フルスケールもふつう同じ意味。%FS の計器は、指示が小さいところほど指示値に対する誤差の割合が大きくなる。
関連:計器の精度・誤差・校正
単位系と工業測定システム・伝送信号 ── 統一した信号で検出器と計器をつなぐ
| 区分 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 発信器(検出器) | 測定値を検出して信号を送る。いわゆるセンサとほぼ同じ | 熱電対、電磁流量計検出器 |
| 発信器(変換器) | 検出器の信号を、受信器へ送る信号に変える | 温度変換器、電磁流量計変換器 |
| 発信器(伝送器) | 検出器と変換器が一体になったものをいうことが多い | 差圧伝送器 |
| 受信器 | 信号を受けて指示・記録・制御などを行う | 指示計、記録計、調節計、分散形制御システム、警報器 |
| 一体のもの | 発信器と受信器が一体でも、1つの測定システム | ガラス製棒状温度計、ブルドン管式圧力指示計 |
| 非統一信号 | センサの出力のまま送る | 直流 mV(熱電対を受信計器で直接受ける) |
| 統一信号 | 測定値の 0〜100% を、測定量によらず同じ範囲に対応させる | 電流 4〜20 mA DC、空気圧 20〜100 kPa |
なぜ:測定量ごとに信号の形がばらばらだと、受ける計器を検出器ごとに合わせなければなりません。測定値の 0〜100% を同じ 4〜20 mA に直しておけば、温度でも流量でも同じ規格の受信器や調節計につなげます。空気圧なら 20〜100 kPa です。信号は 0% の 4 mA から 100% の 20 mA まで一直線に増えます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 4〜20 mA の統一電流信号で、測定値がスパンの 75% なら信号は 15 mA | × | 4+16×0.75=16 mA |
| 熱電対は、検出器の信号を受信器向けの信号に直す変換器にあたる | × | 熱電対は検出器。変換器は温度変換器など |
| 温度の発信器も流量の発信器も、統一信号で送れば同じ規格の受信器で受けられる | ○ | 0〜100% の対応が測定量によらない |
| 空気圧で送る統一信号は、計量法の改正で 20〜100 kPa になった | ○ | 従来の 0.2〜1.0 kgf/cm² とは約2%違う |
例題
測定範囲 0〜300℃ の温度変換器が 9.6 mA を出しています。温度と、同じ測定値を空気圧の統一信号で送ったときの値を求めます。
①0% が 4 mA、100% が 20 mA なので、幅は 16 mA。
②測定値の割合:(9.6−4)÷16=0.35(35%)。
③温度:300×0.35=105℃。
④空気圧:20+80×0.35=48 kPa。
⑤確かめる:0 mA からでなく 4 mA から数える。9.6÷20=48% から 144℃ としない。
- 日本の単位は計量法の法定計量単位で、取引・証明に使うことが義務。新計量法は国際単位系(SI)に切り換えた。
- SI は7個の基本単位と2個の補助単位から組立単位をつくる。N=kg·m/s²、Pa=N/m²、J=N·m。
- 大きい量・小さい量は 10 の整数乗倍の接頭語を付ける。bar(10⁵ Pa)は特殊な分野に限り SI 単位と併用してよい単位で、法定計量単位でもある。
- 受信器には、パネル設置形と現場設置形がある。
熱電対の原理と法則 ── 起電力は両接点の温度だけで決まる

| 法則・用語 | 中身 | 使いどころ |
|---|---|---|
| ゼーベック効果 | 材質の異なる2本の金属線で閉回路をつくり、2つの接点を異なる温度に保つと電流が流れる | この電流を起こす起電力が熱起電力 |
| 熱起電力を決めるもの | 両接点の温度だけ | 金属線の太さ・長さ、接点以外の部分の温度には関係しない |
| 基準接点(冷接点) | 温度を一定に保つ側の接点。ふつう0℃ | もう一方が測温接点 |
| 均質回路の法則 | 単一で均質な材料の線は、温度分布がどうであっても熱起電力を出さない | 素線が使用で一部変質すると均質でなくなり、温度分布の影響を受ける |
| 中間金属の法則 | 途中に異種の金属線をはさんでも、その線の両端の温度が等しければ熱起電力は変わらない | 熱電対の出力を銅線で電圧計へ導ける |
| 中間温度の法則 | 直列につないだ熱電対の起電力は各々の和:E1·3=E1·2+E2·3 | 基準接点が一定温度でなくても、その温度 t₂ を測り、t₂ と0℃の間の起電力を足せば0℃基準の値に直せる(E1·0=E1·2+E2·0) |
| 温度目盛 | 水の三重点を 273.16 K とし、熱力学温度から 273.15 を引いた値がセルシウス度 | 水の三重点は 0.01℃。実用の目盛は ITS-90 |
なぜ:熱起電力は、2種類の金属の性質の違いから生まれます。均質な1本の線では途中に温度差があっても起電力が生まれないので、効くのは2種類の線がつながる2つの接点の温度だけです。だから基準接点の温度が決まっていないと、測温接点の温度は決まりません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 測温接点と基準接点の温度がそれぞれ変わらなければ、素線を太くしても長くしても熱起電力は同じ | ○ | 両接点の温度だけで決まる |
| 1種類の均質な金属線でも、途中に温度差があれば熱起電力が生じる | × | 均質回路の法則:生じない |
| 熱電対の途中に異種の金属線をはさむと、その線の両端の温度が違っていても熱起電力は変わらない | × | 変わらないのは両端の温度が等しいとき |
| 高温で素線の一部が変質すると、その部分の温度分布が熱起電力に影響しうる | ○ | 均質でなくなるから |
| 水の三重点はセルシウス度で 0.01℃ | ○ | 273.16−273.15 |
- 熱電対は2種類の非金属材料を組み合わせたものもある。
- +脚・−脚は、図の電流の向き(測温接点の温度が高いとき)で決める。実際の測定では、回路の一部を開いて電圧計を入れ、熱起電力を測る。
- 熱電対の長所:構造が簡単、価格が比較的安い、特性が金属線の材質だけで決まる、低温から高温まで測れる。短所:基準接点の温度補償が要る、高温・長時間で劣化して起電力が変わる、精度は測温抵抗体よりやや劣る。
- 国際温度目盛は改正のたびに温度値が変わり、ITS-90 で水の沸点は 99.974℃ になった。
熱電対の種類と使い分け ── 貴金属は高温向き、卑金属は起電力が大きい
| 記号 | +脚/−脚(常用限度) | 特徴 |
|---|---|---|
| B | 白金ロジウム(Rh 30%)/白金ロジウム(Rh 6%)(1,500℃) | JIS熱電対で使用温度がもっとも高い。100℃以下では起電力がほとんど出ない |
| R・S | 白金ロジウム(R は Rh 13%、S は Rh 10%)/白金(1,400℃) | R は白金系でもっとも多く使われる。S は日本ではほとんど使われない |
| N | ニッケル・クロム・シリコン系/ニッケル・シリコン系(850〜1,200℃) | Kの改良品で、JISでもっとも新しい。非白金系で使用温度がもっとも高い |
| K | ニッケル・クロム系/ニッケル系(650〜1,000℃) | JIS熱電対でもっとも多く使われる(旧 CA) |
| E | ニッケル・クロム系/銅・ニッケル系(450〜700℃) | JIS熱電対で熱起電力がいちばん大きい(旧 CRC) |
| J | 鉄/銅・ニッケル系(400〜600℃) | +脚の鉄線がさびやすい(旧 IC) |
| T | 銅/銅・ニッケル系(200〜300℃) | 細線の加工性が良く、実験用によく使われる(旧 CC) |
なぜ:温度と起電力の関係を比べると、白金系(B・R・S)は1℃あたりの起電力が小さい代わりに、常用限度が高いです。E・J・K は起電力が大きい代わりに、常用限度が低くなっています。高温まで要るなら白金系、そこまで要らなければ起電力が大きく扱いやすい卑金属系、と温度域で選びます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 同じ温度で比べると、JIS熱電対で熱起電力がもっとも大きいのはE | ○ | 旧クロメル・コンスタンタン |
| 白金系を除くJIS熱電対で、もっとも高温まで使えるのはK | × | N。同じ素線径でKより常用限度が高い |
| J熱電対で、さびやすいのは−脚の鉄線 | × | 鉄は+脚 |
| K熱電対の常用限度は、素線が細いほど高い | × | 太いほど高い(0.65 mm で 650℃、3.20 mm で 1,000℃) |
| 接地形のシース熱電対は、非接地形より応答が速いが、測定対象と電気的に絶縁できない | ○ | 非接地形はその逆 |
- 常用限度は空気中で連続使用できる温度の限度、過熱使用限度は必要上やむを得ないとき短時間使える限度。どちらも素線径で変わる。
- 熱電対はふつう保護管に入れるので、雰囲気への強さはさほど気にしなくてよい。ただし B・R・S は金属蒸気に弱いので、保護管にアルミナ(Al₂O₃)を使う。
- シース熱電対:細く薄い金属管(シース)に素線を通し、酸化マグネシウム(MgO)などで絶縁して曲げられるようにしたもの。細いので応答が速い。JIS にあるのは N・K・E・J・T で、記号の頭に S を付ける(例 SK)。露出形は応答がもっとも速いが、気密性・機械的強度が劣り JIS にはない。
- JIS にない熱電対では、高温用にタングステン・レニウム熱電対(0〜2,300℃)がある。極低温用はクロメル/金鉄熱電対(1〜300 K)。
関連:温度計の種類と選び方
補償導線と基準接点補償 ── 補償導線で延ばし、基準接点の温度の分を補う

| 部品・方法 | 役割 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 補償導線 | 熱電対から受信計器(または温度変換器)まで延ばす線 | およそ100℃以下で熱電対とほぼ同じ熱起電力特性。価格は熱電対よりかなり安い |
| エクステンション形 | 熱電対と同じ材質の心線を使う(例 KX) | 特性上は良いが、価格が高い |
| コンペンセーション形 | 異なる材質で、低い温度では熱電対とほぼ同じ特性の心線を使う(例 KCA・KCB・KCC) | 安いが、特性が一致しないので誤差が出る。使用温度範囲を考え、価格と精度の兼ね合いで選ぶ |
| 基準接点 | 補償導線が受信計器(または温度変換器)の端子につながる所 | ここの温度は一定とは限らない |
| 基準接点の温度補償 | 基準接点の温度 t₂ を測り、E2·0 に等しい電圧をつくって足す | E1·0=E1·2+E2·0(中間温度の法則) |
| 基準接点装置 | 基準接点の温度を一定に保つ装置(実験室形) | 氷点式・電子冷却式・補償式。精度は氷点式がいちばん高い |
なぜ:熱電対が出すのは、測温接点と基準接点の温度で決まる起電力です。基準接点が0℃より高いと、測った起電力は0℃基準の値より E2·0 だけ小さく出ます。その分を計器の側で足して0℃基準に戻すのが、基準接点の温度補償です。補償導線は熱電対とほぼ同じ特性なので、素線のまま延ばさなくても、基準接点を計器の端子まで移せます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 計器が遠いとき補償導線を使うのは、素線のまま延ばすより安く、低い温度では素線とほぼ同じ起電力が得られるから | ○ | 中間温度の法則の応用 |
| 補償導線の特性が熱電対とほぼ同じとされるのは、およそ300℃以下の範囲 | × | およそ100℃以下 |
| 熱電対と同じ材質の心線を使う補償導線を、コンペンセーション形という | × | 同じ材質はエクステンション形 |
| 基準接点の温度補償をしないと、端子が0℃より高い分だけ指示は低めに出る | ○ | E2·0 が足りない |
| 基準接点装置のうち、精度がもっとも高いのは電子冷却式 | × | 氷点式(魔法瓶の氷で冷やす) |
例題
計算のため、熱起電力は温度に比例し 1℃あたり 0.04 mV と仮定します(実際は正確には比例しません)。受信計器の端子(基準接点)が 30℃ のとき、測った熱起電力は 10.8 mV でした。測温接点の温度を求めます。
①基準接点の分:E2·0=0.04×30=1.2 mV。
②0℃基準に直す:E1·0=10.8+1.2=12.0 mV。
③温度:12.0÷0.04=300℃。
④確かめる:補償をせずに 10.8÷0.04 とすると 270℃ で、基準接点の温度の分(30℃)だけ低く出る。引くのではなく足す。
- 熱電温度計は、熱電対・補償導線・基準接点装置・温度変換器・受信計器でできている。
- 直接入力形は記録計や小規模な制御システムに多く、受信計器の端子部に基準接点の温度補償部が付く。統一信号形は温度変換器から 4〜20 mA DC か 1〜5 V DC を送り、大規模な計装に多い。実験室形は基準接点装置を使い、その先は銅線でつなぐ。
- 補償導線は現場に布設されることが多いので、耐候性や機械的強度をもたせている。
- 補償式の基準接点装置は、基準接点の温度補償部を独立させたもの。
熱電対の施工と測温上の誤差 ── 挿入を深くして熱の逃げによる誤差を防ぐ

| 誤差の原因 | 指示のずれ | 対策 |
|---|---|---|
| 挿入が短く、保護管・取付部を伝って熱が逃げる | 低め | 挿入を長く(金属保護管は外径の15〜20倍、非金属は10〜15倍)、細い保護管、取付部の保温 |
| 取付部が保温されていない | 放射伝熱で冷やされて低め | 取付部を保温する。保温がないままなら、保護管は熱伝導率の小さいものほどよい |
| 炉壁や火炎からの強い熱放射 | 炉内の気体の温度より高めになることが多い | 放射シールド |
| 表面に点で当てる | 熱電対を通して熱が逃げ、表面温度より低め | 素線を表面にはわせる |
| 検出器の熱容量が大きく、流れが遅い | 対象の温度になかなか一致しない(気体で著しい) | 熱容量の小さい検出器、流れの速い所に付ける |
なぜ:熱電対が示すのは、測温接点そのものの温度です。接点は流体から熱を受け取る一方で、保護管や素線を伝って外へ熱を逃がします。受け取りと逃げが釣り合う温度は、流体より低くなります。挿入を深くし、細くし、取付部を保温すれば、熱が逃げにくくなって接点が流体の温度に近づきます。配線や基準接点の補償が正しくても、このずれは直りません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 熱電対の挿入が短いと、測温接点の温度が壁や外界の温度の影響を受けて誤差が出る | ○ | 熱が逃げる |
| 保護管の挿入長さは、非金属保護管のほうを金属保護管より長め(外径の15〜20倍)にとる | × | 逆。金属で15〜20倍、非金属で10〜15倍 |
| 外気が冷たく管内の気体が高温の配管では、保護管を深く差し込むほど低めの誤差は小さくなる | ○ | 逃げる熱の割合が減る |
| 取付部に保温がない高温ガス配管では、熱伝導率の大きい保護管ほど誤差が小さい | × | 熱伝導率は小さいほどよい |
| 表面温度は、素線を測定面にはわせて付けると、点で当てるより表面温度に近く出る | ○ | 測定点からの熱の移動を防ぐ |
- 挿入長さを十分にとれないときは、なるべく細い外径のもの(シース熱電対など)を使う。
- 接触による影響は、測定対象の熱容量や熱伝導率が小さいほど、熱電対の熱容量や熱伝導率が大きいほど著しい。熱伝導率の小さいコルクで誤差が大きいのは、逃げた熱を周りから補えないから。
- 高温ガス配管に取付け方を変えて付けた例では、誤差は 0〜−45℃ まで開き、取付部が保温されていないものほど大きい。
- 高温で使う熱電対は劣化しやすいので、ときどき校正ずみの熱電対と比べて検定する。途中が劣化していても、温度が一様な場所では正常な起電力を示すので、実際の使用場所か同じ温度分布で比べる。
関連:保護管と応答の遅れ
測温抵抗体とその他の温度計・熱流計 ── 導線抵抗の影響を結線の方式で減らす

| 導線の方式 | 導線の抵抗の扱い | 使われ方 |
|---|---|---|
| 2線式 | 測温抵抗体と受信計器の間の導線抵抗の変化が、そのまま誤差になる | 導線が2本で経済的だが、あまり使われない |
| 3線式 | 受信計器のブリッジ回路で、導線抵抗 r₀ がブリッジの隣り合う2辺に1本ずつ入り、平衡条件 (RX+r₀)/(RS+r₀)=RB/RA の左辺の分子と分母の両方に現れる | 導線抵抗の影響をほぼなくせるので、工業用で一般的 |
| 4線式 | 一定の電流を流し、電圧の形で抵抗値を測る | 導線抵抗の影響はまったくない。とくに高精度が要るとき |
なぜ:測温抵抗体は抵抗値から温度を出すので、計器から見える抵抗に導線の抵抗が混じると、その分だけ温度が高く出ます。Pt100 は1℃あたり約 0.4 Ω しか変わらないので、往復 1 Ω の導線でも約 2.5℃ 分の誤差になります。3線式は導線抵抗をブリッジの隣り合う2辺に入れてほぼ打ち消します。4線式は電圧で測るので導線抵抗を拾いません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 3線式が工業用で一般的なのは、受信計器のブリッジ回路で導線抵抗の影響をほぼなくせるから | ○ | 完全に消えるわけではない |
| 工業用の測温抵抗体では、導線が2本で済む2線式がもっとも一般的 | × | 一般的なのは3線式 |
| Pt100 を2線式で使い、往復の導線抵抗の合計が 1.2 Ω あると、指示はおよそ 3℃ 高くなる | ○ | 1.2÷0.4 |
| サーミスタは感度が高いので、1個の素子で広い温度範囲を測るのに向く | × | 1個で測れる範囲は狭く、変化が著しく非線形 |
| 熱流計は、熱伝導率の分かった薄い板の両面の温度差から熱流密度を求める | ○ | q=λ·ΔT/d |
- 白金測温抵抗体:0℃ で 100 Ω(Pt100)。精度は熱電対より良く、基準接点の補償は要らず、経時変化が少ない。測定温度の上限は熱電対よりかなり低い(高温用で 650℃)。抵抗を測る電流で素子が温まる自己加熱があるが、最近の計器は電流が小さく通常は心配ない。
- サーミスタ:金属の酸化物で温度係数が負。抵抗は温度の上昇で指数関数的に減る。感度が高く素子が小さく応答が速いが、互換性はあまり良くない。素子の抵抗が大きいので導線抵抗はほぼ無視できる。
- その他の温度計:ガラス製(感温液の膨張)、充満式(封入した液体・気体の圧力。動力源が要らず爆発性雰囲気でも使える)、バイメタル式(熱膨張率の違う2枚の金属)、水晶温度計(振動子の周波数。分解能が高い)。
- 熱流計:熱流 Q=(λA/d)·ΔT から、熱流密度 q=Q/A で指示する。温度差は差動熱電対で測る。センサの熱伝導率が低いと物体の熱流分布が変わり、精度が上がらない。
- 積算熱量計は、温水・冷水の流量に送り側と返り側の水温の差を掛けて、供給した熱量を出す。
関連:3線式と配線のトラブル
放射温度計 ── 放射率の設定がずれると指示がずれる

| 項目 | 中身 | 指示への影響 |
|---|---|---|
| 原理 | 物体が表面から出す熱放射エネルギー(大部分は赤外線)の強さから温度を求める | 離れて測れる |
| 放射率 ε | 実際の物体の放射÷同じ温度の黒体の放射。実際の物体では必ず1より小さい | 黒体として目盛った計器は、真の温度 T より低い輝度温度 S を示す |
| 測定波長 | 1/S−1/T=−(λ/C₂)ln ελ。T と S の差は波長 λ にほぼ比例 | 短い波長ほど放射率による誤差が小さい |
| 周囲の高温物体 | 炉壁などの強い放射が対象の表面で反射して入る | 高めになる。遮へいするか、その分を差し引く |
| 光路の物質 | 煙・ちりや、水蒸気・炭酸ガスの吸収 | 測れないか大きな誤差。エアパージ、吸収波長帯を避ける |
| 2色放射温度計 | 2つの波長の放射の強さの比から温度を求める | 視野欠け・灰色減光に強いが、分光放射率が波長で変わる物体では放射率の影響を除ききれない |
なぜ:放射温度計は、受けたエネルギーを「黒体から来たもの」とみなして温度に直します。実際の物体は同じ温度でも黒体より放射が少ないので、その少ない放射を出す黒体の温度、つまり真の温度より低い値を示します。放射率を正しく設定すればこの分を戻せますが、設定が実際の放射率からずれると、そのまま指示がずれます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 放射率1を前提に目盛った単色放射温度計で放射率1未満の物体を測ると、指示は真の温度より低い | ○ | 輝度温度 S<T |
| 測定対象の近くの高温物体の放射が対象で反射して入ると、指示は真の温度より低くなる | × | 上乗せされるので高めになる |
| 放射率による指示の低下は、同じ放射率なら測定波長が長いほど大きい | ○ | 差は波長にほぼ比例 |
| 2色放射温度計なら、どんな物体でも放射率の影響を完全に除ける | × | 分光放射率が波長で変わる物体では除ききれない |
例題
放射率 0.8 の物体(真の温度 1,500 K)を、放射率1のまま設定した単色放射温度計で測ります。測定波長 0.65 µm と 2.0 µm の指示(輝度温度)を比べます。C₂=14,388 µm·K とします。
①式:1/S=1/T−(λ/C₂)ln ε。ln 0.8=−0.223。
②0.65 µm:(0.65/14,388)×0.223=1.01×10−5。1/S=1/1,500+1.01×10−5=6.77×10−4 で、S≒1,478 K(約 22 K 低い)。
③2.0 µm:(2.0/14,388)×0.223=3.10×10−5。1/S=6.98×10−4 で、S≒1,433 K(約 67 K 低い)。
④確かめる:波長を約3倍にすると、ずれも約3倍。放射率の誤差を小さくしたければ短い波長を選ぶ。
- 放射率対策:熱電温度計で同じ場所を同時に測り、放射率の設定を合わせ込むのがもっとも一般的。くぼみやくさび形の所を選ぶ、黒色塗料を塗る、短い波長の計器を選ぶ方法もある。
- 反射対策では逆に、測定波長の長い計器が有利。高温物体からの放射は短い波長を多く含むから。
- 全放射温度計は主に低温用で、炭酸ガスや水蒸気の影響が少ない 8〜13 µm を選ぶ製品が多い。全放射はステファン・ボルツマンの式 M=σT⁴、単色はウィーンの近似式が基本。
関連:放射率・吸収率と灰色体
湿度の測定 ── 乾湿球と露点計はどちらも温度で湿度を測る

| 方式・量 | 何を測るか・表すか | 湿度の出し方・注意 |
|---|---|---|
| 乾湿球湿度計 | 乾球温度 t と、ぬれたガーゼをかぶせた湿球の温度 t′ | e=es′−AP(t−t′)。es′ は t′ での飽和水蒸気圧、P は気圧 |
| 係数 A | 湿球が氷結していないとき 6.62×10−4、氷結しているとき 5.83×10−4 | 氷結しているときの es′ は氷に対する飽和水蒸気圧 |
| 湿球に当たる風速 | 温度低下量は約 3 m/s 以上で速度によらず一定 | 精度よく測るには 3 m/s 以上にする |
| 冷却式露点計 | 鏡を冷やし、露(または霜)が生じたときの温度=露点 | 露点と飽和水蒸気圧は1対1。露点の飽和水蒸気圧が気体の水蒸気圧 e |
| 相対湿度 H | H=(e/es)×100〔%〕 | es はその気体の温度での飽和水蒸気圧 |
なぜ:気体が含める水蒸気の上限(飽和水蒸気圧)は温度で決まります。乾湿球は蒸発で冷えた量から、露点計は飽和に達した温度から、水蒸気圧 e を求めます。どちらも温度の測定に帰着します。空気が乾いているほど湿球からの蒸発が盛んで、乾球との温度差は大きくなります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 相対湿度 H は、水蒸気圧 e が、気体の温度での飽和水蒸気圧 es の何%にあたるかで表す | ○ | H=(e/es)×100 |
| 乾湿球湿度計の式で、湿球が氷結していないときの係数 A は 5.83×10−4 | × | 6.62×10−4。5.83×10−4 は氷結しているとき |
| 乾湿球の湿球には、約 3 m/s よりさらに速い風を当てるほど温度低下量が増えるので、風は速いほどよい | × | 約 3 m/s 以上では一定 |
| 冷却式露点計で湿度が分かるのは、露点での飽和水蒸気圧が気体の水蒸気圧に等しいから | ○ | 露点と飽和水蒸気圧は1対1 |
例題
気圧 100 kPa、乾球 22℃、湿球 18℃(氷結していない)の乾湿球湿度計で、相対湿度を求めます。飽和水蒸気圧は、18℃ で 2,060 Pa、22℃ で 2,640 Pa と与えられているとします。
①温度差の分:AP(t−t′)=6.62×10−4×100,000×4=264.8 Pa。
②水蒸気圧:e=2,060−264.8=1,795.2 Pa。
③相対湿度:H=1,795.2÷2,640×100=68.0%。
④確かめる:es′ は湿球の温度、相対湿度の分母 es は乾球(気体)の温度の飽和水蒸気圧。P は kPa でなく Pa で入れる。
- 校正しないで使える湿度計は乾湿球湿度計と冷却式露点計だけで、基準湿度計として使われる。乾湿球はガーゼの汚れや水の供給、風速の確保が課題。
- 冷却式露点計の鏡はペルチェ素子で冷やすのが一般的。鏡の表面を清浄に保ち、配管への水分の吸着に注意する。
- 露点が0℃以下で露が凍って霜になるときは、霜点ともいう。
- 絶対湿度は 1 m³ の気体に含まれる水蒸気の質量〔g/m³〕。混合比は、水蒸気の質量と水蒸気以外の気体の質量の比〔kg/kg〕。
関連:絶対湿度と相対湿度
出典:エネルギー管理士試験講座 熱分野Ⅳ(省エネルギーセンター)1編1章 1.2〜1.4・2章 2.1〜2.3
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